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アーリル王国の騎士  作者: siryu
海上戦の章
56/61

第56話 次の目的地へ

 クラーケンを討伐した翌日からミレヘスの町では海路の安全確認を目的とした試験運行を行っていた。その際、魔物が出た時の対策として船にはマルクスを含めたミレヘスの警備隊を乗せて行っていたが特に問題もなく試験運行は終了した。


 それから3日が経過した。


 船が本格的に運行再開となった今日、ヴィンスとローザは『ナクールの町』へ移動するために船場へと来ていた。そして彼等を見送る為にハンスとその部下にマルクスや町長も来てくれたのだ。


「これでヴィンス君とローザちゃんとは当分お別れなんだよな……やっぱり俺もついていこうかな……」


「ハンス、お前は討伐してからも3日間ヴィンス達と一緒にいたんだろう?だったらもう十分だろうが?」


 ハンスはヴィンス達と別れる直前になっても未練がましい事ばかり言っていた。そんな彼を見てマルクスは窘めるが、その言葉は彼の耳には届いていないようである。


「ハンス隊長!もう諦めてください!大体隊長まで一緒に行ったら仕事はどうするんですか!?」


「そんなもん辞表を叩きつけてでも——」


 ハンスはクラーケン討伐後も3日間の猶予でヴィンス達との別れを吹っ切れようとしたが、寧ろ余計一緒にいたいと思うほど彼等と過ごした事が楽しかったのだ。

 彼は言葉通り仕事を辞めてでもついて行こうとすら思ったが——


「ハンスさん、最後の別れじゃないんですから……今のハンスさんを父が見たらどう思うでしょうね?」


「そうよ、ハンスさん!私の父もこんなハンスさんは見たくないって言うと思うわ!」


 ヴィンスはちょっと卑怯かなと思いつつ自分の父親であるラルフを持ち出す。そしてローザも同様にアルフレッドを持ち出して思い留まらせようとした。


「うっ……!! それを言われると苦しいな……」


「そうだぞ、ハンス!お前もいい歳なんだから子供みたいな事を言ってヴィンス達を困らせるな!こいつらの方がよっぽど大人じゃないか!」


 ヴィンス達の思惑通りハンスも流石に自重する様に悩み始める。そしてそれを見たマルクスは畳みかけるかのように言葉を浴びせた。


「はぁ……残念なのは変わらんけど仕方ねえか……分かった!俺は諦める。ヴィンス君もローザちゃんも本当に元気でな!」


「はい!ハンスさんも皆さんも本当にありがとうございました!!」


「ええ、ハンスさん本当にありがとう!皆さんにもお世話になりありがとうございました!!」


 吹っ切れたハンスはヴィンス達に別れの言葉を告げる。これで安心したヴィンス達はハンスを始めとした見送りの全員に頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。


「おう!むしろ俺達の方が世話になったくらいだぜ!無事に帰って来いよ!」


「ええ、マルクス隊長の言う通りです。お二人もどうかご無事に旅をしてください」


 マルクスと町長は町の代表のような形でヴィンス達に謝意を伝える。


「兄ちゃん達!そろそろ船を出すから乗ってくれ!」


「あ、ごめんなさい。今乗りますので」


 船員から催促を受けたヴィンス達は名残惜しいと思いつつ船に乗り込んだ。


「「皆さん、ありがとうございました!!」」


「「頑張れよ~!!」」


 船が動き出すとヴィンス達は船尾からも手を振り、見送り人達も手を振って応えるのであった。





「……行っちまったか……よし、ここで腐っていても仕方ないからな!お前等!早速テシスに帰るぞ!!」


「「「はっ!」」」


 船が出て誰よりも遅くまで手を振っていたハンスも船が見えなくなると急に真面目な顔つきになり部下にテシスの町への帰還を命じた。部下達も隊長であるハンスの気持ちを汲んだのかいつも以上にハキハキと返事をする。


「ふん、お前もそうやって真面目にやればユーグみたいに相応の隊長に見えるのだがな」


「ちっ!何でそこで兄貴の名前が…………ふふふ、おっさんのおかげでいい事思いついたぜ!ありがとよ、おっさん!」


 マルクスの言葉に最初はムカッとした表情を見せるハンスであったが、何かを思いついたのか急にニヤニヤし出した。


「どうした、ハンス?急にニヤニヤして気持ち悪いぞ?」


「気持ち悪いってなんだよ?まぁいいか。実はここを出る前に伝書ホークを使って兄貴に手紙を送ろうかと思ってな」


「ユーグにか?一応町長からテシスとセシスの両町に情報は送っているからユーグにも伝わっていると思うが?」


「そうじゃねえんだよ、おっさん。俺がヴィンス君達と一緒に活躍した事を自慢するために送るんだ。ふふふ、兄貴の奴きっと羨ましがるだろうな」


 ハンスの魂胆を知ったマルクスは呆れて開いた口が塞がらない心境であった。


「お前……そんな子供っぽい事してどうするんだ?大体ユーグがそんな事で嫉妬したりするとは思えんが……」


「いや、兄貴は真面目だがヴィンス君達絡みになれば話は違うはずだ。俺だって盗賊団討伐の件で兄貴から受け取った手紙には巧妙に自慢するかのように書かれていて悔しかったからな……お返しだぜ、くっくっく」


 ハンスの言う通り彼等兄弟にとってはヴィンス達の父親であるラルフやアルフレッドは神と言っていい程の大恩人である。そしてその2人の子供であるヴィンスとローザもまた彼等にとっては特別な存在なのだ。だからヴィンス達がテシスの町に来た時に受け取ったユーグからの手紙を読んだ時は心底悔しかったのだ。


 しかし今度は自分から自慢出来るだけのネタもあった。クラーケンを倒した事は勿論、その後は3日間ヴィンス達と一緒にミレヘスの町周辺の魔物を討伐していた事だ。

 最初は自身が1回り以上年上である事からプライドが邪魔をしていたが途中からは素直にヴィンスに教えを請いた。それからはハンス自身も驚くくらいの手応えを掴んで成長出来た自覚がある。以前なら全くの互角であった兄のユーグにも今なら勝てると思える程だった。


 この感情を利用して自慢をしようと決めたハンスはまるで子供が悪戯をする時の様な表情になって楽しそうに笑った。それを見てマルクスはただただ呆れるばかりであった。


「本当にお前は……そんな事好きにしていいからさっさと帰れよ」


「へいへい、じゃあなおっさん。世話になったぜ」


 ハンスはそう言いながら振り返らずに手を振ってマルクスと別れる。そしてこの後ハンスは町を出発する前に伝書ホーク屋で兄のユーグ宛に手紙を出した。

 

 次の日にその手紙を受け取って読んだユーグは1日機嫌が悪く、副隊長のジェフ以下、警備隊の部下達も「ユーグ隊長に何があった?」と言わんばかりに困惑するのみであった。



—————————



 その頃ヴィンスとローザはもうすぐアプロン王国領を抜けると言う事でアプロン王国での出来事を振り返っていた。


「ヴィンス、本当にいい人達ばかりだったわね。ジムさんに、カレルの村では孤児院の皆と……砂漠ではユーグさんにジェフさん、ハンスさんにジョンさん。後はミレヘスの町ではマルクスさんに町長さんと」


「そうだね。最初は不快な思い(・・・・・)もしたとは思うけど」


 ヴィンスがそう言うとローザも思い出したようで苦笑いする。


「そう言えばそんな事もあったわね。砂漠に着いてから色々な事があり過ぎて忘れかけていたわ」


 以前ローザが「ケダモノ」と呼んだ国王のエーランドの事は今となっては取るに足らない事となっていた。


「それとまだアーリルを除いて1つの王国領しか回っていないけど、少なからずお父さんの昔話も聞く事が出来たのは私にとって大きかったわ。この先でも情報を得られたら嬉しいわ」


「うん。僕も父上の昔話を聞けたのは良かったよ。これからも色々な国を回ると思うとワクワクもしているんだ」


「そうね。あ、そう言えば次の『ナクールの町』の近くに迷宮があるって言ってなかったかしら?」


「そう言えばそんな事を聞いた気が……そうだ、思い出した。確かミレヘスの冒険者ギルド支部長がそう言っていたね」


 ローザから迷宮の話が出るとヴィンスはミレヘスの冒険者ギルド支部長が言っていた事を思い出した。


「ギルド支部長の話によれば迷宮がある関係で『ナクールの町』には高ランクの冒険者もいっぱいいるとか……」


「そんな事も言っていたわね。ヴィンスも興味あるのかしら?」


「そうだね……興味はやっぱりあるかな。迷宮もそうだし冒険者にもね。ただ、アルフレッドさんの捜索も進めたいからあまり長居するのはまずいけど……」


 ヴィンスにとって旅の目的は自身の修行とアルフレッドの捜索の2点であるが、前者よりも後者の方を優先すべきだと考えている。人命が掛かっているのだからその考えは当然の事だ。だから個人的興味を優先するべきではないと自制しているのだ。


「ねえヴィンス。あまりお父さんの事ばかり考えなくてもいいのよ?」


「……!?」


 ローザはヴィンスの心境を見透かしたかの様に話したのでヴィンスは無言ながら驚いた。


「勿論根拠なんてないんだけどお父さんは無事な気がするのよ。だからヴィンスはヴィンスでやりたい事をしっかりやって欲しいわ」


「……ありがとう。じゃあその都度相談するから2人で判断しようか」


「ええ、それで構わないわ!」


 ローザの言葉を受けてヴィンスも少し考え直す事にすると彼女も自分の気持ちが伝わって満足したのか笑顔になる。


「それにね、実は私も迷宮や他の冒険者には興味があるのよ」


「そうなの?」


「ええ。この前冒険者ギルドで出た話に通ずるんだけど、やっぱり私多分他のDランク冒険者に比べて実力がまだ伴っていないと思うのよ。だから追いつくためにももっと頑張らなければいけないと思うし、他の人達も見ていくべきだと思うのよね」


「そうか……ローザもちゃんと考えているんだね」


「勿論よ!……ってちょっとヴィンス、その言い方だとヴィンスは私が何も考えていないと思っていたって聞こえるんだけど?」


「ごめんごめん。決してそう言う意味で言った訳じゃないよ」


「ふうん……それならいいけどね」


 ヴィンスの発言に若干納得がいっていないローザは頬を膨らませて拗ねる仕草をする。

 勿論本気で拗ねている訳ではないが。


「もう数時間もしたらこの船も『ナクールの町』に到着するのね。楽しみだわ!」


 次の目的地へと想いを馳せ、ヴィンスとローザを乗せた船は海を進んでいく。


※海上戦の章 終了時のステータス

(なお、Lvが上がらなくてもステータス値の上下はあります)


名前  :ヴィンス・フランシス

種族  :人間(男:17歳)

Lv   :39

HP   :2102

MP   :591

力   :528

素早さ :376

体力  :524

魔力  :231

運   :58


スキル

力強化Lv3

素早さ強化Lv1

体力強化Lv3

身体能力強化Lv2

詠唱速度上昇Lv2

剥ぎ取りLv3 ←UP

威圧

剣技Lv7

槍技Lv5

盾技Lv4

炎魔法Lv3

風魔法Lv2

光魔法Lv2

聖魔法Lv1

回復魔法Lv3

魔法剣Lv2

索敵Lv3

交渉Lv2

料理Lv1


称号

騎士

魔法騎士


装備

武器:鋼鉄の剣(ランク3)

   鋼鉄の槍(ランク3)

防具:鉄の兜(ランク2)

   鉄の鎧(ランク2)

   鉄の籠手(ランク2)

   鉄の盾(ランク2)

   レザーブーツ(ランク1)



名前  :ローザ・マティス

種族  :人間(女:16歳)

Lv   :16

HP   :115

MP   :174

力   :28

素早さ :52

体力  :49

魔力  :97

運   :78


スキル

詠唱速度上昇Lv2 ←UP

風魔法Lv2

光魔法Lv2

聖魔法Lv1 ←New

回復魔法Lv2

付与魔法Lv1 ←New



称号

白魔導士


装備

武器:魔導士の杖(ランク2):魔力強化(極小)

   棘の鞭(ランク2)

防具:三角帽子(ランク2)

   魔導士のローブ(ランク2)

   レザーブーツ(ランク1)


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