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謁見

「確認すると、たくさん冒険者を殺して、たくさん魔物を殺させればいいということだったよな」


「ですです」


「なんにしてもまずは、冒険者を呼び込まなければならないが、DM(ダイレクトメール)を送る訳にもいかないし」


DM(ダイレクトメール)?」


「え、ああ、前世でも客を呼び込む必要のある仕事をしてたこともあったんだが、そこではチラシなんかを、潜在的なお客に直接送ってたんだよ」


「ふーん、要は「来てください!」って、頼むってことですか。それで来るんですか?」


「ビミョー」


「ぽいですね」


大広間には、何もなかったので、一応、皆がくつろげるほどの机と椅子を召喚した。

目録(リスト)”の項目は、本当に多岐に渡ってて、家具も一通り揃っていた。お値段も家具類に関しては、一律1Gだったので、お買い得だったと思う。ステラが「見栄えも大事です!」とか言って、ダンジョンの修繕や、装飾なんかも行なっている。いや、まぁ、いいんですけど、現金は少なくなる一方だな。そういうわけで、俺が許可した対象なら、“換金エクスチェンジ”と“目録(リスト”は使用可能のようだ。今はステラだけに許可している。


今、ステラとなんちゃって会議を開いている。


「うーん、まず、1つ1つ確認していくか」


「どうぞー」


「まず、冒険者は、なんでダンジョンにやってくるんだ?」


「そうですね、まずはコイン。彼らの収入源であり、この大陸では非常に重宝する物質なので」


「さっき言ってた、「魔法製品」とかだな。おもしろいのは、大量に持ち込めば持ち込むほど、ってところだな。

前世では、そういうパターンの売り方、あったのかな。中古ゲームとか本なんかは、大量に持っていくと、査定額が上がってた気がするけど」


「は、はぁ。で、次には名誉欲ですよね。腕試しにちょうどいいですし、著名な冒険者は、本を出版したりして、ダンジョン以外での収入を得られますし。

あとは、ダンジョンでの実績を、国家試験に導入してたりする国もありますね。ド・ドン帝国とか、エリエント皇国とか」


「ドワーフの国と、魔人の国か。これは後々の話だけど、試験場として、それぞれの国と契約する、なんてのも、考えられるかな。強さを調整したりしてな。

ま、それは追い追いやっていくとして、さて、今は目先の金だな。


整理すると


1、コインと金銭

2、名誉

3、試験


みたいなことか。さて、どれから攻めるかな。


とりあえず、難易度を高くし過ぎたら、冒険者が怖気付くことも考えられるが、このダンジョンは弱すぎる。

もう少し手応えはあったほうがいいよな。あんなに弱い冒険者が、そう簡単にここまで来られるのも、困りもんだ。紆余曲折を経て、苦労の末に、やっとボスと対面、ってな具合じゃないとな。


現状、罠は維持費の観点から、全部撤去したけど、魔物の戦力はどんなもんかな」


目録(リスト)”を唱え、現状の魔物の戦力を確認する。

マップ上に光る赤い点を参照する。赤い点、つまり魔物のダンジョン内での分布と、その名前を一覧する。そこでわかったことは、設計もなにも、おそらく作戦というものすらないであろう、お粗末な分布の様子だ。


「おいなんで、スライムとミミックが、こんなに一箇所に固まってるんだ?って、あ、家族か。

俺自身、なんも思ってなかったけど、これは流石に効率が悪すぎるよな。

あと、ゴブリンは逆にばらけ過ぎてないか。あいつらの強みは、確かな武器の扱いと、集団戦術だろ?

おいおい、ダンジョンバットは天井の低い第一層じゃ、自分の飛べるっていうアドバンテージを生かせてないじゃないか。

ダンジョンスネイルも、ちょっと動き過ぎじゃない?じっとしとくのは、確かに辛いけど、甲冑が1人で動いてたら、警戒するでしょ。


これは一度、しっかり伝える必要があるな。」


目録(リスト)”には、「魔物招集」という項目があった。さらに「再配置」という機能も。まずはダンジョン内の全魔物を招集する。

そのために、一時的に、ダンジョンを封鎖する。今、ダンジョンの中には冒険者もいないはずだし。


「ステラ、ミコ、ちょっとこっちにこい」


「どうしました?」

「どうしたの?」


「俺のオーナー就任披露も兼ねて、一度ダンジョン内全ての魔物を招集してみようと思う」


「面白そうですね」

「全部!?すごい?!」


「俺も招集なんか、されたことなかったけど、一度やってみよう。冒険者どうこうよりも、まずは地盤を固める必要がある」


王様が謁見する時に座っている椅子があるような、少し高くなっているところに来た。椅子がなかったので、召喚した。そこに宝箱に“模倣(ミミック)”した状態で、ミコにおいてもらう。


「よし、呼ぶぞ。“魔物招集”!」


広間一面が光り、その後には数百の魔物たちがポカンとした調子で、佇んでいる。しかし、一部混乱した魔物が、騒ぎ出した。


「な、なんだー?!」

「おい、ここはどこだ?」

「お前も、なんでここに?!」


「えー、みなさん・・・」


「あれ、お前、元気にしてた?」

「お、なんだ久しぶりじゃないか!」

「お袋、お袋なのか?」

「ま、まさか、生き別れた・・・」

「あ、あなた、これは違うの!」

「なんでお前とあいつが抱き合ってるんだ?!」


「ごほん、ごほん!!」


だめだ、全然静かにならない。


「しぃいいずぅううううかぁああああああにぃいいいいいいいいいい!!!!」


ミコが突然叫び出すと、同時に口から勢いよく炎が飛び出す。天井一面が、火の海になる。

一部の柱が、真っ赤に染まっていることから、その温度の高さを物語っている。


突然のことで、魔物どもはシンと静まり返った。一部は青ざめている。


「えへんっ!」


「あ、ありがとう、ミコ。」


(ミミクさん、魔物は強いものに従うので、下手(したて)に出ると舐められますよ。少し、誇張してでも、強いものを装ってください。実際に、そこそこ強いんですから)


なるほどな。少し、威張ってみるか。



「突然の召喚で、さぞ驚いたことだろう。

単刀直入に言う。俺がこのダンジョンの、新しい主人になった、ミ・ミミクだ。よろしく」


ざわざわと、波紋が広がるように、また喧騒が広がり始める。


「少し、よろしいですかな」


年老いたゴブリンらしき人物が、杖をつきながら、前に出た。

魔物どもの注目が、一点に集まる。


「なんだ、発言を許す」


「ありがたきこと。あなたさまは、強きものの、オーラを醸していらっしゃる。この、ダンジョンの、主人として、相応しき、御様子。

しかし、前の主人は、(いにしえ)より君臨なさる、さらに強きお方。あの、龍のお方は、何処へ」


ミコを少し見る。静かに、唇を震わせている。


「死んだ。冒険者に討たれて、な。」


「それは、魔物として、なんと喜ばしき名誉かな」


「今日は、その名誉を与えるために、貴様らを呼び出したのだ」


「と、申しますと?」


「聞け、ダンジョンに住まう魔物どもよ。

このダンジョンには、そなたたちのように、獰猛で、血に飢えた魔物が、このようにたくさんいる。

しかし、このダンジョンに訪れる冒険者は、とても少ない。


なぜだか、分かるか?それは、貴様らが舐められているからだ。すなわち、冒険者によって殺されるという名誉を(あずか)るには、貴様らは弱いと思われているのだ。


貴様らがダンジョンに生きる理由を問え!


それは、弱き冒険者を葬り、そしていずれ、強きものと相対し、互いの名誉をかけて戦い、そして死ぬことではなかったか。


今のお前たちは、人間ごっこに甘んじる、ただの動物に過ぎない。違うだろ、貴様らは、魔物だ。

魔物は人を殺し、魔物は恐れられなければならない。


魔物たちよ、そのために、今から貴様らに力と知恵を授けよう」


目録(リスト)”にある、「特別項目」から「魔物強化」を選ぶ。レベルを上げるごとに値段が上がる仕組みだが、今回は全ての魔物に5レベルずつでいい。1匹につき、5Gか。結構痛手な割に、強化率も少ない。しかし、これは必要経費だ。

本当の目的は、魔物の強化というよりも、意識改革にある。


さらに、思念通話を種族ごとに行い、それぞれに最適と思われた戦略を送信する。


「行き届いたか、魔物どもよ。

貴様らに、力と知恵を授けた。さらに、報酬を約束しよう。冒険者を多く殺したものには、より多くの力を授けよう。名誉は力と知恵で奪うのだ!


俺の信頼を裏切るな!!!!!!」


「「「「おおおおおおおおおお!!!!」」」」


魔物たちは、自分たちの力が増したことに気づいたようだ。少しの変化でも、実際に体験して貰った方が、モチベーションも上がるってもんだ。


「行け、魔物たちよ。貴様らには、新しい居場所をやる。そこで、存分に貴様らの力を奮うがよい!!!!!」


「「「「ミミク様、万歳!!!」」」」


(“再配置”!)


光ととも、魔物たちが消える。


「か、かっこよかったですよ、ミミクさん」


「すごーい、なんか、いつもと違った!」


「そ、そうか?ちゃんと、ダンジョンの主人っぽかったか?」


2人が首を縦に振る。よかった、ひとまずは成功かな。あのゴブリン爺さん、「強きもののオーラ」とか言ってたから、最後魔物を強化する段階で、自分のステータス使っちゃったから、バレないかヒヤヒヤした。ふぅ。


さて、魔物の再配置は、適当な形で、配置できたし、今度はしっかり、冒険者への餌を撒くか。


「餌、といいますと、コインですか?そんなもの、冒険者に与えちゃったら、武器なんか作って、強くなっちゃうんじゃないですか?」


「ダンジョンに来るものたちは、コイン稼ぎに来るんだろ?無駄骨にしかならなかったら、それこそ来なくなるじゃないか。だから、ある程度のご褒美を用意する必要があるんだ」


「魔物が死んだ際のコインだけじゃダメなんですか?」


「ダメだな。あいつらも回復薬なんかを消耗するだろうから、強くて大量にコイン落とす魔物以外は、無視するし。旨味が少ないんだ。

今はそれをさせないように、作戦を授けたけど」


「なるほど、して、どうやって自然に餌を撒くんですか?あんまり不自然だと、警戒されちゃいますよね?」


「策がある。“模倣(ミミック)”」


突然、空の宝箱に”模倣(ミミック)“したミミク。すると、核だけを切り離した。


「これだ。脱皮する要領で、宝箱を増産する。これはHPとMPを消費するだけだし、いずれ回復する。これに、コインをいくらか入れておく。

本当は、武具も入れておきたいが、“目録(リスト)”にも、武具作成はないみたいだしな。

これをミミックの周辺や、落とし花の近くに配置したり、わざと怪しげなところに本物を置いてみたり、少し強いサイクロプスなんかに守らせる形で、置いてみたり。

冒険者にしてみれば、“解析(スキャン)”もなかなかMPを消費するし、「枯れたダンジョン」だと思ってるんだから、油断するだろう」


「ほほ〜う、なかなか考えますね」


「だろ?DM(ダイレクトメール)なんかは、通用するとは思えないが、今も昔も、口コミは最強だからな。ほどよく殺して、ほどよく生かすのも、大事だな」


あと、低級魔物が落とすコインを無視することも利用する。コインは5分ほどで、消滅する。消滅というか、あれは実際、ダンジョンに吸収されていたようだ。

つまり、だ。無視されたコインは、俺の懐に入ってくる。低級魔物の繁殖力は並々でないから、むしろ殺されまくる方が、実は俺にとっても美味い話なのだ。

殺されてもよし、殺してもよし!


あんまりしつこいと、冒険者も敬遠しそうだから、第一層に集中させよう。「第二層まで行けば、こいつらとも、おさらばだ!」となってしまえば、袋のネズミだしな。ま、帰りも同じ苦しみを味わうわけだが。


よしよし、これでどうにか、少しはマシになるだろう。しかし、手元の金も、心許無くなってきた。俺のパラメータも弱体化してるし。このままじゃ、威厳も無くなりそうだ。

しかし、今は食えない威厳などは置いとこう。しばらくすれば、現金収入も入るだろう。


ひとまず、初期投資といったところだが、結果はいかに。




======現在の状況======



迷宮利益率(new!!)= 10G/D


所持金:

224G(↓300G)

→家具、装飾、修繕、宝箱



資産:

・「ゴルデンミミック(変異種)」=5000G(↓15000G)

→魔物強化の代償


スキル:

・“模倣ミミック”=対象物に擬態する。

・“換金エクスチェンジ”=コインを使ってパラメーターを高めたり、魔物を召喚できたりする。

・“捕食”=対象物をHPに変換する。

・“毒手ポイズンタッチ”=相手にわずかな物理ダメージと、毒効果を與える。

・“暗殺アサシン”=相手に気付かれず攻撃に成功すると、攻撃力が3倍になる。

・“目録リスト”=“換金エクスチェンジ”で行使可能な項目を羅列する。内容は多岐にわたる。



ステータス

・HP=120+1500(↓3500)

・MP=20+1500(↓3500)

・物理防御力=60+500(↓1500)

・物理攻撃力=300+500(↓1500)

・魔法防御力=20+500(↓1500)

・魔法攻撃力=20+500(↓1500)


従業員

・ステラ 職務:秘書 給料:2G/Day

・魔物 総勢 300匹(ダンジョンバット15%、ダンジョンラット15%、魔物植物20%、ゴブリン10%、ダンジョンスネイル10%、スライム5%、ミミック5%、ダンジョンウルフ5%、オーク5%、サイクロプス5%、龍1%、吸血鬼1%、ボブゴブリン1%、タラテクト1%、人魚1%) 給料:0G/D


友達

・ミコ 種族:地底龍ランドドラゴン、幼女


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