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極貧お嬢と五人の執事  作者: 流星


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第五十九話

 私の教科書に『馬鹿』と書いたのは誰だろう。


 もしかして、白石?


『いつも教科書を置きっぱなしにして、勉強をしないからテストで悪い点数を取るのですよ。馬鹿ですね』


という意味が込められているのだろうか。


 いや。

 白石に、あんなにハイセンスな落書きが出来ると思えない。

 それに白石は教科書に落書きなんかしないだろう。


 じゃあ、誰だ?


 いや待て。

 私って事もあるよね?


 授業中、居眠りをしている間に無意識に書いたとか。

 しかし、何も見ず正確に『馬鹿』という漢字が私に書けるだろうか?


 もしかして、起きている私より眠っている私の方が頭が良いの?

 じゃあ、テストを受ける時、居眠りをしていた方が良い点数を取れるかも……。


 いやいやいやいや!

 そんな一か八かな賭けを打って0点を取ったらどうするんだ。


 うー……。

 これ以上考えるのは止めておこう。



 放課後、演劇部の練習に参加するため、衣装を持って体育館に行った。

 

 出来上がった衣装は松田先輩にチェックしてもらい、修正箇所がある場合はリハーサル前までに直さなければならない。


 こんなパン屋らしからぬ衣装は大幅な手直しが必要だろう。

 手直しどころか、最初から作り直さなければならないかもしれない。

 松田先輩に見せるのが恥ずかしい……。



 体育館に着くと、見覚えのある後ろ姿がパイプ椅子に座ってふんぞり返っていた。


 も、もしかして……。……や、やはり!


「黒か……、兄者ッ!」


 パイプ椅子にふんぞり返った黒川が振り返る。


「あ、兄者……。そこで何をしているのですか?」


 黒川は大きなレンズのサングラスにハンチング帽、カーディガンを羽織り、メガホンを持っていた。


 何だろう……。

 この格好、何処かで見た事があるような……。


「ああ、さち子さん。

 お兄様は演劇に興味を持っていらっしゃるので、僕達の演技を見たいそうだよ」


 え……。黒川が見ている前で練習するの?

 悪い予感しかしない……。



 黒川の視線を感じつつ、ジャージ姿で舞台の上に立った。


「じゃあ、シーン1から台本の読み合わせをしていこう。

 まずはパン屋の娘が戦火に焼かれて死ぬところから。

 さち子さん、頑張って」


 え?

 いきなり私が死ぬシーンから始まるの?


 読み合わせって、本番の何割位の力を出せばいいの?

 そもそも読み合わせって何?

 取り敢えず台本を読めばいいのかな……?



 私は一人、舞台の上で台本を読みあげた。


「て……、てぇへんだ、てぇへんだ。

 おっ父、てぇへんだってばよ……」


「カァァァァーーーーーッ!」


「兄者ッ」


 突然、黒川がメガホンを使って叫び声をあげたので、慌てて舞台から飛び降り、黒川の元へ駆け寄った。


「何ですかッ? 兄者ッ!

 見学するなら静かにしてもらえませんか?

 カァァァァーーーーーッ! って……。効果音か何かのつもりですか?

 カァァァァーーーーーッ! なんて、カラスの断末魔みたいな効果音は、今必要ありませんよ?」


「カァァァァーーーーーッ! ではなく、カットと言った」


「え? 全然カットと聞こえませんでしたよ?

 完全にカァァァァーーーーーッ! でしたよ?

 それにカットって何ですか?

 もしかしてその格好、舞台監督にでもなったつもりですか?」


「どうしたのですか? さち子さん」


「松田先輩!

 黒か……、兄者が演劇部を乗っ取ろうとしているのです。

 この演劇部を『劇団☆黒川』にしようとしているのです」


「さち子さん、落ち着いて。『劇団☆黒川』って何?

 実はお兄様に脚本と演出をお願いしているんだよ」


「脚本と演出?」


 チラリと黒川を見ると、ニヤリと黒川が笑った。


「松田先輩。悪い事は言いません。

 黒……、兄者に脚本を任せたら大変な事になりますよ?

 黒兄者は演劇なんて全く知らないクソ素人です」


「さち子さん。

 大事なスポンサー様にクソなんて言っては駄目だよ」


「は? スポンサー?

 クソ……、黒兄者ッ! 演劇部を買収したのですか?」


「さち子さん! スポンサー様に謝って!」


 私はパイプ椅子にふんぞり返った黒川の前で無理矢理頭を下げさせられた。


「松田君。この台本、初っぱなから面白くないな。

 屋敷に持ち帰って改稿しても良いだろうか?」


「勿論です。お兄様」


「松田先輩。クソ兄者に台本なんか渡したら、クソ台本になって戻ってきますよ?」


「さち子さんッ! お兄様に謝って!」


 またもや無理矢理頭を下げさせられると、クソ黒川は不敵な笑みを浮かべながらメガホンと台本を持って体育館から出ていった。


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