黒い車とカッコいい男
「村を作りたい!!!」
「どうしたんですか、急に。賛成ですけど」
「えーなにー「村」、作るの?賛成!美味しいご飯が、すぐ食べられる!!」
急な話なのに、急に満場一致が成立した。
うん、大きな目標が決定した。「村づくり」、こういうシミュレーション、好きだったんだぁ。
ダンジョンの経営も、前オーナーの怠慢のせいで、マイナススタートだったけど、今はまぁ、首が繋がるほどには順調だし、好きなことをしてもいいと思う!
さて、人を集めたいわけだが、ダンジョン目的の冒険者だけを集めても、意味はない。ここに村を作りように、誘導する以上、むしろ冒険者以外を定住させる必要がある。
まずは、ダンジョン以外にここに来る目的を作らなければならない。うーん。
それに、損はしたくない。今手元にあるCも、投資という形で有効に使いたい。どうしたもんか。
実は、1つ、冒険者をダンジョン以外の目的で、ここに来させる方法は、思い付いているんだが、そのためには、ダンジョンの改築が必要になる。今あるコインじゃ、賄えないんだよなぁ。
80Gしか残ってない。
でもまぁ、1000Gで交換しないと、65000Cになんか化けなかったわけだから、仕方がない。
とりあえず、宿でも作るか。運営は誰かに任せて、家賃収入も得る。投資金が回収できたら、あとは払い下げてもいいし。
もしくは、草刈りでもして、ダンジョン一体を、更地にするかな?でもそれだと、なんだか秘境感が薄れる気がするな。
いや、必要か、秘境感?
アミューズメント型ダンジョン?うん?悪くはないな。
そういえば、冒険者は死ぬと復活するけど、どこで復活するんだろう。教会?
なんだか、いろいろ疑問が出てきた。よし、まずは調査のために、また「村」に出かけよう。断じてご飯が楽しみになったわけではなく、仕事だと!
「ステラ!」
「・・・もう、びっくりはしませんけど、もう少し、静かに呼んでくれません?」
「ああ、ごめんごめん。俺、ちょっと出かけるから、ミコとダンジョンのこと、よろしく!
念話機の2番が俺だから!」
「あ、ミミクさん?!ミミクさん!!1人だけ、村を楽しんでたりしたら、許しませんよー!お土産忘れずに、って言っちゃった」
「ミミク、お出かけかあ。じゃあミコ、フランのとこ行く!」
「え、じゃあ、私も付いていきますよ!」
「わーい!」
オーナーの権限“迷宮移動”で、一瞬のうちに移動する。入り口には、“便利屋”ボブが待ち構えていた。
「お待ちしてやした、旦那!
今日は、「村」までの移動を簡単に、とのことでしたが、よろしかったでやすね?」
「おう、金は、まぁ出すが、あんまりふざけたモノと値段なら、今後お前との取引も、考えさせてもらうがな」
「ええ、こちらにゃ、誠意と真心だけ売りもんみたいなもんでやすから、その辺は。
そろそろ信頼してくだせぇよ」
「御託はいい。モノはなんだ?お前が負ぶってくれるのか?」
「そんな、野暮なこたぁしやせん、これでさぁ」
ボブが魔法を唱えると、透明なカーテンのようなものが消え、そこには一台の魔動車が現れた!
メタリックブラックと言えばいいのか、光沢のある黒い車体に、革張りのシートには高級感が溢れている。3列シートで、2ドア。しかもフルオープンカーときた。
「1000馬力、6人乗り、1コインの補充で、最大100kmは走る燃費性能!所有者認識結界が張られ、雨どころか、許可されたものしか触れられない仕組みになってやす。
名前は、M-400でさぁ。もちろん、特注でやすから、ほら、エンブレムは「宝印」でやす。
あっしは旦那に野暮な真似はしてほしくなかったんで、ドカンといっちょ、こんなの用意してみましたが、お気に召しやしたでしょうか?」
おい、ちょっとこれは、やりすぎじゃないか。
流石に悪目立ちし過ぎじゃないか。
どっから話を聞いてきたのか、あのゴールデンバーの刻印と、同じ形のエンブレムが輝いている。
「しかも、コイツをつけやす。名前はありやせん。
好きに呼んでくだせぇや」
パッと現れたのは、ボブよりもたくましく、全身を黒のスーツで統一した、サングラスをかけた厳ついボブゴブリンだった。
「お初にお目にかかります。私が、この魔動車の運転手を務めさせていただきます」
「・・・」
あまりのことに、声が出ない。前世では、車さえ買えなかったのに、こんな高級車。
・・・そうだ、流石に俺でも、こんな高そうなもんに、金は出せない。でも、まぁ、一応、値段だけ聞いてみるか。
「で、幾らだ?」
「へぇ、永久ドライバー付き、もちろん“自動補修”“自動浄化”装備。お値段なんと、10000Cぽっきり!」
「・・・」
「なんでやすか?」
「・・・」
「もっとはっきり!」
「金は車内で渡す、さっさと「村」まで走りやがれ!!」
「ハハァ。ほら、さっさと動くでやす」
「ハッ!!!」
車は快調に動き出す。魔法障壁が張っているのか、風が強く当たることも、日光が眩しすぎることもない。温度は快適に調整されている。
馬の数十倍の速さで走っているかのような感覚だ。
「ほれ」
「ありがたき幸せでございやす。
これからも、“便利屋”ボブをぜひご贔屓に!」
そういうと、ボブが車から飛び降りた。あいつも、なかなか、強いんじゃないか?
まぁダンジョンまで商魂たくましく出向くほどだ。そんじょそこらの魔物とは違うのだろう。
いやしかし、快適だ。魔法なのか、サスペンションが優秀なのか、全く揺れずに、滑るように走っている。
そしてあっという間に、「村」の入り口に到着した。
「ああ、とりあえず、ここで待っといてくれ。
どうやら、誰も車には触れないらしいが、とりあえず5C預けとく。
もし、なんか欲しかったら、これで買え。あまりはチップだ」
「ハッ!ご配慮ありがたく!」
なんだか、金満家になった気分だ。悪い気分じゃないが、なんだか後ろめたい気もする。
さて、仕事だ。まずはそうだな、「ギルド」で冒険者登録でもしてみるか。
「ギルド」の本部は、「村」の中心にある。聞いた通り、ここが「村」を仕切っているらしく、市役所みたいなものの機能や、それこそ一般的なギルドみたいに、依頼を仲介したり、斡旋したりしているらしい。木造の三階建てで、広さは公立中学校ぐらいといえば、わかるかもしれないが、結構の規模だ。入り口から入ると、正面に受付がある。
冒険者登録について聞いているのだが。
「お嬢ちゃん、年齢は?」
「年齢?そうだな、300というところだが」
「馬鹿いっちゃいけねぇよ、てか、ああん?お嬢ちゃん一回、登録を拒否されてなかったかあ?
25歳未満はお断りだよ!」
「初めて来たんだ。そんなもんは知らん。
しかも、300は超えていると言ってるだろ」
「証拠見せてみr」
俺はちょっとイラッとしたので、触手を出して、受付の首元に毒針を添える。
「な、なんでい、魔人なら、魔人と、素直に言えばいいじゃねえk」
「俺はちょっとカチンと来てるんだ。素直に謝れ、さもなくば」
すると、一連のやりとりを見ていたのか、ひとりの男が割って入ってきた。
「おい、お客さんが、怒ってんだろ。厄介ごと起こすんじゃねぇよ。ほら、謝れ」
「・・・マスター。お嬢ちゃん、すまなかった。許してくれ」
「わかればいい」
素直に触手を蔵う。マスター?
「初めて見る顔だな。俺はジキルってもんだ。ここでギルド長なんて、似合わないことをしてる。よろしく」
「ミミクだ」
「お詫びも兼ねて、ちょっと一服どうだ?」
「いいだろう、俺も聞きたいことがある」
「ツンツンすんなって、ま、ほら、こっちだ」
ギルド長の部屋は3階にあるらしく、そこまではエレベーターでいく。いよいよ、中世的な歴史観は役に立たないな。
「ちょっと座っててくれよ」
校長室みたいな場所に通され、応接用に使っているであろう、ソファが向き合い、間に大きめの机が用意されている。
「おまたせ、今、お茶を用意させてるから。あ、燻し草、よかったら自由に吸ってくれ」
据え置きのシガレットケースから、一本の煙草を取り出す。うん、上質な紙と草だ。いい匂いがする。ブランデーかなにかがまぶされているんだろう。
適度に冷やされた燻し草に、マッチで火を付ける。
「なかなか、いい趣味だな」
「だろ?こんな地位にいると、半端なもんだと、舐められるしな」
ゆっくりと擬似的な肺に煙を送り込む。
そして吐き出す。
「・・・」
ここでの常識は知らないが、ふぅと音を出して吐き出すような煙草の吸い方は、野暮極まる。静かに吸い、静かに吐き出す。
「さて、話ってのは?」
「あんたが今話題の『洞窟』の主人だろ?」
「ッゴホ、ゴホッゴホ!」
ばーれーてーるー!今までダンディな雰囲気醸してたのに、咳き込んでしまった。
いや、別に、バレてもいいんだが、なんで知ってるんだ???
「不思議だろうが、まずは事実の確認をさせてくれ、お前はオーナーか?」
オーナー?これは女神との関わりがあるやつだけが、使う言葉だ。うん、ただの人間じゃなさそうだ。
「そうだ。なんか問題あったか?」
言いながら、相手を“会計”する。10000G・・・10000G?!オーナークラスじゃねぇか!!!俺、今、約5000G、どうする、借金か?!借金の出番か?!?!
「いや、ない」
ないんかーい。テンパって損した。
「なら、どうしたというんだ?」
「いや、実は俺もオーナーなのさ。知ってるか?『魔境』っていうんだが」
そういえば、聞いたことがある。
「へー、あのダンジョンか。それがなんでギルド長なんかやってるんだ?」
「元々は、お前も同じ条件だと思うが、月々500Gの、あの、アコギな契約のためさ」
「あーなるほどなー。考えることは一緒だな。
ギルドほど、冒険者集めに向いた組織はないな。っていうか、その概念そのモノを作ったのか?」
「そうだな、元々は、転生者の話を聞いて、それを元に作ったんだ。「冒険者」っていう言葉も、俺が作ったんだぜ」
「え、てか、お前人間じゃないな?」
「今更かよ!俺はヴァンパイアだ。もうかれこれ、300年ほどオーナーをやってる。最初の100年はカツカツでなぁ。第二次人魔大戦以後からやっと、生きた心地のする生活を送れてるよ」
「それは面白そうな話だな、聞かせてくれよ」
「いいぜ、っていいたいところなんだが、今日は別件だ。お前に頼みがある」
「うん、なんだ?」
「お前、ギルド長とダンジョンのオーナー、変わってくれないか?」
急に降って湧いてきたような話。話が色々急で、頭の整理が追いつかなくなってきた。とりあえず話は聞くだけ聞くか。
「コーヒーが入りました。どうぞ」
渋めのお爺さんが、コーヒーを持ってきた。よかった、こっちにもコーヒーはあったのか。砂糖とミルクをたっぷり入れる。
一口飲む。うまい。煙草に火を付ける。
考え事をするには、これが一番捗る。
「話はとりあえず、聞こう」
コーヒーの匂いと、燻し草の少し甘い匂いが部屋を満たす。俺は、ジキルの話に耳を傾ける。
======現在の状況======
迷宮利益率= 100G/D
内訳
ミコ 20G/D
フランフラン 30G/D
マザーの眷属 50G/D
所持金:
80G
55000C(↓10000)
→車購入のため。




