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閑話(黒川とお嬢の日常)その一

黒川の朝は早い。


黒川は主に食事を担当している。


毎日美味しいご飯が食べられるのは

黒川のお陰だ。


朝食も夕食も、

長い食卓を私と五人の執事で囲み、

皆で一緒に食べる。


祖父亡き今、黒川が祖父の席に座っていて、

まるで今の主人は黒川のようだ。


……何故だ。



黒川は桃と赤井と私の三人の弁当を、

小学校に入学した時から今まで、欠かさず

作ってくれている。


学園までの送り迎えは黒川の運転だ。


黒川は三人を学園まで送った後、

その日の夕食の買い出しに出る。


新聞チラシでその日の最安値をチェックし、

ワゴンセールにも参戦する。


高級車を乗り回しているせいで、

ガソリン代の方が高く付いている事は

黒川には内緒だ。



弁当の時間はクラスメイトの注目の的だ。


クラスメイトは皆金持ちのため、

仕出し弁当やお重を持ってくる。


高級店からのケータリングもある。


そんな中、私と桃と赤井だけ

可愛くデコレーションされた手作り弁当だ。



『食べないで……』


というセリフ付きのヒヨコとか

タコさんウインナー。


小学校の頃は、

あまりにも可哀想すぎて泣きながら食べた。



中学生にもなると、

海苔で書かれたメッセージ。



『己の生活態度を悔い改めよ』


『テストでよくあんなにも恥ずかしい点数が

 取れたな、愚か者』




……泣きながら食べた。



「桃ー。

 今日の弁当のメッセージ、

 何て書かれていました?」



「え? メッセージなんかないよ? ホラ」



桃の弁当は、

桜でんぶで作ったハートの上に

海苔で『MOMO』と書かれていた。



く~ッ! 悔しい!



黒川が料理した夕食を食べ終え、

お風呂から出た後は、


黒川がドライヤーで私の髪を乾かし、

私が完全に寝てしまうまで

ベッドの隣で添い寝して

本を読んでくれていた。


黒川の低い美声が心地良くて、

私はいつも物語の結末を知ることなく

眠ってしまっていた。



それは小学校低学年までの話。



今は「お嬢の部屋に入ったら穢れる」と、


黒川ボイスで録音された

『般若心経』を毎日延々と聞かされている。



己の煩悩が溢れ出まくっているような人の

『般若心経』に効果はあるのだろうか?



まぁ、

黒川の美声のお陰で毎日良く眠れますが。



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