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贈物能力“換金”と妖精

目の前には、安っぽい冊子、の、ようなもの。「ダンジョン経営ステラトジー」?気付いたが、これ日本語だ。この世界でも、日本語が通じるのか?

突然色々起きすぎて、何がなんだかわからない。混乱しているうちに、冊子が立った。冊子が立った??


「はじめまして、ミミックさん。私は「ダンジョン経営ステラトジー」です。」


喋った。冊子が。と、思ったら、冊子の中から妖精が現れた。どうやら冊子の部分は妖精のような生き物の、羽にあたるようだ。


「突然のことで、混乱しているようですね。当然でしょう。全身は金色に染まり、美しい女神が突然現れ、目の前で冊子が喋っているのです。

まず、自己紹介から。先程も述べました通り、私は女神様の一部を切り離されて誕生した、冊子型妖精である「ダンジョン経営ステラトジー」と申します。長いので「ステラ」とお呼びください。」


(は、はあ)


「あ、思念通話ですか?口を持たない粘性の生き物や、魔法に長けた魔物の特徴ですね。

それはさておき、私はあなたを補助すべく、女神様に遣わされました。


混乱の絶頂を体験しているなかではありますでしょうが、そろそろ本題に入りましょう。

まず、あなたが金色に染まったのは、あなたがコツコツ貯めたコインを吸収してしまったからです。


コインとは何か、ご存知ですか?これはただの金屬物質ではございません。魔物のパラメーターやレベルによって、その「魂の力」を結晶化した魔法物質です。もちろん、人間やドワーフなどの国では通貨としても使われています。

しかし、これは魔法物質。通貨としても使われますが、通常、各国固有の鋳造硬貨に両替して使います。なぜなら、魔法物質の特性を生かし、装備品や魔法製品に加工したほうが有効だからです。


つまり!!


あなたはその魔法物質であるコインを取り込み、自身を強化される過程で、その副次効果として金色に染まったのです。おわかりですか?」


なるほど、普通ではないと思っていたコインだが、そんな使い方をするものだったのか。


「通常なら、魔法物質をそのまま摂取すると、魔素の暴走を起こし、魂が破裂しちゃいます。人間でも、魔物でも、それを摂取しようとする馬鹿はいません。

でもあなたにはできた!なぜか!!


・・・わかりません。

粘性の生き物であることや、転生されたお方だからなのか、それともまだ300歳という若さだったからなのか、もしくは、300年もの間、あなたに保管されたことで、コインとお互いの魔力が馴染みあったのか。

推察は以上ですが、一つ言えるのは、それが幸運なことだったということです。」


よく喋るなぁ。俺が転生者だって知ってるのは、女神とかいうアイツの一部だったからだろうか。というか、さらっと遠回しに俺のこと、馬鹿って言ったか?

・・・まぁ、それはいい。なるほど、幸運だったのか。


(だいたいの状況はわかった。アイツ、女神のことはとりあえずいいから、さっき言ってた『ダンジョンのオーナーになれ』っていうのと、『“換金(エクスチェンジ)”』とかいうスキルのことを教えてくれ)


「なんだか偉そうな人ですね。いいですけど。

その件については、実は2つとも、繋がっていますので、今から説明いたしますです。


先程、このダンジョン、通稱『洞窟』のオーナー、つまり管理者であったドラゴン『地底龍(ランドドラゴン)』が冒険者によって倒されました。

寿命は優に3000年を超えた猛者であり、最古の龍の一匹だったのですが、老いには勝てず、今にもぽっくり逝きそうなほどに衰弱していたところをやられたようですね。ここ100年ほどはいよいよ耄碌してましたしね。


そして通常なら、その子孫による代替わりが行われるのですが、その子孫にあたるドラゴンが、未だ300歳であり、弱すぎたのです。


そこで急激に力をつけたあなたに白羽の矢が立ったのです。お気づきでしょうが、あなたのパラメーターは現在、あの地底龍(ランドドラゴン)に未だ及びませんが、その半分ほどには強化されております。

このダンジョンでは、一部例外を除き、最強と言って問題ないでしょう。あくまでこのダンジョンでは、の話ですが。


そしてオーナーには女神様によって贈物能力(ギフトスキル)が1つ与えられるのですが、それがあなたの場合、“換金(エクスチェンジ)”だったということです。


このスキルの権能は2つです。


1、自身に取り込んだコインを、パラメーターに割り振ることができる。逆にパラメーターを消費して、コインを生み出すこともできる。その際のレートは、10パラメーター/1G。


現在はおそらく何も手を加えていないので、自動的に適度に割り振られているはずです。


次が、オーナーとしては重要ですよ。


2、コインを代償に、魔物や罠を召喚、強化、さらにダンジョンの改築など、様々なことが可能。


簡単にいうと召喚魔法のようなものですが、難しい術式も、複雑な詠唱も必要ありません。

目録(カタログ)”と唱えると、現在の所持金で可能なことがリスト化されたイメージが浮かぶと思います。

そこから任意の項目を選ぶだけ!簡単便利!ネット通販もびっくり!!


換金エクスチェンジ”を活用して、ダンジョンのオーナー、頑張ってください!!」


今の状況が、やっと理解できた。

つまり『ダンジョンのオーナーが死んだ→強いミミックが現れた→オーナーになれ』ということか。


(なるほどな、ありがとう。ところで、お前はこのあとどうするんだ?)


「どうするもなにも、帰りますよ、女神様のところに」


(え、だってお前「ダンジョン経営ステラトジー」とかいう題名で、その辺は教えてくれないのか?)


「それは、女神様のギャグかなんかじゃないですか。経営なんて、わかりませんよ」


(でも、この世界には詳しいよな?)


「そりゃ、少しだけですが、女神様の記憶を継承していますので。」


(・・・お前、俺に雇われないか?)


「・・・うん?」


(俺は何もわからない。女神がダンジョン経営を任せるなんて言うってことは、何かしらこの世界にとって、重要な施設なんだろ?)


「それはそうですね。魔素の循環だとかなんとか。」


(あの女神の調子じゃ、面倒くさいことは嫌いだろうし、俺がダンジョンの経営を失敗して、何度も足を運んでいただくのは失礼になるでしょ?)


「ああ、なるほどです」


(そこでお前の出番だ。お前がどれだけその価値に気付いているかわからないが、女神の勝手とはいえ、お前は今、意識、自我を持っている。

人格がある。女神のところに帰れば、その意識はなくなるんだろう?)


「・・・そのはずです」


(それは寂しいじゃないか。生き物に当てはめれば、意識がなくなるということは、ある意味での死だ。)


「・・・なんだか、怖くなってきました」


(状況の説明をしてくれたお前には感謝している。ステラと言ったか?

俺はステラがいなくなるのは困る以上に、寂しい。)


「・・・で、でも、本体との繋がりがないから、いずれ魔素がなくなって・・・あ」


(気付いたか、そこでコインの出番だ。魔素の塊であるコインを使えば、お前のその命を維持できるぞ)


これは正直、適当なことを言ったが、実際できるだろうと直感的に悟っていた。


「命・・・。」


(どうする?俺に雇われるか?)


「・・・1日に必要な魔力はおよそコイン1枚。でもそれだとカツカツだから、余分に1枚。1日2枚ですよ!いいですか、2枚です!」


ちょろい。でも実際、帰ってしまわれるのは、今の俺には困る。女神は、月に500枚コインを獻上しなければ、首をすげ替えるなんて不穏なことを言っていた。手元には500枚のコインがあるが、1ヶ月しか持たない。

体內のパラメーターを弄っても、40000÷10で4000コイン、1ヶ月に500Gで、無収入だと8ヶ月しか持たない。このままでは、寿命はあと8ヶ月だ。

そのためには、多少の対価を支払っても、知識を持っている人物を雇うべきだ。

1ヶ月の長さが、前世と同じならだが。


(おい、この世界のカレンダーはどうなってる?1ヶ月は何日で、1日の長さはどれくらいだ?)


「あ、女神様が管轄しているエリアでは、言語やおおまかなシステムは、全部一緒ですよ。だから、前世のカレンダーの単位で考えればオッケーです」


(ありがとう)


よし、俺は切り替えた。俺は死にたくない。ダンジョンを経営しながら、楽しんで生きたい。

今までは、ミミックとしてミミックらしく死ぬだけだと思ったが、ひょんなことから、こんなことになった。

よくよく考えたら、俺はこの世界のことを何もしらない。それが普通だったし、親父もお袋もそうだった。しかし今は違う。

このコインの価値がある程度わかった。価値があるということは、ある種の資本主義が成り立っているということだ。ということは、この世界にも、このコインと交換可能なだけの、娯楽やおいしい食べ物があるはずだ。

なんで俺はこの300年間、何も考えずに生きてきたのだろう。どうやら、コインを取り込み、強化されたことで、知能も向上したようだ。

よし、いっちょダンジョン経営とやらをやってみますか!


「あ、忘れてました。女神様からの伝言があります」


(・・・さっき帰ろうとしてなかった?)


「なんのことだか、さっぱりです!」


(・・・うん、で、伝言は?)


「『コインを月の上納金以外に、獻上してくれたら、ご褒美あげちゃう。とりま、10000枚で、人間の身体をプレゼント〜ぱふぱふっ』とのことです。その身体じゃ、人間の国にも行けないですもんね」


(ほう、それは案外、いいご褒美かも。俄然、やる気出てきた!人間の街で美味いもん食うために、頑張るぞ!)


「おー!」


(まずは、先代の子孫だとかいう、ドラゴンに会ってみるか。ダンジョン経営について、知ってることがありそうだし)


「あ、それなら普段いる場所もわかりますよ。現在私たちがいるのは、ダンジョンの第一層ですが、その方がいらっしゃるのは、たしか第三層の最奧地です」


(人間の足でも行くだけで1週間かかるんだぞ・・・。ゾンビを使うか。)


ゾンビはそこらへんに徘徊している。

直接触れずに操作することはできないが、口から直接入り込めば、ある程度操作できる。気持ち的には、少し気味が悪いが、魔物の身では、さほど気にならないのも事実だ。

手頃なところにゾンビがいた。冒険者の格好をしている。死んだら復活するが、ゾンビになると、どうやら『生きている』と判断されてるっぽいんだよなぁ、怖っ。


(空間魔法は使えるか?そこに、その500枚のコインを収納してほしいんだが)


「そんなに大きくはできなさそうですが、コイン2枚分は働きましょう!“収納(ストレイジ”」


ぽっかりと突然真っ白い穴が現れた。

冒険者達も使っていた、空間魔法だ。荷物を収納すれば、持ち運びに便利な魔法だ。高レベルの冒険者しか使っていなかったので、ある程度難易度の高い魔法なのだろうが、さすが女神の一部から生まれた妖精。


そそくさとゾンビに取り憑く。核という名の目玉を、ゾンビの口にすっぽり収める形で、ゾンビを乗っ取る。


(よし、行くぞ)


「・・・ちょっと臭いますね。」


(ゾンビだからな。比較的新しいぞ?中にはドロドロに溶けて、蛆蟲がわちゃわちゃと蠢いていて、お腹の付近がモゴモゴと)


「いいですいいです、その先は!肩を借りますね。それでは向かいましょう!」


2人(?)はゾンビに乗り、ダンジョンの最奧地に向かう。




======現在の情報======


所持金:

500G


資産:

・「ゴルデンミミック(変異種)」=40000G


スキル:

・“模倣(ミミック)”=対象物に擬態する。

・“換金(エクスチェンジ)”=コインを使ってパラメーターを高めたり、魔物を召喚できたりする。(new‼︎)

・“捕食”=対象物をHPに変換する。

・“毒手(ポイズンタッチ)”=相手にわずかな物理ダメージと、毒効果を与える。

・“暗殺(アサシン)”=相手に気付かれず攻撃に成功すると、攻撃力が3倍になる。


ステータス

・HP=120+10000

・MP=20+10000

・物理防御力=60+5000

・物理攻撃力=300+5000

・魔法防御力=20+5000

・魔法攻撃力=20+5000


従業員(new!!)

・ステラ 職務:秘書 給料:2G/Day

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