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極貧お嬢と五人の執事  作者: 流星


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第四十五話


翌朝、演劇用の背景は教室のゴミ箱からビリビリに破れた状態で見つかった。


黒川の言うとおり、誰かがゴミと間違えて捨てたのか。


それにしても、わざわざ破らなくていいのに……。



「さち子、何をしているの?」


「エビちゃん……」



破られた背景を拾っていると、エビちゃんが後ろから覗いてきた。



「それ、昨日さち子が持ってきた、

 演劇部で使う背景だよね?

 酷い。誰がこんな事を?」



エビちゃんが大声で言ったので、教室にいたクラスメイトの視線が一気に集まった。



「エビちゃん、いいって。

 多分、ゴミだと思って捨ててくれたんだと思います。

 ゴミ作品だから仕方がありませんよ。

 ヌハハ……」


「でも、破かれているじゃない。

 ただ捨ててあるだけならゴミと間違えたのかもしれないけれど、わざわざ破っているのだから、悪意があるでしょう?」



え?

悪意があるの?


まあ、この白石が描いた挑発的な表情のポメラニアンを目の当たりにしたら、腹が立って破りたくなるかもしれないけれど。



「エビちゃん、落ち着いて。

 私は何とも思っていないし、捨てられていなかったとしても、恐らくボツになっていたゴミ作品だから、気にしなくていよ」


「でも……」


エビちゃんが、こんなに激しく怒る姿を初めて見た。


私のために怒ってくれたんだね。

やっぱり持つべきものは親友だよ。


「ホームルームを始める。席につけ」


教室に白石が入ってきたので、この話はこれで終わった。



放課後、演劇部の練習が行われる体育館へ向かった。


「皆、集まって。

 新入部員を紹介するよ」


松田先輩に紹介され、やっと演劇部の一員に。

ここまでの道のりが長かった……。



「さち子さん。

 今回の演目は既に配役が決まっているから、さち子さんは裏方に回ってもらうけれど。

 勉強になると思うし、構わないかな?」


「はい。

 もちろんです、松田先輩」


「あら。

 台詞のない、ちょっとした役なら出てみてもいいんじゃない?

 あ、私は三年の三条桜子。

 さち子さん、よろしくね」



お。


色白でロングストレートの黒髪が印象的な美人さん。


多分お姫様役は桜子先輩がするんだろうな……。


「……そうだね。

 じゃあ、さち子さんは、戦火に逃げ惑うパン屋の娘を演じてもらおうかな」


え……。

逃げ惑うって……。


初心者には難しくないですか?

松田先輩、私の演技力をそれほど高く評価しているの?


「ところでさち子さん。

 今日は授業が早く終わったから、今から衣装の布を買いに手芸店へ行った後、ファミリーレストランで打ち合わせをするけれど、さち子さんも一緒にどうかな?」


「ファミリーレストラン?」


「ああ。さち子さん、

 ファミリーレストランを知らない?

 僕たちも最近知ったのだけど、ドリンクの種類が多くて飲み放題だから、長時間の打ち合わせに最適なんだ」


「ド、ドリンク飲み放題……。

 行きます。

 私をファミリーレストランへ連れて行ってください。

 あ。でも、黒か……、じゃなくて、兄者の許しを請わなくては。

 松田先輩、少し待っていただけますか?」



私は十円玉を握りしめ、カフェテリアへ向かった。



カフェテリアの裏に、古い公衆電話がある。


十円玉は一枚しか持っていないから、短期決戦で黒川を説得しなければならない。


私は深呼吸をして十円玉を電話機に投入した。


いざ、黒川!



『プルル……、プルル……』


黒川出ろ、黒川出ろ。

青田出るな、絶対出るな。



「……はい」



黒川キター!


「黒川ッ! 私です、私。

 分かりますよね?

 黒川の私ですよ!」


「……」


「黒川ッ!

 何故、黙っているのですかッ!

 言っておきますが、オレオレ詐欺ではありませんからね!」


「何だ? お嬢。

 迎えに来て欲しいのか?」


「違います。

 今から演劇部の衣装用の布を手芸店で買い求めた後、ファミリーレストランで打ち合わせをしてきてよろしいですか?」


「ファミリーレストラン?

 ハッ! そんな不良の溜まり場に令嬢が出入りするとは笑止!」


「何でファミリーレストランが不良の溜まり場なのですか?

 ファミリーのレストランですよ?

 私もファミリーレストランで、ファミリーを満喫したい!」


「勝手にするがよい。

 さらば不良娘。……ガチャ」


十円玉が落ちる音と共に、電話が切れた。


黒川、怒っているよね……。


まあ、いいか。



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