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「重なる物語」

8月11日


 よっしーが死んだ。部活の帰り、車に轢かれて死んだ。その知らせは夕方俺の耳に入った。一瞬理解ができなかった。誰かの冗談だろうと思った。でも、この世によっしーがいない、それはよっしーの家に行って事実となった。とてつもなく心が重い。せめて死ぬことが分かっていれば別れの挨拶ができたのに、そんなにうまく人生というものはできていないのだろう。悲しい、苦しい、そして何もできなかった自分への憤りがこみ上げる。いまさら何も変えることはできないのに、それなのに後悔をしてしまう。なぜだろう。俺に責任はないはずなのに、俺にはなにかできたんじゃないのかと思ってしまう……


 その夜は寝付けなかった。ショックで夜ごはんを口にしていなかったためお腹がすいた。冷蔵庫からイチゴジャムを取り出してパンにぬって食べる。その時、俺のゲーム機にビデオチャットの着信が来た。こんな時間に誰だろうか……


「もしもし……」

「おお、つながった!!」


この声、聞き覚えはない。写されるのはおじさん。こんな人と連絡を交換した覚えはない。じゃあこの人物はいったい誰だろうか?


「あなたは、だれですか?」

「おっと、言い遅れた。俺は大谷五木。未来の俺だよ」


夢でも見ているのだろうか、それとも相手が夢を見ているのだろうか。


「はい? 何言ってるんですか?」

「だから、未来の俺だ!」

「じゃあ、その証拠でも見せたらどうですか」

「まあまあそんなむきになるなって。ほれ」


見せられたのは卒業アルバム。


「これがどうしたんですか?」

「ほら、よーく見てみろ」


アルバムなら小学校のが……ん? これは小学校のアルバムじゃない。中学校!? でも、俺は

「現在」中学生だ。ならなんで俺の中学校の卒業アルバムがあるんだ!?


「まさか!?」

「だから、最初にそう言っただろ、俺は未来の俺だって」

「そんな……」


そんな馬鹿げた話があるのだろうか。


「俺は、よっしーの死を受け、自分になにかできないか考えた。そして、とうとう辿りついたんだ!」

「何にだ」

「よっしーを救う方法だ!」

「何だと!? どうするんだ!?」

「答えは簡単。タイムリープだ」

「タイムリープ?」


いまいちぴんとこない。よっしーはそう言った類のゲームを前にやっていたが俺はあまりやらない。だからいきなり『タイムリープ』と言われてもどういったものか見当もつかない。


「俺は、タイムリープするアプリケーションを開発した。そこでだ、お前がそれをつかってよっしーの死の前にリープする。そしてよっしーを救うんだ!!」


たしかに答えは簡単だ。驚くほど。だが、それはできたらの話だ。そこまでの過程が想像もつかない。


「それで、リープしてどうやって救うんだ?」

「さあ?」


なんで疑問形なんだよ。


「さあ? ってそれじゃあ俺はどうすればいいんだよ!!」

「俺には分からない。でも、よっしーのこと救いたくないか?」


いきなり声のトーンを低くする。きっと彼は本気なのだろう。


「それはそうだけど……」

「じゃあ、やってみようよ! 諦めるのはそれからでも遅くない!!」


たしかにその通りだ。いまここで諦めて一生後悔するくらいなら、いっそ思いっきりやって失敗したい。


「そう、だよな……」

「おお! その気になったか! じゃあ早速……」


すると一旦ビデオチャットは切れた。それと同時に新しいアプリのダウンロードを始める。タイムマッシn? なんだこれ? ダウンロードが完了するとすぐにまた未来からビデオチャットがかかってきた。


「今、新しいアプリがダウンロードされたよな?」

「あ、ああ」

「そう、名前をみて分かる通りタイムマシンだ!!」

「そう、か……」


俺はタイムマッシnというアプリしか見てないが、きっとそれだろう。


「中身は簡単、到着したい時刻に電話をかける要領で行きたい時間をセットする。するとその時刻に俺の記憶がデータ化され、送られる仕組みだ。それをゲーム機ごしに過去の俺がキャッチする。という仕組みだ。それと、使用するときはヘッドホン、必ず装着しろよ」


なんだかよくわからない。まずどうやって記憶をデータにするんだ? まあ、どうせ教えてもらったところで分かるわけないか……


「なるほどね。じゃあまずはやってみますか」

「よっしーが死んだのは2015年8月11日。その日の始まりにリープをしよう。といっても、リープできるのは2015年の8月9日から8月11日までだがな」

「なんで限定されているんだ?」

「まあ、自由に時間を決めるとなるとそれ相応の設備が必要になってくるし、データを送るのにも限界がある。何度もリープを繰り返して過去に行くのもいいが、その必要がないし、脳にダメージが大きすぎる。さらに、まず俺にその技術がないからな!」


何を自慢気に話しているんだ。結局は技術の問題じゃないか!


「まあ、俺も兄貴の研究を手伝っているだけだからな」

「じゃあ、その兄貴は……?」

「ちょっと、事故があって……」


きっと死んでしまったのだろう。


「やっぱり完成、させなきゃよかったかな?」

「そんなことない。俺が未来を変えればきっとそれも変わるだろう!!」

「だよな!」

「じゃあ、早速いってくる!」

「気をつけて」


ビデオチャットが切れる。まずはアプリを起動して、時間をセット。ヘッドホンを接続していざ!! 意識が体の内側に吸い込まれていく。これが……タイムリープ!!


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