第32話 ヴィンスの逆襲
「ヴィンス、あまりいい顔していないわね?」
「う~ん、今日の予定を考えるとどうしてもね」
昨日アプロンの城下町に返ってきた2人は夕食後それぞれの部屋に分かれて休息を取った。
そして次の日、いつも通り朝食を食べていたのだが、ヴィンスの表情が微妙に冴えていないことからローザが心配したのであった。
「あ……ごめんなさい、聞くんじゃなかったわね」
「いや、僕がもっと笑顔で食べていたら良かったんだから寧ろ僕が謝るべきだろうね。こちらこそごめん」
そう。今日はアプロン王国の国王であるエーランドに窃盗事件の報告をしないといけないのだ。
現時点で2人から王国側にアポイントは取っていないが、おそらく昨日城下町に入った事は門の衛兵から連絡がいっているだろうと推測していた。
「このまますぐに城下町を出ちゃったら駄目かしら?」
「流石にそれはね……マジックポーチには絵画と白金貨も入っているし、何より身分が割れているから音沙汰無しで出て行けば、最悪アーリル王国や陛下に迷惑を掛けかねないよ」
「確かにそれは不味いわ……腹をくくるしかないのね……」
ローザも出来ればエーランドに会いたくすらなかったが、ヴィンスに状況を説明され渋々でも受け入れるしかなかった。
そして案の定——
コンコン
「(この叩き方はローザじゃないな……)どちら様ですか?」
「アプロン王国の兵士ジムですぞ、ヴィンス殿」
「(やっぱり……)はい、今開けますね」
朝食後に部屋で寛いでいると案の定、兵士のジムが部屋まで訪ねてきた。
二度手間にしたくなかったヴィンスは隣の部屋にいるローザも呼んでジムと話をする事にした。
「おお!?これは確かに盗まれた絵画ですぞ!よくぞ見つけてくれました!」
3人が集まった部屋でヴィンスは取り返した絵画をジムに見せる。2人が城下町を出発してたった数日で取り返してきた事にジムは大喜びをした。
「それと……こちらですが……」
ヴィンスはジムに白金貨70枚を渡す。
「む、これは何でしょうか……白金貨がこんなに……まさかこれは!?」
ジムもこの白金貨が元は何であったのかの予想がついたようだった。
そしてヴィンス達がここでどのように回答をするかで運命が変わる「分かれ道」とも言える瞬間であり、彼は慎重に答える。
「こちらは……回収した絵画の傍に置いてありました。恐らくですが……過去に盗まれた3点の美術品は売られてしまったのではないでしょうか?私はそう判断してこの白金貨も回収しました。それ以上の事は分かりかねます」
「……」
ヴィンスの隣にいるローザは一切口を挟まない。今回の対応は全部ヴィンスに任せる代わりに彼女が口を挟まない事で矛盾した証言をしない事にしているのだ。
そしてヴィンスの話を聞いたジムも当人の証言以外に何も証拠はないので確認した内容自体には特に不満も無かった。
「そうでしたか……ちなみに犯人は、いやこれらはどこで回収したのでしょう?」
((いよいよこの質問がきたか!))
ヴィンス達が孤児院の事を一切喋らないようにするための一番大事な部分と言える質問である。
「これらはカレル村の南西にあるシャオン鉱山から回収しました。それと犯人は不在でした」
「ほう……?シャオン鉱山と言えば既に廃鉱になっていたはずですが、犯人はそこを拠点にしていたと言う事でしたか……ちなみにどうやってシャオン鉱山に目を付けられたのですか?」
「それは勘でたまたまそこに辿り着いただけですよ」
「ふうむ……」
ジムはヴィンスの返事を聞くと少し考え込んで黙った。
そして彼は目を細めてヴィンスに詰め寄るように問いかける。
「どうもヴィンス殿は私の事を何か警戒されておりませぬか?」
「……ジムさんの仰っている意味が分かりませんが……?」
確かにジムの言う通りヴィンスは彼を警戒していた。人柄を信用出来ないタイプの人間ではないとヴィンスは思っていたが、それでもジムがアプロン王国の兵士である事を考えると軽々しく真相を話す訳にはいかないとも判断していた。
「考えてもみてくだされ。カレルの村を話したのは他ならぬ私ですぞ?それにも関わらず私に対して「勘で辿り着いた」とは……流石にそれでは私も納得出来ませんぞ」
「……」
「恐らくカレルの村にある孤児院と何か関係があるのでしょう?出来れば私を信用して真相を話していただけませぬか?」
ヴィンスは大いに悩む。
ジムに真相を話した結果、万が一それをエーランドに話でもされれば孤児院はとんでもない事になるのが火を見るよりも明らかであったからだ。
その一方でジムがカレルの村を教えてくれたのは事実であり、その際の話ぶりを見るにアプロン王国の歪みとでも言うべき現状を憂いているのも確かであった。
そしてヴィンスは悩み抜いた結果、賭けに出る事にする。
「分かりました。ジムさんを漢と見込んでお話ししましょう」
「!!(本当に大丈夫かしら……?)」
「是非そうして頂けると嬉しいですな」
「なるほど……よく分かりました……真相を話して頂き感謝します……うう……」
ヴィンスは真相を包み隠さずジムに話した。ジムは孤児院の詳細を知るとヴィンス達が目の前にいるにもかかわらず泣きに泣いた。
「大変申し訳ない……そうですか、彼が稼いで孤児院を……」
ジムの言う「彼」とはドミニクの事である。ジムは冒険者をやっていたドミニクの事を知っていたらしかったが、そのドミニクが孤児院に関係していたことや2年前に亡くなっていた事までは知らなかったのだ。
「分かりました!盗まれたとは言え現物と……まぁ一部はお金になってしまいましたが取り返してくれたのです。実質的な被害者もおりませんし私はヴィンス殿に協力しますぞ!」
ひとまずジムの協力を取り付ける事が出来たヴィンス達は安堵し、この後3人でエーランドへの報告をどうするか協議する事にした。
——————————
「相変わらず人を待たせるのね、ここの国王は。こっちは依頼を済ませてきたと言うのに」
「……」
午前中一杯は3人で打ち合わせをし、午後からアプロン国王のエーランドに報告するため謁見の間まで来ていたが前回と同様で30分以上待っていた。
小声であるがローザは不満を口にした。ヴィンスも無言ではあるが思っていた事は彼女とあまり変わらないものだった。
「前回同様お待たせして本当に申し訳ありませんな……」
ジムは内心では既に自身の主を見限っているが、それでも一兵士としてヴィンス達には申し訳なく思っていた。
そして10分後——
「おお、待たせたな」
相変わらずの太った巨体を揺らしてエーランドが現れた。
(何が「待たせたな」よ!どうせ大して忙しくも無い癖に!)
ローザは内心で根拠なく「忙しくない癖に」と毒づいていたが実はその通りだった。このエーランドと言う男は自分を大きく見せようとして、相手を意味なく待たせるなどして尊大に構えていたのだ。
ヴィンスも少なからず腹が立ってはいるが、さっさと用件を済ませてこの城を出たかったので淡々と済ませようとした。
「いえ、エーランド陛下。本日は先日承りました窃盗事件の件で報告に参りました」
「ほう?あれから数日も待たされたがようやく報告に来たのか?」
「なっ!?」
エーランドのとんでもない言い草に思わず兵士であるジムが驚きの声を上げてしまった。
ローザも表情こそ何とか変えずに我慢したが内心は怒りの炎が渦巻いている。
そしてヴィンスはと言うと一種の感情の変化が生まれていた。それは——
(ああ……この人はなんて貧しい人なんだ)
ヴィンスは怒りを通り越し、いっそエーランドが哀れに見えて仕方がなかった。自分を大きく見せようとするあまりにただ非礼を尽くすだけの男が滑稽ですらあった。
ただし、この勘違い男をこのままにしておけばアーリル王国が舐められる事になると判断したヴィンスは先程までの打ち合わせ内容を全て放棄する事である戦略を思いつく。
「それは御期待に添えず申し訳ありませんでした。でしたら報告は無用と言う事でよろしいでしょうか?」
「な!なんだと!?どういうことだ?」
予想もしていなかったヴィンスの発言にエーランドは慌てふためく。
ローザやジムもまさかこのような展開になるとは思っていなかったので驚きっぱなしであった。
「私は依頼こそ引き受けましたが、特に日数は指定されていなかったと記憶しています。であるにもかかわらず「待たされた」と言われるのは些か心外ですね。ジムさん!私が依頼を引き受けた際にエーランド陛下から期限は設けられていたでしょうか?」
「い、いえ……陛下から特にそのような御言葉は無かったと記憶しています」
ヴィンスから急に話を振られて焦るジムであったが、ヴィンスの主張は正しかったし何よりジムは彼を裏切る様な事は絶対にしたくはなかった。
「ぐぬぬっ!!」
ヴィンスから言われた通り期限など言っていなかったエーランドは己が調子に乗り過ぎた事を反省する訳でも無く、部下であるジムがヴィンスを支持する発言をした事に対して腹を立てる。しかし、彼らの言っている事は事実であったためこの場で叱責する訳にもいかなかった。
(いい気味だわ!)
ローザは澄ました顔でヴィンスの横にいるが、内心では彼に「よく言った!」と賛辞を贈りたい気分であった。
「ふん!だったら特別に日数の件は不問に——」
「エーランド陛下、まだ勘違いされておりませんか?そもそも今回の日数に関しては最初から問われる筋合いは無いと言っているのです。不問も何もありません」
「貴様……!さっきから余に向かってどんな口を利いて——」
「はて?私はアーリル王国の一兵士でしかありませんが、このアプロン王国の兵士でも無ければ国民でもありません」
「それがどうしたと言うのだ!?」
「まだお分かりになりませんか?先日御会いした時の発言と言い本日も含めた無意味に我等を待たせた件と言い、失礼な対応をされているのはエーランド陛下の方でございます。それに比べればこちらはまともな事しか言った覚えはありませんが?」
「なっ、なっ!?」
エーランドは顔を真っ赤にさせて絶句している。
「貴様……これだけの事を宣っておいて無事にこの城から出られると思うなよ!!」
「左様ですか。しかし先日のエーランド陛下の発言は一字一句漏らさずアーリル国王のレオンに届けておりますが」
「……何だと……?」
「その後私の方からレオンに何も連絡が届かなくなれば……どうなるでしょうね?」
「ぐ、ぐ、ぐ、ぐぬぬ!!!」
もしヴィンスの言っている事が本当であった場合、彼を処刑でもしようものなら間違いなくアーリル王国とアプロン王国は戦争になる。そうなったら確実に彼の父親であるラルフが乗り込んで来るだろう。そしてアプロン王国の軍事力ではラルフ単独ですら止められる保証は無かった。
「……もうよい!貴様の顔など二度と見たくないわ!さっさと立ち去れ!!」
「左様ですか……ではこちらを置いていくことにして依頼の件は完了とさせて頂きます」
エーランドは激昂したままヴィンスを追い払おうとした。ヴィンスとしてはそのまま城を後にしても良かったのだが、このまま引き返すと後で何を言われるか分かったものではないので回収した絵画と白金貨を置いていきローザを連れて後にした。ジムも彼らを見送ると称して謁見の間を離れた。
「いや~、本当にスカッとしたわ!!最初からこうしてやれば良かったくらいよ!!」
城を出た途端、ずっと感情を出さないように我慢していたローザは喜びを爆発させた。
そしてそんな彼女も気付いてはいなかった。実はヴィンスがエーランドをわざと怒らせたのは非礼に対する意趣返しだけでなく犯人の追及を有耶無耶にする戦略であった事を。
後を追いかけてきたジムが2人に追い付くと改めて謝罪する。
「先日に引き続き陛下の非礼、大変申し訳ありませぬ」
「いえ、今日は僕も好きなように言わせて貰いましたからね、おあいこですよ。それと折角の打ち合わせが無駄になってしまい申し訳ありませんでした」
事前の打ち合わせでも結局特にこれと言った説得力のある説明を思いつかなかったので、アプロン王国領を虱潰しに北から探したら偶然見つかったと説明して何とか乗り切る予定だったのだ。
「いえいえ、結果上手く乗り切れたのですからな。お見事でしたぞ!」
事前に考えていた説明では説得力に欠ける部分が多いので、結果論とは言えヴィンスは見事に舵を切り直した事をジムは称賛した。
そしてローザは今でも上機嫌で話をする。
「ジムさんの前でこんな事を言うのも悪いけど、本当に良い気味だったわ!あんなに顔を真っ赤にしながらヴィンスに何も言い返せないんだから!」
「まぁこれに関してはローザの功績が大きいんだけどね」
「え?私が何かしたかしら?」
ローザはピンときていないようでポカンとする。
一方、ジムは気付いているらしく微妙な顔をしていた。
「そもそもあの人が何も言い返せなかった決定的なポイントは先日ローザへの発言の事だからね」
「私に言った……ああ、あれね!!思い出しただけで鳥肌が立つわ!!」
それは勿論ローザを「妾にする」発言の事である。
いくらアプロン国王と言えど、謁見中に言ったという事が公になれば流石に大問題になるのだ。
「それはそうと、そう言えばヴィンスったらいつの間にレオン陛下に手紙を送っていたの?私全然知らなかったわ!」
ローザは先程のやり取りで気になっていた点をヴィンスに質問したが彼からは驚きの言葉が返ってきた。
「それなんだけどまだ出してないよ」
「「……は?」」
これにはローザだけでなくジムまで驚いた。
「ど、どういう事よ?まさか嘘だったの!?」
「う~ん、嘘と言えば嘘だけどこの城下町を出る前には伝書ホークを飛ばすつもりだったからね。それがアーリルに届けば何も問題は無いだろう?」
ヴィンスはあっけらかんと答える。もう終わった事とは言え、後程因縁をつけられても言い返せるように事の顛末を書いてこれから手紙を出すつもりであった。
「ちょっと待ってよ!もしあの場で嘘がバレていたらどうするつもりだったのよ!?」
「それは大丈夫だよ。だって飛ばしていないって確認する手段が無いじゃないか」
その言葉を聞いたローザは思わず呆れた。だが、ヴィンスの言う通り「飛ばしていない」証拠など確認する事など出来ないのだ。
「はっはっは!おっと失礼……嘘も巧みに使いこなすとは……ヴィンス殿は戦略家としても優秀ですな!」
「お褒めに預かり恐縮です」
ジムの称賛を素直に受け取るヴィンス。隣にいるローザは呆れっぱなしだ。
「しかし、僕のせいでエーランド陛下もカンカンだろうな……後から父上宛で手紙を出しておけば多分アーリル王国に迷惑を掛ける事はないだろうけど……ジムさんにはご迷惑をお掛けします」
ヴィンスはそう言ってジムに頭を下げるが、ジムから意外な事を聞かされる。
「いえ、気になさらないで結構ですぞ。私も先程の謁見で兵士を引退する決心がつきましたのでな」
「「ええ!?」」
これには流石に2人も驚いた。
特にヴィンスは自分のせいでジムが兵士を続けられなくなったとしたら大問題だと感じていた。
「先に断っておきますが、決してヴィンス殿のせいではありませんぞ。今朝お二人に孤児院の事を聞いてから色々考えておったのです。ですから引退したら荷物を纏め次第カレルの村に移住しようと思っております。出来れば少しでも孤児院の手伝いをしたいですな」
「それはまた随分と急な……御家族は宜しいのですか?」
まだヴィンスは心配してジムに問いかけるが、彼は笑顔で答える。
「それは大丈夫ですぞ。妻はもう亡くなっておりますし、息子達も砂漠の町で兵士をやっているので今は気楽な独り身なのですよ」
「そうでしたか……ジムさんにはお世話になったので何か困った事があれば遠慮せず言ってくださいね」
ジムが既に妻を亡くしていると聞いたローザは少し悲し気な表情を見せたが、気を持ち直してジムに言葉を掛けた。
「はっはっは、お気持ちだけ頂いておきますぞ。ローザ殿。ところでお二人はこれからどうなされるのですかな?」
「僕達はこれからプホール王国を目指すので砂漠を越える予定です」
「砂漠……となれば我が息子達がおりますな。もし会う事があればお二人の力になるよう一筆認めて後程宿に持って行きましょう」
「それは助かりますね、ありがとうございます!」
ジムの息子達は2年前に国王のエーランドに直訴した結果砂漠の町に左遷されたと聞いていた。それだけ気概のある兵士達に紹介状を書いて貰えるのであれば何か役に立つかもしれないので、ヴィンスはジムの好意に感謝する。
「それでは一度失礼させて頂きますぞ。宿に持って行きますので後程……」
2人はここで一旦ジムと別れる。
「さてと……明日にはこの城下町を出ようと思うから今の内に色々片付けておこうか。ローザもそれでいいかな?」
「ええ、勿論よ」
「まずは鍛冶屋に行くよ。剣と槍の手入れをお願いしたくてさ」
2人はヴィンスの武器を手入れして貰う為に鍛冶屋に寄って剣と槍を預ける。
「よし、次は伝書ホーク屋に行ってアーリルに手紙を届けて貰わないとな……」
次に2人は伝書ホーク屋に向かった。
伝書ホーク屋は冒険者ギルド同様で、各町や村に設置されている。それぞれの店で飼い慣らした人喰いホークを目的の町に設置された伝書ホーク屋まで飛ばして手紙を運び、そこから店の人間が宛先まで運ぶ仕組みになっていた。
「よし!僕は書けたけどローザは自分の分を書けたかな?」
「ええ、お母さん宛の手紙を書いたわ。でも私のも城下町宛で出しちゃっていいの?」
「うん、実は父上から頼まれていてね。その……父上がアンナさんに会う口実が欲しいらしくて」
「……なるほどね。だったら納得だわ。でもラルフさん、そこまで気にしなくていいのに……」
ヴィンスの父ラルフは5年もの間アルフレッドの捜索に出られなかった事を負い目に感じていた。勿論ラルフの責任ではないのだが自身の幼馴染とその家族に対してずっと謝罪したい想いだったのだ。そこでせめて自分の手でローザからの便りをアンナに届けたいと考えたのだった。
「きっとお母さんもラルフさんに謝って欲しいとは思ってないだろうけど……でもそれがラルフさんの為になるなら私は構わないわ」
そう言うとローザは自分の書いた手紙をヴィンスに渡す。受け取ったヴィンスは自分の手紙と纏めて店員に半銀貨5枚を渡す。
「これをアーリルの城下町までお願いします」
「あいよ!アーリルね」
店員はそれらを受け取ると手紙を専用の袋に入れる。伝書ホークの足に袋を紐で括り付けると直ぐに飛ばしてくれた。
「今からなら今日中には届くと思うよ」
「ありがとうございます。これ少ないですけどどうぞ」
「おっ!ありがたく受け取っておくよ。またの御利用待っているよ!」
ヴィンスは直ぐに対応してくれた店員にチップとして半銀貨2枚を渡した。
伝書ホークの運用には2つのパターンがあり、1つは同じ宛先を1日分纏めて飛ばす「纏め便」で、もう1つが単独でもその場で飛ばす「個別便」である。半銀貨5枚はアプロンからアーリルまでを個別便で出した場合の金額であるが、中には個別便の値段を受け取りながら個別便で飛ばさずに纏め便で飛ばす輩もいるのだ。
ヴィンス達に対応してくれた店員は目の前で飛ばしてくれたので、彼は感謝の意を込めてチップを渡したのであった。
「これで手紙の件は終了と……じゃあもう一度鍛冶屋に寄って剣と槍を回収しないとね」
鍛冶屋に戻ると槍の手入れは終わっていたが剣がもう少し掛かると言う事で少々待つことにした。
「この国に来てたった数日しか経っていないのに色々な事があったわね」
「そうだね」
待っている間手持無沙汰になった2人だったが、不意にローザがヴィンスへ話しだす。
「色々な事があって、私が今まで知らなかった色々なものを見て……お父さん達も昔はこんな風に旅をしていたのかしら……?」
「多分そうだろうね。そしてそれが有意義だと思っていらっしゃるから陛下も僕達にこういう機会を与えてくれたんだと思っているよ」
「そうね……あのね、ヴィンス。私はこの旅に参加すると決めた時はお父さんの事しか考えていなかったわ。でもこの国に来てから良かった事も酷かった事も色々見て……本当に考えさせられる事ばかりで……今ではこれが私にとっても修行の旅であると心から思うわ」
「そうか……ローザもそう思っているなら、これからもっと成長出来るんじゃないかな」
「ふふっ、そうでありたいわね」
2人は顔を見合わせて微笑み合った。
「ヴィンス様ですね?ジム様からお手紙と伝言をお預かりしています。「御武運をお祈りしていますぞ」との事でした」
「ああ、ジムさんより遅くなっちゃったか……悪い事しちゃったな……」
鍛冶屋で剣を引き取って宿に戻ってくると受付から手紙と伝言を受け取る。
ヴィンスは受け取った手紙の中身を見る事無くマジックポーチにしまった。
「これで準備も大方終わったし……明日の出発に向けて英気を養おうか?」
ヴィンスは意味ありげな笑顔でローザの顔を見る。
ローザも彼の真意に気付き満面の笑顔で頷く。
「ええ!この城下町での食べ納めをするわ!」
そう言ってお気に入りの料理屋に足を運んだ2人は明日からの砂漠越えに向けて大いに食事を楽しんだ。
※アプロン王国の章 終了時のステータス
(なお、Lvが上がらなくてもステータス値の上下はあります)
名前 :ヴィンス・フランシス
種族 :人間(男:17歳)
Lv :37
HP :1928
MP :522
力 :483
素早さ :343
体力 :487
魔力 :190
運 :58
スキル
力強化Lv3
素早さ強化Lv1
体力強化Lv3
身体能力強化Lv2
詠唱速度上昇Lv2 ←UP
剥ぎ取りLv2 ←UP
威圧
剣技Lv7
槍技Lv5
盾技Lv4
炎魔法Lv3
風魔法Lv2
光魔法Lv2
聖魔法Lv1 ←NEW
回復魔法Lv3
魔法剣Lv2
索敵Lv2 ←UP
交渉Lv2
料理Lv1
称号
騎士
魔法騎士
装備
武器:鉄の剣(ランク2)
鉄の槍(ランク2)
防具:鉄の兜(ランク2)
鉄の鎧(ランク2)
鉄の籠手(ランク2)
鉄の盾(ランク2)
レザーブーツ(ランク1)
名前 :ローザ・マティス
種族 :人間(女:16歳)
Lv :10
HP :66
MP :81
力 :13
素早さ :28
体力 :25
魔力 :57
運 :78
スキル
詠唱速度上昇Lv1 ←NEW
風魔法Lv1
光魔法Lv1
回復魔法Lv2
称号
白魔導士
装備
武器:魔導士の杖(ランク2):魔力強化(極小)
ブロンズナイフ(ランク1)
防具:レザーフード(ランク1)
レザーローブ(ランク1)
レザーブーツ(ランク1)




