「宝印」のコインバー
少し寝坊したが、遅めの朝食を取る。
ステラは二日酔いのようで、自分にずっとヒールの魔法をかけている。汗をかいていたが、“自動修復”と“自動浄化”の効果で、匂いがするような気はしない。
朝食は冷たい牛乳(実際に、牛に似た動物から取るようだ)と、よく焼いた目玉焼き(これも鶏に似た鳥から取れるらしい)、横にはバターで炒めたような匂いのする人参のような野菜が添えられている。そして、いろんな木ノ実を乾燥させて作ったであろう、オートミールが用意されている。
昨日、飯屋から帰る途中に買った、煙草に似た、燻し草とここらではいうらしいが、それを口に咥えて一服くゆらす。
「変な匂いだね」
「お子ちゃまには、まだ早いな」
前世も中毒だったが、これもまた、文明の良きところだ。
「ああー何食べても美味しいね!」
「そうですね・・・」
ステラはまだ食欲が戻らないらしい。
ミコは、もぐもぐとよく噛んで食べている。うむ、いいことだ。
それにしても、朝飯でさえ、このクオリティか。文明、恐るべし。しかし、ダンジョンからが、遠いんだよな。
こうなったら、近くに村でも作るか?でも村って、どうやって作ればいいんだろう。
とりあえず、人を集めれば、自然と出来ていかないかな。
楽観的に未来の構想をふわふわと立てているうちに、やっとステラが回復したようだ。
「ごくごくごく、プハーっ!牛乳、いいですねぇ。
はぁ、ヒールは、二日酔いには、効きが悪いということを学びました・・・。
今日はまず、製金所に行かないといけないですね」
「そうだな、朝には来いって言ってたから、食べたらすぐに出発しよう」
朝食終えた3人は、製金所に向かう。
道中で、果物のジュースを売っていたので、ミコは自分でお金払い、水筒に入れてもらっていた。
何あの子、もう資本主義の基本、等価交換を習得したの?社会に順応するスピード早えし、なんだか、俺、成長を目の当たりにして、涙腺が刺激される。なに、この気持ち。
ミミクが変な感傷に浸っているうちに、3人は製金所の近くにまで来た。
なんだか、人混みが出来ている。
「旦那!お待ちしておりやした!
とんでもねぇもんが、出来ちまったんでさ!」
換金所のおっちゃんが、やけに低姿勢で俺たちを迎える。
「嬢ちゃん、これ、どこで手に入れて、どうやって持ってきたんだい」
どうやら、あまりのコインの魔素の高さに、噂を聞きつけた他の換金所や製金所の連中が集まっているようだ。
「秘密だ」
「・・・当然だな。こんなもん、バラしたら、大混乱だ。着いてきな。
・・・おい、お前ら!いい加減目障りだ!とっとと失せろ!!!!」
製金所の親父さんの一喝で、有象無象は名残惜しそうに、その場を後にする。残ったのは、換金所のおっちゃんと、親父さんだけだ。
金塊ように鋳造されたそれらが、コインであった時よりも、輝きを増しているように見える。
「・・・コインは、鋳造されることで、魔素を定着させる。
木っ端冒険者が持ってきたコインは、酸性の薬品につけて、その魔素をエネルギーにする製品に組み込む。
しかし、名の通った冒険者が持ってきたようなコインは、まとめてバーにする。1つのバーが、コイン約100枚分だ。それが10本ある。
コインは、それを持ってきた術者の魔力に馴染み、他の術者に染まったコインと混ぜると、拒絶反応を示す。
だから、他のコインと混ざらないように、刻印するんだが、嬢ちゃんには、家紋とか、なんか目印になるようなもんはあるか」
話には聞いていたが、なるほど、刻印か。
「・・・宝箱にしてくれ。そうだな、その真ん中に目も入れて欲しい」
「なんだ、ミミックみたいだな。まぁ龍やサーペントを家紋にしている一族もあるし、ミミックでも問題はないがな」
スタンプのような形をした鉄に、親父さんが意匠を凝らす。単純化した宝箱を正面から見て、その鍵穴に当たる部分に、目玉を掘る。蓋の部分に、Mのイニシャル入れる。
「こんなもんで、どうだ」
「素敵だな、それで決まりだ」
魔法で熱して、真っ赤になったスタンプを、バーに押し付ける。そこに初めて「宝印」のバーが誕生した。
「さて、値段だが」
ギロっと換金所のおっちゃんを睨む。
「ちゃ、ちゃんと適正価格で買い取るよ、兄貴」
どうやらドワーフの兄弟のようだ。製金所の親父さんの名前は、ド・マリ。換金所のおっちゃんの名前は、ド・ルイ。「ド」というのは、ドワーフでもっとも多い、名字らしい。
「100G分のバー10本だから、全部で1000G分・・・
1本、650C、10本で6500Cがだいたいの相場なんですがね、これは魔素が抜けていない、純正品でさ。
そこで、その10倍、全部で65000Cでどうでさ。」
ちょこっと計算するが、うん、話に聞いてた通りの適正な価格だと思ったが、なんと10倍か!
「商談成立だ」
「助かったでさ」
ギュッと固く握手する。
「これからも、何かと頼りにすると思うから、よろしくな」
「・・・おう」
「こちらこそでさ!」
いい取引というのは、一方が損するでもなく、両方が得をするもんだ。うん、実に気分がいい。
そう遠くない未来、「宝印」のバーを使った武具は、前代未聞の値段を打ち出すことになる。
換金所でCを受け取る。コインと違って、紙幣が使えるのが、楽でいい。それでも10C貨幣しかなかったので、紙幣にして、6500枚。
それでも重い。コインと混ざることはないから、ステラの空間魔法に入れといてもらう。
65000Cを手に入れた3人一行は、『洞窟』へと帰還する。帰りは歩き疲れたというミコが龍に変身し、魔法で身を隠しながら、飛んで帰ることになった。
通貨を使うようになったということは、俺たちが市場原理に組み込まれたということだ。
謎の冒険者として、注目を浴びることになるが、ダンジョンの奥地に住まうミミクたちには、あまり関係のないこと。ただ、「村」に行きにくくなったことだけが惜しい。
しかし、その鬱憤が、『洞窟』周辺に新しい「村」を作ることになる。さまざまな思惑や軋轢が生まれることになるが、そんなことが頭に登ることは、まだない。
市場経済に組み込まれるとはつまり、さまざまな欲と向き合うということになるが、今はどこ吹く風。
「村」で食べた料理の感想を言い合いながら、3人は風を切って飛んでいく。
======現在の状況======
迷宮利益率= 80G/D(↓20)
→ミコが「村」に繰り出したため。
内訳
フランフラン 30G/D
マザーの眷属 50G/D
所持金:
80G
65000C(new!!)
→コインを換金したため。
資産:
・「ゴルデンミミック(変異種)」=5000G
スキル:
・“模倣”=対象物に擬態する。
・“換金”=コインを使ってパラメーターを高めたり、魔物を召喚できたりする。
・“捕食”=対象物をHPに変換する。
・“毒手”=相手にわずかな物理ダメージと、毒効果を與える。
・“暗殺”=相手に気付かれず攻撃に成功すると、攻撃力が3倍になる。
・“目録”=“換金エクスチェンジ”で行使可能な項目を羅列する。内容は多岐にわたる。
・“会計”=対象が倒された時に落ちるコインの量がわかる。間接的に、対象の強さがわかる。しかし、仲間や作戦によって、その強さは上下するため、絶対的な指標ではなく、あくまで目安。
ステータス
・HP=120+1500
・MP=20+1500
・物理防御力=60+500
・物理攻撃力=300+500
・魔法防御力=20+500
・魔法攻撃力=20+500
従業員
・ステラ 職務:秘書 給料:2G/D
・魔物 総勢 300匹(ダンジョンバット15%、ダンジョンラット15%、魔物植物20%、ゴブリン10%、ダンジョンスネイル10%、スライム5%、ミミック5%、ダンジョンウルフ5%、オーク5%、サイクロプス5%、龍1%、吸血鬼1%、ボブゴブリン1%、タラテクト1%、人魚1%) 給料:0G/D
・ソ・ドラキュラ・フランフラン 職務:戦闘員 給料:歩合(平均して)5G/D
・マザーの眷属 0G/D
友達
・ミコ 種族:地底龍ランドドラゴン、幼女
・マザー 種族:タラテクト、肝っ玉母上




