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コイン換金と舌鼓

「旦那、これは大変なものですよっ!」


やってきたのは、『洞窟』を出て、歩いて二日ほどの距離にある、「ギルド」という非政府組織が取り仕切る「村」。そこにある換金所だ。


・・

・・・


“便利屋”ゴブから買い上げた、この時代でも目立たない服を買って、村にやってきた。

俺とステラとミコの3人は、お上りさんよろしく、キョロキョロとその街並みを眺めていた。


そういえば、なんとなく魔物が人間の集落に顔を出すと、危険視されるんじゃないかと思っていたが、ステラ先生の現代史の授業のおかげで、多少の差別は残っているが、そこまで表立って敵視されることはないことを知った。


教育は、まさに啓蒙である。「(もう)(ひら)かれた」気分だ。


だから、ステラはそのままの装いだ。冊子状の羽に、素材はよくわからないが、薄くて丈夫でサラサラとした服を身にまとっている。そして、ゴブから買った、大きめの真っ白なハットを被って、嬉しそうだ。そして、大き目グラスのセレブ風サングラスをかけている。


ゴブによれば、妖精族はお洒落好きで、しかも在庫があまり嵩張らないので、品揃えはいつも豊富なんだとか。


ミコは、薄いピンクのワンピースと、麦わら帽子という出で立ち。整った顔と、スラリとした体型から、どこかのモデルのようだ。

花柄の水筒を首からぶら下げているのも可愛らしい。

フランフランも行きたがっていたが、夏の直射日光は、ヴァンパイアらしく、苦手なようだ。

決死の覚悟でフランフランを止める、ハイドの、血の涙でも流しそうな、猛烈な形相も、その一因になったようだが。

その代わりに、魔法で作った氷と、ハイドが作ってくれたアイスティを、ボブから買った水筒に入れてもらったのだ。

そして、ミコもまた、某暗殺者風、パイロットサングラスをかけている。


俺はというと、前世からすれば女装だが、いや、俺はミミック(=オス)だから正真正銘の女装男子なのだが、7分丈のジーパンにサンダル、真っ白なノースリーブ。あとはサングラスに、キャップを被るだけというラフさ。


一応、この時代は「自分の身は自分で守る」が基本らしく、ジーパンにロングソードを引っ掛けている。

前世と違い、武器を引っ掛けるためのベルトがしっかり添加されているのが、文化の少しの違いを感じさせる。


今、ダンジョンの外は夏である。夏真っ盛り。300年も引きこもっていたら、自分がヴァンパイアにでもなったかのように、目が眩んだが、焼け死ぬことはなかった。


ミコはなんと外に出たのが初めてらしく、ステラに目につくもの、全ての名前や、いろんな疑問を聞きまくっている。


『ね、どうして空は青いの?!』


『それはですね、昔、大空の覇者と言われた龍が海に』


『海?海てなあに?」』


『海っていうのは、塩水が溜まった大きい水たまりみたいなもので』


『大きいってどのくらい?父上くらい?』


『お父様が100年全力でブレスしても、少しも蒸発してなくならないように見えるほど、大量の水が蓄えられるくらい大きいですよ』


『キャー、すごーーーーい!!!』


ずっと興奮しっぱなしだったミコだが、ステラはステラで、自分の身体で初めて実物を見た感動で、テンションが上がっているのがわかる。


いつか、海にも連れて行ってみよう。

地図によれば、『洞窟』から海まで、そう遠くはないのだ。


・・・

・・


「ほう、大変なものっていうのは?」


「旦那、いいですか。コインっちゅうもんは、ダンジョンを出た時点で、魔素が急激に減るんでさ。

空間魔法に入れていても、1週間で半分になるほどで。

それが、旦那が持ってきたコインは、なんと減少率0%、魔素重点率、歴代最高なんでさ!


旦那、これはすぐに加工したほうがいい。換金はその後でいいから、すぐに、ここに持って行ってくれ!」


最初は『お嬢ちゃんが来るような場所じゃねぇんだ。冷やかしならとっとと帰んな!』なんて言ってたくせに、コインを見せた途端、手のひらを返しやがった。


渡された地図を頼りに、「製金所」というものに向かう。ボブからは、目立つようなことはない、と言って買った服だったが、なんだかジロジロと見られている気がする。

ステラが気になるのか?それとも子連れに見えるからか?


村の中を進む。コインを俺の身体に包んで持ってきたのが、功を奏したのだろうか。

今では身体の酸化度を調整できるようになり、荷物になりそうだったし、空間魔法では、ステラのコインと混ざりそうだったから、オーナーが自ら持参したというわけだ。


「あのー、製金所って、ここで合ってるかー?」


カンカンと鉄を打つ音が響く、熱気で空気が揺れるような、工場を思い出す建物についた。


「なんのようだ?」


工場から、背は低いが、たくましい、色黒で顔を髭で覆ったような人物が出てきた。


「あの、製金を頼みたいんだが」


「ああ、じゃあ、出せ」


懐から、コインの入った皮袋を出す。もちろん実際は、身体の中から抉り出したのだが。


「・・・ほう。嬢ちゃん、名前は?」


「ミミクだ」


「覚えておこう。明日の朝、また来な」


口少なな、ザ・職人気質のおっさんだったが、悪い気はしなかった。ああいう、単刀直入な態度は好きだ。ボブとは大違いだ。


町に戻る。日も暮れてきたので、宿を取ることにした、が、まだ現地の通貨を手にしていないことに気づいた。


換金所のおっちゃんに話を出すと、前金だと言って、気前よく、5000Cくれた。話のわかるおっちゃんだ。


まずは宿を取ることにした。適当に見繕った宿に入ると、朝食付きで、1人あたり4Cということだった。きっちり、ステラの分まで取られたが、まぁ仕方ないだろう。ここで初めて、だいたいの為替相場がわかった。あれ、5000Cって実は結構な価値があるんじゃ。


宿を取ったあとは、夕方の「村」に繰り出した。

「村」とは言っても、冒険者相手に、それなりに儲けているのか、なかなか大きな市場があった。

飯屋と思しきところに入る。


「3名様でよろしいですかー?」


「うん。あと、適当にこの店のオススメの料理を見繕ってくれ」


「かしこまりましたー」


3人で、席に着く。ステラだけは机の上に座っているが、驚いたことに、あとになって、妖精用の椅子と机が用意された。なかなか面白い風景である。

ミコは、初めての場所、初めての料理に胸を躍らせているようだ。俺も、実は興奮している。300年の怠惰と思っていたが、あそこでコツコツ貯めた10000Gが、こんな形で報われているのだ。


料理が出揃う。


豚を甘辛く煮たような、角煮を思わせる料理に、少し固いが、香ばしく焼き上げたパンが添えられている。

厚いステーキ状の肉の上に、ホワイトソースとチーズを乗っけて焼き上げ、独特の風味が癖になるスパイスをかけた、グラタン風の料理。


メザシに似た乾いた小魚を、食卓に乗せられたロウソクで炙って、ピリッと痺れるようなスパイスが混ぜられた白濁のソースにつけて食べると、これがもう絶品!


魚の骨で出汁を取ったというスープも、旨味と塩辛さがちょうどよくて、ほっと一息してしまう。


エールと呼ばれる酒は、度数が低く、この塩辛い料理と見事に合っていて、少しハーブが入っているのか、口の中が一瞬で爽やかになり、いくらでも食べられるような心持ちになる。


近くに座っていた、冒険者と思われる壮年の女性が、食べ方を教えてくれた。最初は「なんだ、観光か?ああん?」なんて、絡まれたかと思ったが、実に親切な人だった。


彼女の名前は、リエール。生まれた時から、この村で冒険者を営む、ベテラン冒険者とのことだ。

今では現役を引退し、後継の育成を行なっているのだそうだ。


ミコも、ステラも、本当に美味しそうに、次々に口に料理を放り込んでいる。


「ミコ、こんな美味しい食べ物、初めて!」


俺も確かに、こんなに美味いものを食べたことはないと思った。ふと頭によぎった「あれ、でも、普段、ミコって、何食べてるんだっけ?」という疑問は、とりあえず置いといた。

俺は相変わらず、ゾンビが蓄えた栄養を貰っていたが、この味を知ってしまうと、ねぇ。

妖精は魔素だけで十分なんだそうだが、食べ物も、嗜好品として食べられるらしい。


満腹と言ったところで、最後にデザートを頼んだ。果実を魔法で凍らせて、それを砕いてスムージーにしたような飲み物だ。


3人で、それを少し飲んで、一息つく。


「なんだ、お前ら、今まで、何も食ってなかったような食欲だったな!」


「いやぁ、この味を覚えてしまえば、今まで何も食べていなかったのと、同じだよ」


「そうか、そんなに美味かったか!俺が作ったわけじゃないが、俺のオススメの店が褒められると、俺もなんだか、嬉しいな、ハッハッハ」


豪快に笑う彼女の横顔は、前世では見たことのない種類の笑顔だった。壮年の女性が、豪快にハッハッハと笑い飛ばすエネルギーが、眩しいくらいだ。


「俺はミミク。名乗ってなかったな。もしまた、縁があったら会おう」


「おう、ミミク。俺はなんだか、お前らが気に入った!ミクちゃんにステラ!覚えたぞ!

ここは冒険者の村、明日があるとは限らない者たちが集う村!一期一会といえばそれまでだが、女神の恩寵に期待しよう!」


リエールという女性は、そのまま、後ろ手に手を振りながら、去って行った。伝票を残して。


「ちゃっかりしてんなぁ。でも、ま、嫌いじゃない」


「そうですね〜、私は、リエールさん、好きで〜す!でも、ミコちゃんのほうが、もっと好き〜!」


ステラが酔っ払って、ミコに絡んでいる。


「どうしたの、ステラ先生。私も、好きだよー」


「そういうところ〜!」


「キャーくすぐったい!」


店をあとにして、宿に戻る。なんだかんだ疲れたのか、ミコもベッドに飛び込んだまま、寝息をたてている。

ステラはもう、俺の肩の上で寝ていたので、そっとベッドに降ろす。ベッドに対して、身体が小さすぎる。キングサイズどころか、カイザーサイズ?


俺もベッドに身体を沈める。ああ、今日は、なんだか、いい一日だったな。

300年を、ただひたすらに、待つことだけに費やしたのが、馬鹿馬鹿しくなる。一方で、手持ち無沙汰でやったコイン収集が、こんなことになるなんて。


ダンジョンのオーナーになって、よかったな。こういう生活が、いつまでも続けばいいな・・・。


3人で初めて一緒に寝た日から、たったの1ヶ月。今では、なんだか家族のような気さえする。ミミクは、ふと、前世での両親、ミミックとしての両親を思い出す。

家族は今までもいたけど、俺、ちゃんと家族の一員として、生きてこれてたのかな。

わかんないけど、これからは、家族、と言ってしまったら、なんだかこっぱずかしいけど、こいつらを守りながら、こいつらの幸せを守りながら、生きていこうと思うよ。


ミミクも静かに、夢の中に落ちていく。

3人が、いびつな川の字を作って寝る様子は、まさに家族だった。


======現在の状況======



迷宮利益率= 80G/D(↓20)

→ミコが「村」に繰り出したため。

内訳

フランフラン 30G/D

マザーの眷属 50G/D


所持金:

80G(↓1000)

→換金所と製金所に渡したため。


資産:

・「ゴルデンミミック(変異種)」=5000G


スキル:

・“模倣(ミミック)”=対象物に擬態する。

・“換金(エクスチェンジ)”=コインを使ってパラメーターを高めたり、魔物を召喚できたりする。

・“捕食”=対象物をHPに変換する。

・“毒手(ポイズンタッチ)”=相手にわずかな物理ダメージと、毒効果を與える。

・“暗殺(アサシン)”=相手に気付かれず攻撃に成功すると、攻撃力が3倍になる。

・“目録(リスト)”=“換金エクスチェンジ”で行使可能な項目を羅列する。内容は多岐にわたる。

・“会計(チェック)”=対象が倒された時に落ちるコインの量がわかる。間接的に、対象の強さがわかる。しかし、仲間や作戦によって、その強さは上下するため、絶対的な指標ではなく、あくまで目安。


ステータス

・HP=120+1500

・MP=20+1500

・物理防御力=60+500

・物理攻撃力=300+500

・魔法防御力=20+500

・魔法攻撃力=20+500


従業員

・ステラ 職務:秘書 給料:2G/D

・魔物 総勢 300匹(ダンジョンバット15%、ダンジョンラット15%、魔物植物20%、ゴブリン10%、ダンジョンスネイル10%、スライム5%、ミミック5%、ダンジョンウルフ5%、オーク5%、サイクロプス5%、龍1%、吸血鬼1%、ボブゴブリン1%、タラテクト1%、人魚1%) 給料:0G/D

・ソ・ドラキュラ・フランフラン 職務:戦闘員 給料:歩合(平均して)5G/D

・マザーの眷属 0G/D



友達

・ミコ 種族:地底龍(ランドドラゴン)、幼女

・マザー 種族:タラテクト、肝っ玉母上





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