表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/26

反響は木霊する



―『洞窟』、生態系に大規模な変異か―



大森林の中央に位置するダンジョン、通称『洞窟』に、生態系の大規模な変異が見られることを、非政府組織「ギルド」が発表した。

同組織を取り仕切るジキル氏|(ヴァンパイア/マスター)によると、このような変異は、「ギルト」を創立してからの300年の間に、確認されていないということだ。

同ダンジョンは、三層により構成され、第三層最奥地には、地底龍(ランドドラゴン)が生息していることが、これまでの調査でも判明している。

しかし、先日調査に出た、ド・ラドン氏|(ドワーフ/冒険者)によると、地底龍(ランドドラゴン)の姿はなく、ミミックと見られる、宝箱に擬態した魔物と、火を吐く人型の魔物が発見された、とのこと。

ラドン氏は、報告のために帰還した。

ラドン氏は「これまでの経験から言っても、脅威となる魔物とは思えなかった。手負いの仲間がいたため、まずは調査を優先し、状況の確認をした上で、帰還した。ほかの冒険者への安全を優先するためだ」との述べた。

『洞窟』は長らく、初心者・中級者の訓練場として機能してきたが、ラドン氏の調査を境に、魔物が凶暴化しているという報告が相次いでいる。「ギルド」はド・ラドン氏に、不適切な行動がなかったか、現在調査中である。

「ギルド」は、コインの安全な採集のために、長らくダンジョンを取り仕切る魔物の狩りを禁止していたため、これをド・ラドン氏が違反したと見ている。

今回の異変について、専門家は「ダンジョン内の統率を行なっていた地底龍(ランドドラゴン)がいなくなり、ダンジョン内の勢力図に変化が起こったために、このような事態を招いているのではないか」と述べた。

またさらに、ながらく「枯れたダンジョン」と揶揄された同ダンジョン内に、新たな宝箱が出現し「ダンジョンドリーム」を夢見た冒険者が、殺到している。しかし、それにともないミミックが大量に出現し、欲深い冒険者を苦しめている。


今後の調査が期待される。



「新聞なんてものがあるんだな」


「そりゃ、ありますよ。大陸横断鉄道が各国をつなぎ、魔動車が走りまわる時代ですよ?」


「そうだよな、うん。なんか、俺の常識と違うというか。ま、まぁ気にすんな。


さて、この新聞にあるとおり、どうやらダンジョンの集客は成功みたいだな」


「みたいですね。今もたしか4グループ入場しているはずです。一週間で10組は入場しましたね」


「こんなすぐに、結果が出るとは思わなかったな。口コミのパワーは、どんな時代でも変わらないのな」


「私の推測どおりです!えっへんっ!」


「実際、ステラには助けられてるよ、ありがとな」


「そ、そんな急に改まって言わなくても// 似合わないですよ!そんなことより、給料上げてください!!!」


顔を真っ赤にして、ステラは照れている。女神の集金が無事終わったら、それも考えよう。


「ねぇミミクー。ミコ、お外に行きたーい」


「ミコ、今、外に出て、冒険者にあったら、どうなるかわかんないだろ。方法を考えるから、ちょっと待ってろ、な。

ほら、ミコ、ちょっと見てみろ。新聞にお前のことも出てるぞ」


「え、ミコ、有名人!」


紙というものが、安価に大量に出回っているということは、やはり産業革命以後ほどの科学力はあるんだな、この世界でも。

冒険者達の格好から、中世ぐらいを想像してたけど、技術のレベルは、前世でいう近代レベルかな?


この新聞は、さきほどボブゴブリンの行商人から買ったものだ。


『お初にお目にかかりやす。“便利屋”風天のボブとは、あっしのことでござんす。

ダンジョンの主人様が代替わりしたとのことで、ご挨拶に伺った次第でやす。

先代様は、まぁ、あまりお付き合いのいいお方ではござんせんしたので、今代様にゃ、ぜひご贔屓をお頼み申しあげたく存じます。


へぇ、あっしには、“瞬歩”というスキルがございやして、馬の10倍ほどの速度で走れるんでやす。


それを生かして、はや100年、御用とあらば、ひとっ飛び!

これは、へぇ、つまらない物でやすが、主人様の就任祝いですので、ぜひ。

へぇ、これは、思念通話とコインの技術の集大成、「念話機(ねんわき)」でございやす。

MPを消費せずとも、遠距離念話ができる優れもんでやす。1を押せば、あっしに繋がりやすので、へぇ、すぐに、伺いやす。誰でも登録できやすんで、ご自由にお使いくだせぇ。


あ、これは新聞でございやす。一部で?それでは1C頂きやす。

旦那、あんさんは太っ腹な方だ。へい、1G頂きやす。今ちょっと、釣り銭がないんでやすが、こいつを釣り銭代わりに置いときやす。どうやら世情に疎いご様子。

こいつぁ、あっしが拾ったもんでやすが、やけに詳しくこの大陸とダンジョンの関係が書かれてやすから、ぜひ一読してご覧くだせぇ。


ではまた、いつでもどこでも“便利屋”風天のボブを、よろしくお願いいたしやす!』


といって去っていった嵐のような行商人だった。自分の数倍もあるようなリュックを背負って、よくもまぁあんなにキビキビ動けるもんだ。


騙すような感じではなかったが、商人として、こっちが値踏みされているような視線は少しうざったかったかな。

商売は距離感が命。全幅の信頼は置けないが、便利なもんは使ってなんぼだな。


さきほど置いていった紙の束も合わせて、だいたいこの世界の常識とやらは把握できた。

とは言っても、まだ細かいところまでは、実際に目にしないとわからない。

魔人の国なんかも、RPGでは「魔王が支配し、人間に牙を向ける」みたいなイメージだったけど、普通に人間との交流もありそうだし、ゲームなんかの常識をこっちに当てはめちゃダメだな。

しかし、この「冒険者の生き方」っていう題名のついた紙の束、初めて見た気がしないのはなんでだろうか。気のせいか。


さて、今日は1つ、やらなければならないことがあった。

先日、お披露目会を催して、ダンジョン内の全魔物を召喚したと思ったのだが、どうやら一部の魔物は、その召喚に応じなかったようなのだ。


あれは、強者が弱者を纏めるためのスキルであり、弱体化していた(今はさらに弱体化しているが)状態では、それに応じる必要がないほどに強い魔物がいたようなのだ。


サイクロプスやボブゴブリンは、その時のパラメータからすれば、たしかに強者だったはずだが、知能指数が低かったためか(名札付(ネームド)か否か、が知能指数には大きく影響する模様)召喚に応じてくれた。


ということは、召喚を拒否した魔物は強者もしくは、知能指数が高い個体ということになる。

現在のパラメータでは、殺されてもおかしくない。さて、どうするか。

友好的な関係を気づきたいが、舐められるとやりにくい。うーん。


そこで、頭によぎったのは、“目録(リスト)”にあった、「現在の負債」という項目だ。これはもしや・・・


ーーーーーーーーーーーーー


金利 10%/d でコインを借り入れますか?


ーーーーーーーーーーーーー


あった。これだ。コインを借りて、パラメータを一時的にアップ?いやいや、悪徳なサラ金でも10日で1割なのに、1日1割て。

あ!ダメだ!しかも、パラメータからコインに換金すると、1/10じゃねーか。あぶねぇ、本当に借金地獄に片足突っ込みかけた。


ーーーーーーーーーーーーー


金利 20%/d でパラメータを借り入れますか?


ーーーーーーーーーーーーー


おや、もう一つの項目は、たしかに金利は倍にあがったが、こっちはパラメータをそのまま貸し出してくれている。

つまりこれは、パラメータだけを移動させることができるってことか?


だとすれば、例えばパラメータを1000借りたとすれば、返済する際は、200増えた形で返せばいいってことか。

それでも200Gか。うーん。これは、やっぱり高すぎるな。


よし、しばらく諦めよう。現金収入が安定してきたら、余分をパラメータに“換金(エクスチェンジ)”して、十分な状態になったら、会いに行こう。


ビビってるんじゃない、万全を期すだけだ。


お、ダンジョンラット君達も、頑張ってるみたいだね。次々にコインに変わっていっているようだ。とりあえずはこの調子で、最初の1ヶ月、女神の集金が済むまでは、現状を見守ろう。




ダンジョン『洞窟』第3層には、小さな地下湖がある。「小さな」とは言っても、その水深は、かの賢帝ユグドラの叡智ほどに深い。

そこには、童話から抜け出たと思わしき、大きな、大きな、人魚姫が、今日も今日とて惰眠を貪っていた。


「お嬢様。主人がお呼びです、お嬢様、お嬢様」


人魚の一種である、タコ型魔人がその耳元で、そっと人魚姫につぶやく。


「うるさぁあああい!!!」


声と思えぬ、ただ一言で、ダンジョン全体が崩れ落ちてしまいそうなほどに、大きな大きな声は、タコ型の魔人が行使する魔法により、なんとかその衝撃が緩和される。


人魚姫の名前はリバイアサン。太古(いにしえ)より、歌姫と名高い彼女が歌えば、この世界にある、ありとあらゆるモノが踊り出すという。

鳥も、魚も、人も、魔物も、木も、家も、山も、海も、そしてこの星自身も。

一節で天変地異を引き起こす、神に属するもの。


前オーナーが、できるだけ冒険者を遠ざけた遠因は、ここにあった。


次第にダンジョンは騒がしくなる。


知らず知らずにミミクは、天変地異へのカウントダウンへのチキンレースを始めてしまったのだ。


姫は眠る。まだ。



======現在の状況======



迷宮利益率= 15G/D(↑15)


所持金:

118G(↓6)

→ステラへの給料

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ