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「計画された物語」

8月9日


 まずは、できるだけ過去に戻った。その間にトラブルがあっても確実に美咲を殺すためだ。予定では早速今夜のつもりだ。でも、俺には殺すための道具がない。包丁? それともロープで? まずは綿密に計画をたてなくては。あと、兄さんに協力してもらわないと。殺した美咲をどこかに隠す必要がある。でも、俺は車の運転はできないから、兄さんに運んでもらわないといけない。きっと、協力してくれるだろう。


「兄さん、ちょっといい?」

「どうした?」


兄さんの部屋に入る。今は夏休みだが、普段は大学にいるためこの部屋に入ることもめったにない。


「話したいことがあるんだ……」

「ん? なんだ?」


それから、俺は兄さんにもう一度全てを語った。


「それ? 本当なのか……? いや、わざわざそんな嘘つくわけがないよな……」

「俺も最初は信じることができなかった。未来からビデオチャットがくるとか、タイムリープとか……でも、俺が一番知ってる。よっしーは死んでしまうってこと。それに、証拠ではないけど未来の兄さんからきいたことがあるんだ」

「未来の俺から……」

「兄さん、よっしーのこと好きでしょ?」

「おい! 何を唐突に言い出すんだ!」


明らかに動揺している。顔も赤くなって……


「ふふーん、俺は全てお見通しなのだよ! 未来からきているからね」

「それで、俺に何を協力してほしいんだ?」

「さすが、物分かりがいいお兄さんだね」

「今更なにを言っているんだ!」


その時だけ、その一瞬だけ幸せな時間が流れたような気がした。本当はいつも当たり前のように過ごしていた時間なのかもしれない。でも、幸せにかんじることがでしきた。


「殺した美咲を運搬してほしいんだ」


計画はこうだ。今日、美咲に電話をして裏の森に呼び出す。そして、殺害する。その方法はロープで絞殺だ。そして、殺したら兄さんに連絡。兄さんがきたら軽トラックに死体をのせ、十和田湖のどこかの森に穴をほって隠す。この計画を考えているうちにだんだんと未来の俺がなぜ自分自身で美咲を殺そうとしているのかが分かったきがした。これ以上、兄さんを苦しめたくないんだ。好きな人のために命まで尽くしてタイムマシンの開発をしたのに、本人はそれに立ちあうことができない。さらに、その計画を成功させるために殺人までさせるのは……。だから、俺も、もし計画が失敗してもなるべく兄さんに容疑がかからないように後から兄さんを呼びだす計画にした。


「ロープで絞殺か……、でも、こっちのほうがいいんじゃないのか?」


兄さんは、旅行バッグの中をまさぐりはじめた。


「ほら」


渡してきたのは真っ黒な拳銃。


「これ!?」

「大学でタイムマシンの研究をしているとき、万が一の為にこっそり研究メンバー全員が隠し持っているんだ。もちろん色々と危ないことだけどな、そこは大目に」

「にしても、よく今までばれなかったな……」

「ははは……」


じゃあ、殺害方法は絞殺から射殺に変更だ。そちらのほうがきっと確実に殺せる。問題は銃声だけど、きっと民家は近くにないから大丈夫だろう。


「じゃあ、早速呼び出すね」


電話のボタンをプッシュする。


「もしもし? 美咲さんのお宅ですか?」

「はい。私ですけど……、五木君?」

「うん、ちょっとさ、今日話したいことがあるからあそこに来てくれない?」

「あそこ?」

「あの、森の奥。前、熊が出たっていってたとこ」

「ああ、あそこね。でも、話ならべつに電話でも……」

「とにかくそこに来てよ!」

「そうなの? わかった。時間は?」

「夜がいいな……」


もちろん夜がいいに決まっている。


「夜? そんな遅くに?」

「ごめん、どうしてもその時間じゃないと……11時くらいでいい?」

「分かった」


美咲の声からは困惑の色がうかがえる。でも、このときじゃないとだめなんだ……


「それじゃあ、絶対きてよ!」

「うん」


電話は切れる。さあ、ここからがスタートだ。決して途中で折れるなよ。前を向け。進め! 未来を切り開け! 大谷五木!


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