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アーリル王国の騎士  作者: siryu
旅立ちの章
15/61

第15話 ローザの決断 後編

「それにしても私がここに来たことに全く驚かないのね?」


「アンナさんがもしかしたらって耳打ちしてくれたからね」


「まったく……ヴィンスもお母さんも凄いわ……」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ——数日前——


 ホルンの村からヴィンスが帰ってから、ローザはずっと眠れなかった。

 その理由は、自分もヴィンスと一緒に行くべきかどうかを悩んでいたからだった。


(行かなかったら後悔するかもしれない。でも私が行けばお母さんは……)


 ローザはこの事ばかりを繰り返し悩んでいた。

 そんな時、母親のアンナから呼ばれた。


「ローザ、ちょっとこっちに来なさい」


「……どうしたの、お母さん?」


「あなた、最近眠れていないんでしょ?顔色があまり良くないわよ」


「そ、そんなことないわよ……」


「悩み事でもあるの?あるのなら私に相談してもいいのよ?」


「な、悩み事なんてないわ……」


「ふーん、だったらいいけど……後悔(・・)だけはしないようにしなさいね」


「!! ごめんなさい、ちょっと待って……」


 ローザは隠しているつもりだったが母親のアンナには完全にばれているのを確信した。席を立とうとしたアンナを慌てて呼び止めた。


「実はね、この前ヴィンスが言っていた事なんだけど……」


「ローザはどうしたいの?私の事はいいから、あなたはどうしたいの?」


「その……私は……私も……行きたい……」


「そう。だったら結論はもう出ているじゃない」


「でも! 私まで行ったらお母さんは!!」


「あなたが私の事を心配してくれるのは嬉しいわ。でもね、私はあなたの母親なのよ。母親の私があなたのやりたいことを邪魔する存在にはなりたくないわ。だから私の事を気にするのはやめなさい」


「うん、ごめんなさい……私も行ってくる!!」


「もう、ローザったら」


 ローザは、自分の考えを理解した上で背中を押してくれたアンナにとても感謝した。そして思わず泣きながらアンナに抱き着いた。アンナも思わず少し貰い泣きをしながらローザを抱きしめた。




「じゃあ、決めたからにはすぐにヴィンスに会って伝えないと」


「待ちなさい、ローザ。行くのはヴィンス君が出発する当日でいいわ」


「え!?でもそれだといろいろ不味いんじゃ……?」


 落ち着いたローザは早速ヴィンスに伝えに行こうとするがアンナはそれを止めた。てっきり早く動いた方がいいとアンナは言うと思ったのでローザは驚いてしまった。


「大丈夫よ。ヴィンス君なら、もうラルフさんに相談していると思うし、そうなれば陛下の御耳にも入っていると思うわ」


「た、確かに……そうかも……でも……」


 確かにアンナの言う通りに動いている可能性は高い。だとしてもやはり早い内に行くべきだと思うローザだったが、それでもアンナは止めた。


「きっとヴィンス君やラルフさんならローザが加わっても大丈夫なように準備してくれてるはずだから。それにね」


「それに?」


「あなたが今から行くと逆に混乱する可能性もあるのよ」


「え?どういうこと?」


「それは当日行けば分かるわ」


「ええ、そんなぁ……」


 アンナはある種の確信をしていた。それはラルフも同じことを考えていたが故に——



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ちょ、ちょっと待ちなさい、ローザ!それにヴィンスもだ!」


 国王レオンよりも先に声を出したのは大臣のロベルトであった。


「出発当日に現れていきなりそんな事言い出してもまかり通る訳ないであろう!そうですよね、陛下?」


 当然の如く反対するロベルト。彼は自分の考えを支持して貰う為、国王のレオンにも尋ねるがレオンはそれを無視するかの如くローザと会話を始める。


「よく来たな、ローザ。随分懐かしいな。どうだ、元気にやっているか?」


「陛下、大変御久しぶりにございます。おかげさまで大変元気です」


「うむ、それは何よりだ」


「陛下!そのような御話は後にしてくだされ!」


 業を煮やしたロベルトは途中で会話を遮るがレオンは全く意に介さない。

 ローザも気にしていないフリをしているが内心は冷や汗ものである。

 少しハラハラしながら見守っているヴィンスと……ラルフは特に何も思わないのか平然としていた。


「ロベルト、そのような話とはなんだ?久しぶりにローザと会えたのだから少しくらい構わんだろう。それに今を逃せばローザとは当分話も出来なくなる(・・・・・・・・・・)のだからな」


「しかしですな……え?そ、それはどういう意味でしょうか?」


「ローザもヴィンスと一緒に行くのだから当分会えなくなるだろう。何か変な事を言ったか?」


「へ、陛下!?ま、まさか許可されるのですか!?」


「当然であろう。大体ローザはこの旅の目的の当事者みたいなものだ。反対する理由がどこにあるというのだ?」


「い、いやしかし……ローザも魔法を使えるとは言え、このような大事なことを即決されるのは流石に……」


「別に即決した訳ではないのだがな」


「な!?それはどういう……まさかヴィンスか!?」


 まさかレオンがあっさり賛成すると思わなかったロベルトは思わず狼狽した。そして、今までの話の流れを考えるとヴィンスが少なからず噛んでいるに違いないと確信したロベルトは半分睨むような形でヴィンスを見る。


「……僕が」


「ロベルト殿、陛下に進言したのはヴィンスというより私ですぞ」


「な!?ラルフか!?一体どういうことだ!!いや、進言するのはまだ構わん!なぜそれを私にも教えてくれんのだ!?」


 ヴィンスが答えようとする前にラルフが遮る形でロベルトに言った。思わぬ横やりが入り、ロベルトはラルフに詰め寄る。

 このやりとりをロベルトの息子であるアーヴィンは驚きながら見ていた。ここまで激昂しているロベルトは中々見られなかったからだ。

 そんな中、ラルフは至って冷静にロベルトに言い返す。


「ではお聞きしますが……この話をロベルト殿が事前に知っていたとして、どうされましたか?」


「それは……勿論私も検討した上で……」


「検討した上で?」


「……最終的には賛成したかもしれんな……」


 ロベルトは幾分小さな声で賛成を認めた。

 

 彼は2年前に旅の計画を知った時は息子のアーヴィンを参加させたかったことを反対された経緯もあるので若干悔しい思いもあるのだ。

 そして実はその事が、ラルフがロベルトに黙っていた理由でもあった。


「ロベルト殿ならそう判断するでしょうな。で、その後は?」


「その後?その後も何も……!? そうか、そういう事か……」


 ラルフが畳みかけた質問に最初は意味が分からなかったロベルトであったが、もし事前に知っていたらと想像したら間違いなく取るであろう自分の行動に思い当たったのだ。


「私も人の親ですぞ。ロベルト殿の気持ちはよく分かります。しかし——」


「もういい。それ以上言わんでくれ、ラルフ。お前の考えはよく分かった……お前は私の事を考えてそうしてくれたのだな……」


 ロベルトは気落ちしながら思わずアーヴィンの方を向いた。

 アーヴィンは何故ロベルトが自分の方を向いたのか分からなかった。2年前のやり取りを彼は知らないのだから当然である。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


——6日前——


「——という訳です、陛下」


「ふむ、なるほど。話は分かった」


 前日にヴィンスからローザの事で相談を受けていたラルフは早速この日自分の意見も添えた上でレオンへ報告した。レオンは顎に手を当てながら暫く考えていたが、自身の考えをまとめてからヴィンスに話しかける。


「結論を言うと私もラルフに賛成だな。問題は安全面での事だが……」


「そこはヴィンスなら何とか出来ると思います。彼女も魔法が使えるのでそこまでヴィンスの足を引っ張ることも無いでしょう」


「うむ……ラルフはこう言っているがヴィンスはどう思う?」


「は!私も隊長と同様に考えます!」


「そうか……であれば問題ないであろう」


「「は!ありがとうございます!」」


 レオンが考えていた不安面についてもラルフとヴィンス本人が否定したので特にこれ以上の異論は無かった。


「ではこの件をロ——」


「陛下、申し訳ありません。ヴィンス、お前はもう下がりなさい」


「……は、分かりました」


 レオンが続きを言う前にラルフがヴィンスを下がらせた。


「どういうことだ、ラルフ?」


「大変申し訳ありません、陛下。出来れば続きをヴィンスには聞かせたくなかったもので……」


「ほう、それはどういう意味かな?」


 途中で言葉を遮られたレオンは若干不快気な表情でラルフは見るが、ラルフの意味深な発言の方が気になり続きを促した。


「先程陛下はロベルト殿にもこの話をしようとされませんでしたか?」


「うむ、その通りだ。何か問題があったか?」


「……私は問題があると考えております」


「どうしてだ?ローザを参加させるかも知れないと話をするのがそんなに問題があったか?」


「それだけで済めば問題は無いのですが……」


「分からんな……もっと分かり易く言ってくれんか?」


 レオンは焦れてラルフを急かした。ラルフは、この場にこそいないがロベルトに配慮して言葉を選びながら話を続ける。


「……陛下が2年前にこの話をした時の事を思い出して下され」


「2年前……む!そういうことか!?」


「はい、あの時もアーヴィンの事を説得するのは中々骨が折れました。今この話をすれば再燃するのではと考えます」


「ううむ……それは……否定出来無いかもしれんな」


理性(・・)では理解出来ても感情(・・)はそう簡単にはいきません。今回の話を聞けば2年前以上に食い下がるでしょう」


 ラルフが気にしていることを理解したレオンは思わず唸った。しかしラルフが先程取った行動に若干の疑問も生じて尋ねる。


「そうか……ん?ロベルトに話をするのを止めた理由は分かったが、何故ヴィンスまで下がらせたのだ?」


「それですが……ヴィンスには2年前のアーヴィンに関するやり取りの話をしていないのです。ヴィンスがこの事を知ると非常に面倒になります」


「どういうことだ?知ったらそこまで面倒なのか?」


「はい、親の私が言うのもなんですがヴィンスは非常に優しい子です。もしヴィンスがこの話を知れば、アーヴィンの事を想って意地を張ってでも連れて行こうとする可能性があります」


「!! それは予想していなかった……もしそうなった場合、お前の目から見たら……」


「非常に危険と言わざるを得ません」


 ローザを連れて行くことに賛成しているラルフではあるが、それでもギリギリの判断である。彼女の魔法は戦力にはなるが腕前はまだまだで、彼女が単独で戦うには厳しいと見ている。当然ヴィンスのサポートが不可欠になってくるのだが、そこに戦闘能力が限りなく低いアーヴィンが入ってくると更に厳しくなる。

 比較的安全なアーリル王国領を抜けるまでは問題無いだろうがその先は非常に厳しくなると言わざるを得ないのだ。


「そうか……よく分かった。お前はよくそこまで先を見据えて考えられるものだな……私は全くそこまで考えが及ばなかった……情けない国王もあったものだ」


「決してそんな事は……取り越し苦労の可能性も十分あり得ますので……」


「いや、デリケートな問題は慎重過ぎるに越したことは無い。ロベルトには悪いがこの件は当日まで他言無用としよう」


「汲み取って頂き感謝します、陛下」


 自分の考えを理解してくれたレオンに感謝してラルフは頭を下げた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 2年前のやり取りは勿論知らないが、ローザの母親であるアンナも同じ様な考えだった。だからこそ当日に出発しろとローザに言っていたのだ。そしてその事を自力で気付いていたのはラルフだけだった。



「ロベルト、すまんな。お前に事前に教えないと最終的に判断したのは私だ。だから責めるのであれば私にしなさい。あと、事前に知っていたのは私を除けばラルフとヴィンスだけだ」


「いえ、全ては私の身勝手な考えを考慮してくれての事だと分かりましたので……陛下とラルフには大変感謝しています!」


 そう言うとロベルトはレオンとラルフに頭を下げた。

 レオンは「親なら当然の気持ちだ」と声を掛けようとしたが止めた。これを言ってしまえばアーヴィンが自分の事に関する事だと気付いてしまう可能性があったからだ。


 ロベルトは改めてローザに向かって話し掛ける。


「ローザ、済まなかったな。ヴィンス同様に気を付けてな」


「い、いえ!元はと言えば私が急に現れたのが原因ですから……申し訳ありません!」


 ロベルトに対してペコペコ頭を下げるローザ。

 アーヴィンはヴィンスに近づいて話し掛ける。


「ビックリしたけどこれで良かったんじゃないか?しっかりローザを守ってやれよ」


「ああ、そのつもりだよ」




「じゃあ行こうか、ローザ」


「ええ、ヴィンス。あ、でも私、自分の装備以外何も準備していないわ……」


「大丈夫だよ。きっとローザが来ると思って当面の水や食糧とか野営用の毛布は2人分用意しているからさ」


「……本当にお母さんの言った通りだったわ……」


「ん?何か言った?」


「ううん、こっちの話よ」


「ふうん?まあいいけどね」


 そう言うとヴィンスとローザは見送りに来てくれた全員に向かって挨拶をする。


「それでは皆さん!ヴィンス・フランシスと」


「ローザ・マティス」


「「行って参ります!!」」


 こうして2人の旅が始まる事になる——


※初のステータス紹介です。

一応ステータスの見方も紹介


Lv:最高値は99(の予定)

HP:生命力を指す。0になれば死ぬ。

MP:魔法や一部のスキルを使用する際に必要。0になっても死なないが動きは鈍くなる。

力:直接攻撃に影響。高い程攻撃力も大きくなる。

素早さ:高い程速く動ける。

体力:高い程連戦が出来る。

魔力:魔法の威力に影響。高い程同じ魔法でも威力が大きくなる。ただし消費MPも増える。

運:高い程良いことが起きやすい。運のみ値が固定されている。

スキル:冒険物で御馴染み。スキルはLv8が基本的(・・・)に最高値。各スキルは作中に紹介予定。

称号:ステータスに補正が掛かる。ジョブ的な物もあればそれ以外も……


なお、ステータスは作者の自己満足の為に設定しているので飛ばして貰っても本作を読んでいく上で問題はありません。



名前  :ヴィンス・フランシス

種族  :人間(男:17歳)

Lv   :37

HP   :1924

MP   :515

力   :482

素早さ :342

体力  :485

魔力  :185

運   :58


スキル

力強化Lv3

素早さ強化Lv1

体力強化Lv3

身体能力強化Lv2

詠唱速度上昇Lv1

剥ぎ取りLv1

威圧

剣技Lv7

槍技Lv5

盾技Lv4

炎魔法Lv3

風魔法Lv2

光魔法Lv2

回復魔法Lv3

魔法剣Lv2

索敵Lv1

交渉Lv2

料理Lv1


称号

騎士

魔法騎士


装備

武器:鉄の剣(ランク2)

   鉄の槍(ランク2)

防具:鉄の兜(ランク2)

   鉄の鎧(ランク2)

   鉄の籠手(ランク2)

   鉄の盾(ランク2)

   レザーブーツ(ランク1)



名前  :ローザ・マティス

種族  :人間(女:16歳)

Lv   :5

HP   :35

MP   :42

力   :7

素早さ :14

体力  :11

魔力  :39

運   :78


スキル

風魔法Lv1

光魔法Lv1

回復魔法Lv2


称号

白魔導士


装備

武器:魔導士の杖(ランク2):魔力強化(極小)

   ブロンズナイフ(ランク1)

防具:レザーフード(ランク1)

   レザーローブ(ランク1)

   レザーブーツ(ランク1)


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