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アーリル王国の騎士  作者: siryu
砂漠越えの章
38/61

第38話 盗賊団討伐作戦 中編

うわああああああ!!

手違いで削除してしまいました( ゜Д゜)

再upですm(_ _)m


 セシスの町の警備隊兵舎では警備隊員全員が落ち着きなくソワソワしていた。

 本来であれば警備隊が動かなければならない盗賊団の討伐と言う重要作戦の中で、町民ですらない2人の旅人に作戦で1番危険な部分を任せてしまっていたからだ。


「まだか……」


 隊長のユーグは右手の人差し指で何度もテーブルを叩きながら呟いた。

 最終的にローザの参加を許可こそしたものの、何かあったら彼女の父親であるアルフレッドに顔向け出来ない……彼はそればかり考えていた。


 そうしている間に兵舎の階段を慌ただしく降りてくる音が聞こえてきた。

 兵舎の屋上から双眼鏡を使って見張りをしていた兵士が降りてきたのだ。


「ユーグ隊長!ヴィンス殿とローザ殿がこちらに向かっているのを確認出来ました!それと作戦成功の合図である旗も見えました!!」


 兵士の報告を聞いたユーグは思わず立ち上がり拳を握った。


「うむ、報告ご苦労!これから作戦は第2段階に移るぞ!私に続け!!」


「「はっ!!」」


 ユーグの号令に副隊長のジェフ以下、作戦の第2段階に参加する10名の兵士が武者震いして声を上げた。





「ヴィンス殿にローザ殿!よくぞ御無事で!!」


「ユーグさん!合図は出したので伝わっているとは思いますが、第1段階は成功です」


 ヴィンスとローザはコドランを全力で走らせてセシスの町に向かっていたが、町に着く前にユーグ率いる警備隊がそれぞれコドランに乗って迎えに来てくれた。


「ヴィンス殿とローザ殿。こちらのコドランに乗り換えてください」


 ジェフは連れて来ていた2匹のコドランをヴィンスとローザに引き渡して乗り換えを促す。ヴィンス達が乗ってきたコドランは全力で走ってきたのでかなり疲労が溜まっていたのだ。


「ジェフさん、ありがとうございます。よし!ローザも乗り換えよう」


「ええ」


 コドランから降りた2人は乗ってきたコドランに特別な餌をやる。するとそれを食べたコドランはそのままセシスの町に帰って行った。


「騎乗は終わりましたね?それでは向かいますが宜しいですか?」


「はい、急いでいきましょう。「あれ」もそんなに長くは残らないと思うので」


「そうですね。よし!出発だ!」


 ヴィンス達の再騎乗を確認したユーグは警備隊に号令を出し、彼らが襲撃を受けた場所に向かってコドランを走らせた。





「ユーグさん、ここです!止まって下さい!!」


「ここですね?よし、全員止まれ!!」


 ヴィンスとローザが先程襲撃された場所に到着した一行。近くには先程ヴィンスが殺したザックの死体がそのまま捨てられていた。あまりにも鋭い切れ味を残した胴体と首を見た警備隊は思わず無言になってしまった。しかし——


(これがヴィンス殿の技か……流石ラルフ殿の御子息だ!!)


 ラルフを敬愛するユーグだけは声にこそしないが1人興奮していた。


 そんな警備隊はさておき、コドランから降りたヴィンスは周りの砂面をキョロキョロ見回すと探していた物を見つけて思わず両手を叩いて喜びを表現する。


「見つけた……ありました!『コドランの血』です!」


「ありましたか!?おお、確かに……」


 ヴィンスが探していた「あれ」とは先程の戦闘でローザの風魔法『エアーブラスト』で傷つけたコドランの流血の跡だったのだ。

 盗賊団の流血の跡でも良かったのだがポーションで傷を回復されてしまえば途中で血の跡が途切れている可能性も高かった。実際にも予想通り人間の血の跡は途中から見えなくなっていた。

 それに対してコドランの治療が出来るほど盗賊団にポーションの余裕があるとは思えなかったのでヴィンスはそこに目を付けた。

 そしてコドランの血は人間と違って色が緑で粘着性も高く、ヴィンスの狙い通り比較的しっかり残っていたのだ。


「これ以上風にさらされて血の跡が見えなくなる前に盗賊団を追いましょう」


「ええ!よし、跡を追うぞ!」


「「はっ!」」



——少し前——



 ヴィンス達から返り討ちに遭った盗賊団はリーダーに事態の報告をするため急いで逃げ帰っている最中であった。途中、ヴィンス達が追いかけていないのを確認すると手持ちのポーションで治療する。


「くぅ……とんでもねえ目に遭ったぜ」


「お、俺なんか奴の膝蹴りで鼻と歯が何本も折れちまった……くそ!無茶苦茶痛ぇ!!」


「ザックなんて奴と距離が離れていたのに一瞬で首を斬り落とされたぞ……なんだよ、あの技は!?」


「しかし『索敵』持ちのザックが()られたからには、これ以上砂漠で襲撃を続けるのは難しいだろうな……」


「と、とにかくリーダーに急いで報告しねえとな……」


「ああ、治療が終わったら急いで拠点に戻るぞ!」


 盗賊団の1人がそう言うと全員黙って頷き、傷ついたままのコドランに乗った。





 砂漠の中でも一際目立たない場所に盗賊団が拠点にしている建物があった。砂丘を使って上手く隠してあったので簡単には分からない代物である。そこには盗賊団のリーダーとサブリーダーを含む10人程がエールを飲みながら襲撃に出た仲間の帰りを楽しみに待っていた。


「はっはっは。あいつら今日は何を収穫してくるかな?」


「さあ、何でしょうね?でもあいつらそろそろ新しい女が欲しいって言ってましたぜ。リーダー」


「ふん、確かにそれはいいな。ここにいる女はもう飽きたしな」


 リーダーと呼ばれた男は部屋の隅に放置されている女性達を一瞥してニヤニヤする。





 この男は昔はとある国で兵士をやっていたがある男と2人で不祥事を起こした事で除隊させられ、居心地が悪くなった事で故郷から出る事になった。

 それから隣の国で素性を隠し兵士になる事が出来たが2年後にまた不祥事を起こした。その際に2年前の不祥事も明るみになって2人揃って国外追放処分を受けていた。

 

 その後は長い間各地を流浪しながら今年になって国外追放を受けたこの国に密入国し、荒くれ者を束ねて自身がリーダー、連れをサブリーダーにして盗賊団を結成したのだった。

 

 この男にとって幸いだったのが荒くれ者の中に高Lvの『索敵』持ちがいた事だ。『索敵』によって確実に襲撃を成功させる事が出来て今でも警備隊に足がついていない。その男には分け前を多くする事で不満を出さずに盗賊団をまとめ上げる事が出来ていたのだ。


 そして男には鼻の上に剣による大きな傷跡が残っていた。これは昔この国で不祥事を起こした際にある男から受けた剣の傷であった。そして故郷で不祥事を起こす事になったのも元はと言えば同じ男のせいだと思っていた。

 その傷をなぞると今でも怒りが込み上げてくるものがある


(「奴」のせいで真っ当な道は歩めなくなったが……俺はこれから盗賊として伸し上がってやるぜ!!)


 この男の名前はサイモンと言ってアーリル王国の元騎士であった男だった。そしてサイモンが心から恨んでいる「奴」とはヴィンスの父親であるラルフの事であったのだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 今から24年前サイモンは同じ境遇で現在盗賊団のサブリーダーを務めているダスティンと共にアーリル王国を出た後にアプロン王国の兵士となったがその2年後、スラム街で憂さ晴らしのために子供へ暴行をしていると突如後ろから首を掴まれ投げ飛ばされた。投げ飛ばした男の顔を見た瞬間サイモンの顔は青ざめた。


(な、何故こいつがアプロンにいる!?)


 自分をアーリル王国から追いやった張本人であるラルフが自身の目の前にいるのがサイモンには信じられなかった。そして連れのダスティンもある男に投げ飛ばされていた。


(しかも……アルフレッドもいるだと……!?)


 カッとなったサイモンは剣を抜いてラルフに斬りかかるが彼は剣すら抜かず全て躱してしまった。激昂したサイモンは思わず


「ラルフ!!舐めやがって!!」


 と叫ぶがラルフの反応は予想の斜め上であった。


「……え?何で俺の名前を知っているんだ?」


「なっ、何だと!?」


 2年間サイモンが恨み続けていたラルフはサイモンの顔など全然覚えていなかったのだ。


 サイモンは悔しさのあまりラルフへ闇雲に斬りかかったがまたもや全て躱された。諦めずに渾身の力で斬りかかるが、面倒になったラルフは剣を抜くと剣技『斬鉄剣』でサイモンの剣を斬り落とした上に、彼の鼻の上を軽く切り裂く離れ業をやってのけた。


 剣を斬り落とされ鼻の上からも出血したサイモンは完全に戦意喪失して思わず座り込んだがラルフは「子供達に謝罪しろ!」と言って頭に拳骨を喰らわせたのだ。とんでもない腕力から繰り出された拳骨は凄まじい威力でサイモンの鼻から火が出そうだと錯覚した程だった。

 謝罪しようにもあまりの威力に思わず蹲っているとラルフに反省の色なしと判断されてもう一発拳骨を喰らいそのまま気絶してしまった。


 サイモンが目を覚ました頃には連れのダスティンと共に城まで運ばれていた上に兵士達に取り囲まれていた。自分達の所業がバレると百叩きの刑に処された上で国外追放されたのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



(ザックの『索敵』があれば俺達は捕まらない……くくく、俺を国外追放したアプロンの奴らにはいい気味だぜ!)


 サイモンはジョッキを握ってエールを飲んでいると外が徐々に騒がしくなってきた。


「リーダー。あいつらが帰ってきたようですね」


「そうみたいだな。折角だから開けてやれ」


 サイモンは顎で部下に指示を出して扉を開けさせる。すると帰還した者達の様子がおかしく、しかもその中に斥候を務めているザックがいないのだ。

 

 サイモンは目を細めて詰問する。


「お前ら……一体どうした?」


「リ、リーダー!ま、拙い事が起きた!返り討ちに遭っちまった!!」


「返り討ちだと!?ザックがいながら警備隊に手を出したと言うのか!?ザックはどこにいる!?」


 団員から返り討ちの報を聞いたサイモンは激怒しザックを探すが団員が慌てて止める。


「それが……ザックは()られました」


「ザックが()られただと!?そんな馬鹿な!?」


 ザックを殺されたと報告を受けたサイモンはとても信じられなかった。単純な戦闘能力こそそこまでではないが『索敵』Lv4を持つ危機察知能力の高いザックがやられるほどの相手だと言う事に。


「しかも信じられない事に離れた相手は離れた場所からザックを……」


「離れた場所から?相手は魔法使いか?」


「いえ……剣です!!」


「剣だと!?馬鹿を言うな!そんな事出来る奴がいる訳……ないだろう……」


 サイモンは報告をした部下を叱責するが最後はトーンダウンした。自分の知っている限り2人程そんな事をやってのけそうな人物を知っていたからだ。しかしその2人が流石にこんな砂漠まで来ているとは流石に考えにくかったので自身の考えを直ぐに否定した。


「くそ!!あいつがいなくなっちまったら砂漠での商売も上がったりだ!!場所を変える事も考えねえとな……」






 一方ヴィンス達はコドランの血の跡を追う事で盗賊団の拠点の近くまで辿り着いていた。


「コドランの血があまり乾いていない……盗賊団の拠点が近いのかも知れませんね」


 ヴィンスは盗賊団の拠点の近くまで来ているかもしれないと思い小声でユーグに話し掛けた。


「そうですね……この辺りは我々の捜索がまだ届いていない範囲ですが……」


 ユーグもヴィンスの意図に気付いて小声で返答する。


「しかし、この辺りのどこに拠点があるのか……一面砂しか見えません!」


 ジェフは周りを見渡しているが砂以外に何も見つけられず焦りの声を出す

 他の警備隊も2人ペアで捜索するが何も発見出来なかった。


「コドランの血もここで終わっている……この辺りに間違いはないはずだ……」


 ヴィンスはそう呟くと『索敵』に集中する。現時点でヴィンスの『索敵』Lv2では建物の中にいる人間や砂漠に隠れている魔物を見つける事は難しかった。それでもどうにかして見つけなければと集中した。

 ローザはヴィンスの様子から彼が『索敵』に集中している事に気付くと周りの警備隊に動かない様、身振り手振りで伝える。


(…………見つけた!)


 ヴィンスの『索敵』に弱々しくだが気配を感じた方向を見るとそこには砂丘しか見当たらなかった。だがヴィンスはその砂丘にゆっくりと近づいて周りを確認しながら歩くと砂丘で上手く隠した建物を発見した。

 

ヴィンスは全員に向かって手振りで「こっちに来てください」と伝える。


「こ、ここか……」


「ここに盗賊団が……」


 やっと盗賊団の拠点らしき建物を発見出来た警備隊は身震いする。


「よし、ここを奴らの墓場にするぞ。ヴィンス殿は私と共に先頭をお願い——」


「ユーグさん、ストップです。その前にやる事があります」


 ユーグはヴィンスに自身と先頭を共にして欲しいと頼もうとするが、ヴィンスはそれを止めてある事を促そうとした。


「ヴィンス殿、やる事とは?」


「盗賊団の非常口を押さえる事ですよ」


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