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アーリル王国の騎士  作者: siryu
序章
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第4話 入隊試験 前編

——世界暦1214年——


「よし、明日は入隊試験だから今日はこれくらいで終わりにしておこう」


「はい、父上。今日もありがとうございました!」

 

 王国騎士隊は15歳から入隊試験を受ける事が出来る。

 入隊試験は年に2回行われており、明日がその試験日なのである。


 そしてヴィンスは今年で15歳になった。

 体も随分と大きくなり、父親のラルフにもうすぐ追いつきそうである。


「父上、僕は合格することが出来るでしょうか?」


 ヴィンスは少し不安そうな顔で父親のラルフに尋ねた。


 入隊試験の内容は筆記と実技に分かれている。

 筆記は学校で習うような一般常識から、戦場で想定されるシチュエーションを例題としてその場合どういう行動をとるのが望ましいのかを論文形式で回答するもの等である。

 実技は武具を装備した状態での行軍に遅れず付いて来られるかどうかの体力測定と、試験官の現役騎士と剣もしくは槍での模擬戦の内容で判定される。


 筆記は50点満点中30点以上、実技は行軍試験と模擬戦でそれぞれ合格判定を得られれば入隊試験合格となる。


 アーリル王国は他国に比べて税収は少なめでしかも学校を運営しているので国の予算に余裕はない。その分、締める所は締めるようにしている。その最たる例が王国の軍事部門を担当する騎士隊である。

 騎士隊は国の規模に対して若干少なめの隊員数で編成されている。少数精鋭を維持する為に入隊試験や訓練は非常に厳しいと有名であり、それ故に騎士隊は国民からとても信頼されていて王国に住んでいる若者の憧れの的でもある。そのため合格倍率は非常に高く受験者は徹底した対策をして試験に臨んでいる。その為か不合格者のほぼ全員が筆記は合格点に届いているが実技が合格点に届いていないパターンになる。相対的に実技の難易度が相当高いという事である。


 ちなみに不合格だった場合でも次回以降の入隊試験を受ける事は出来るので何度も試験に挑戦する者も珍しくなく、20代になってから合格する者も割とザラである。逆に15歳で合格した者はラルフやアルフレッドを含め歴代でもたった数人だけなのだが。

 

 ヴィンスは筆記対策として2年前から過去問などで勉強していた。出題内容は毎年大きく変わったりする傾向も無い様でこちらに関しては特に不安は無い。

 

 不安視しているのは実技の模擬戦である。

 何しろ今まで手合わせしたことのある相手が父親のラルフだけだからである。客観的に見て自分の腕前がどの程度に位置するのか判断する材料が少なすぎるのだ。


「安心しろ、ヴィンス。お前なら絶対合格出来るから!」


 ラルフは断言する様に力強く言った。ラルフは自身が入隊して以降もこれまでの入隊試験をほとんど全部見てきている。その上で言えるのはラルフ自身が受けた入隊試験と現在の入隊試験に難易度の差はほとんど無い事。そしてヴィンスは15歳で一発合格した当時のラルフと比較しても間違いなく強いのだから。


——————————


「よし、明日の入隊試験の段取りも全部終わったな」


「いえ、エリック副隊長。例の件がまだ決まっていません」


「ん?……あぁ、そうだったな。」


 王国騎士隊の会議室では明日の入隊試験に向けて副隊長のエリックを中心に最終調整を行っていた。本来であれば入隊試験は隊長のラルフが責任者となって準備をしていかなければならない。しかし今回の受験者には彼の息子であるヴィンスが含まれているので万が一にも有利になる様な情報が流れないよう公正を期して外れているのである。

筆記試験の準備は既に完了しており、実技試験の模擬戦に向けて試験官も割り当ては終わっていた。

 ……たった1名の受験者を除いて……


(ラルフ隊長の息子ヴィンスか……。誰を充てたら良いものか……?)


 エリックは頭を悩ませる。


 実技戦の模擬戦であるが受験者が試験官に勝つ必要はない。と言うよりも受験者が勝てないように態と中堅以上の騎士を試験官に割り当てている。もちろん試験官に勝てなくても相応の基準を満たしていれば合格点を貰えるので受験者からの不満も特に出ていない。

 とは言え何故強い騎士をわざわざ当てているのかと言えば当然理由がある。試験官に勝てるほど有望な受験者が現れるのも結構な事ではあるが、現役騎士が受験者に負けるのはやはり騎士隊の面子に関わるので好ましくないのである。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 22年前になるが入隊試験の模擬戦で試験官に勝った受験者がいた。ラルフとアルフレッドである。入隊試験初の快挙と言うことでちょっとした騒ぎになったのだが面白くないのが負けた試験官役の騎士2人である。

 周りの騎士達は「あの新人2人の強さなら負けても仕方ない」と慰めていたものの実際に負けた騎士2人からすれば「当事者でないからそんな事が言えるのだ」と素直に受ける事が出来ずにいた。そしてその負の感情を入隊したラルフとアルフレッドに向けてしまったのである。完全な逆恨みである。

 負けた騎士2人はラルフとアルフレッドに様々な嫌がらせをした。最初は意に介する様子も無かった2人であったが自分達の訓練用の剣が折られていた時は流石に激怒した。

 犯人を特定出来る根拠こそ掴んでいなかったが間違いなく例の騎士2人だと確信していたラルフとアルフレッドは、近くでニヤニヤしている例の騎士達を見つけた瞬間一気に飛び掛かった。相手は訓練用とは言え剣を持っているのに対してラルフとアルフレッドは素手である。不利な状況にも関わらずラルフとアルフレッドは一太刀も浴びることもなく騎士2人を叩きのめした。


「このような事をしてただで済むと思っているのか!」

「俺達がやったという証拠などないであろう!」


 騎士2人は喚き散らしていたがラルフとアルフレッドは問答無用で彼らを縛り上げ騎士隊長の前まで引きずり出した後、自分達が何をしたのか正直に報告し訴えたのだ。


「今回の件、確かに証拠は掴んでおりません。しかし私達はこの2人が故意に剣を折った犯人だと確信しております。」

「故に調査して頂けないでしょうか?もし何も証拠が出てこなければ私達はどのように処罰されても構いません!」


 この報告を聞いて激怒した当時の騎士隊長のアランは即刻調査チームを立ち上げた。訴えられた例の騎士2人は当初否定していたが、調査を行った結果剣を折るところを目撃していた者や日頃の嫌がらせを見かけている者が多数見つかったことにより言い逃れも出来ず遂に陥落した。

 この騎士2人の行為は極めて悪質と判断され懲戒免職処分を受けた。また、このような事態に発展したことと日頃から嫌がらせをしていたことに気付く事が出来なかった隊長のアランは自ら国王に処分を願い出た。国王は悩んだ末に減給3ヵ月の処分を下した。

 そして騎士隊は国民の貴重な税金で運用されていることからこの不祥事を国王は包み隠さず国民に公表した。このことで国民は国が公明正大であることを再認識し、騎士隊員はより気を引き締めることとなった。

 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



(騎士隊の意識も高いし、万が一試験官が負けたとしても当時のような事態にはならないとは思うが……出来れば試験官を負けさせたくはない)


 エリックが懸念しているのは負けた場合の試験官の精神面である。22年前懲戒免職処分を受けた騎士2人は国が騒動を公表した事で悪い意味で有名人になってしまった。居心地の悪くなってしまった2人は騒動後1週間もしない内に国を出て行ってしまったのだ。勿論全て自業自得であるのだが、受験者に負けた時のショックの大きさだけは少なからず理解出来てしまうのだ。


 エリックは悩んだ末決断した。


「よし、決めた!彼の担当試験官は……!」


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