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「進む物語」

8月13日


 世界が変わった。俺は部屋のベッドから天井を見ている。これで、準備は整ったのだろうか。確認する方法はただ一つだ。しかし、こちらから連絡をする前に向こうから連絡が来た。


「お前、よくやったな……」


その画面には目頭を赤くさせた未来の俺が立っていた。


「先輩、完成しましたよ……」


今度は健太の声だ。


「一君、本当だったんだね……」


柏木先生だ。これで、役者はそろったのだろう。


「タイムマシンの完成だ」


次にうつったのは、人が一人入れるくらいの小型の箱のようなものだった。俺の想像するタイムマシンとは随分と形が違うようだが、それがタイムマシンであることに変わりはない。


「先生、ありがとうございます!!」


心から感謝を伝える。


「いいのよ。私にできることなら……」

「健太も、ありがとう!」

「こちらこそ、いい経験させてもらいました」


思わず涙がこぼれおちる。


「まだ泣くなって。まだ物語、終わってないだろ?」

「そうだったな」


未来の俺に言われ気がつく。


「そうですよ! 僕たちにできることはここまでです」

「あとは、一君しだい。頑張って!」

「そうでしたね……」

「いいか、お前。美咲がいなくなるのは8月9日だ。だから、タイムマシンは8月9日にセットしておく。そして、美咲を救う、物語に終止符を打つのがお前の仕事だ」

「了解……」


しかし、どう救えばいいんだ? 美咲はどう殺されたんだ? 不安はたくさんある。でも、もう行くしかない。やるしかない。いや、俺にはできる。だって、あの地獄を乗り越えてきたから!


「ちなみに、お前にとっての現代の先生と健太はまだお前がタイムリーパーだということを知らない」

「私たちは一君に集められて8月14日に話をされたの」

「ということで、くれぐれも勝手な行動をして日付をずらすようなまねはやめろよ。バタフライエフェクトでタイムマシンが完成しなくなるかもしれない」

「了解」


そうか、俺は何度もタイムリープの話をしているが、世界が変わると知らないことになっているのか。まあ、それは過去のこの世界の俺が二人に伝えていなければの話だが。でも、どうやら今回も伝えていないらしい。ならば、むやみに未来を変える必要はないだろう。俺が変えるべきなのは美咲の死、そして二人の死だけだ。


「そしたら、今からそちらにタイムマシンを転送する。庭、誰もいないよな?」

「ああ。大丈夫だ」

「先輩! こっち、準備できました!」

「一君、出力は大丈夫よ。あとは電力をあげて、第3エネミー端子の接続完了を待つだけ」

「こっちも大丈夫だ。出力、抑えて電力あげるぞ!」


庭に眩い光が放たれる。それと同時にあの物体がやってくる。とても長くて辛い遠回りをしてしまった。何度も何度も見たあの光景は、脳裏に焼き付いてしまった。なんで俺がこんなめにあうのか疑問でしかたなかった。でも、今はそんなことどうだっていい。みんなでまたワイワイ楽しくできるなら、それで……


「おい、そっちにいったか?」

「きてるよ」

「そうか、やったんだな。俺たち」

「よし、じゃあ気が冷めないうちにいっちゃおう!」

「そうだな……。そしたら、こっちで指示した通りに操作をしろ」

「了解」


それから数分間、レバーをどうしろ、数値を確認しろだのの作業が続いた。その間、俺はしっかりと作業の内容を確認しつつ、今までを振り返る。ここまで来た道。苦しい時もあったけど、でも、それはもう過去だ。皆にとっては未来。でも俺にとっては過去。なんだか、おかしいけど、もう慣れた。


「よし、じゃあ健闘を祈る。まずは美咲を追跡するんだ。もし、武器を持てそうだったら犯人に対抗するために持っていくことをお勧めする。」

「後は、まあどうにかなるよ」

「ふ、どうにか、ね。そのちょっと適当なところ、やっぱり過去の俺だな」

「ふ、適当、ね。その呆れたもののいいかた、やっぱり未来の俺だな」

「じゃあ、改めて、健闘を祈る」


それで映像は切れる。よし、ここからは俺の戦いだ。このスイッチを押せば全て過去に戻る。そこから最初で最後の物語のスタートだ……




「『冷静沈着。でも、感情的になりやすい』だって? なんか矛盾してないか?」

「冷静沈着……一先輩はクールって感じしますからね! でも、感情的って……?」


俺はあまり感情的にならないタイプだと自分で思っている。


「よっしーが感情的か……。逆に見てみたいかも!」


見てみたいかも! といっても、俺の性格は感情的という結果なんだが……


「って、勉強しなくちゃだめじゃないですか!」


おっと、そうだった。休憩といってかれこれ一時間ちかく遊んでいた。さあ、勉強に戻らなくては。




ふと、そのシーンを思い出した。『冷戦沈着。でも、感情的になりやすい』今なら、今ならその意味がわかるかもしれない。でも、冷静沈着ではないかもな。俺。ふ、その呆れたもののいいかた、やっぱりいつも通りの俺だな。ふう、と息を吐く。そしてスイッチを押す。時間は戻る。俺は進む。そう、全ての始まりと終わりへ!!


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