第九話
今日一日が無事に終わり、我々は屋敷に戻った。
六人で一台の車に乗って……。
窮屈だ。
何が窮屈って、白石が助手席からずっと私を睨んでいる。
私が少しでもウトウトしようものなら大激怒。
どうやらヨダレを気にしているらしい。
「あの……、白石。前を向いていた方が良いのでは?
ずっとそんな体勢でいると、首が痛くなりますよ?」
「いえ。気になさらずに」
滅茶苦茶気になるんだよ。
それより隣! 運転席を見てッ!
黒川が運転しながら饅頭を食べているよ!
起こるか起こらないか分からない未来を気にするより、今起こっている現実に目を向けろー!
青田は私の隣で新聞を広げて読んでいますし。
肘がガスガス当たってきて地味に痛いですし。
赤井と桃は読書中。
さすが進学クラスは違いますなー。
屋敷に到着すると、顔中に巻かれた包帯を取ってもらった。
わーい、自由だー。怨念キャラよ、さようなら。
久しぶりに食べるまともなご飯。
「美味ッ! 黒川が作ったご飯、滅茶苦茶美味ですよ!」
「良かったな」
夕食を食べ終え、私は風呂に入った。
今日一日の出来事があまりにも多すぎて疲れた
よし。アイスクリームを食べながらテレビを見よう。
キッチンの冷凍庫からアイスクリームを取り出し、テレビの置いてある部屋へ行こうとすると、赤井がやって来た。
「お嬢」
「何? 赤井もアイスクリームが欲しいの?
残念ながら、これが最後の一個です」
「違うって。
報告会があるからお嬢を呼びに来ただけだ」
「ん? 報告会?」
仕方がないのでアイスクリームを持ったまま、赤井に連れられて『報告会』とやらに顔を出した。
赤井と私が席につくと『報告会』とやらが勝手に始まった。
何これ?
アイスクリームを食べながら聞いているだけで良いのかな?
「赤井君、桃。
お嬢の初恋の相手に相応しい奴は見つかったか?」
ああ。そう言えば、そんな事をしていたっけ。
すっかり忘れてた。
「今のところ、三年生の先輩の中から三人。
これが三人の資料だよ」
「……」
資料が全員に配られ、皆、真剣に読んでいる。
どうでも良い。勝手に進めているが良い。
私は白石の為に一肌脱がなければならないので忙しいのだよ。
「なるほど。
では、この三人で決定。次の作戦へ移ろう」
ハハハ。次の作戦だって。
……。一体何をするつもりだァァァッ!
「では最後に。連絡事項がある者は?」
「はい」
お。白石が手を挙げた。
まさか白石、自分が学園で人気があることを皆に発表するのか?
ウフフ。
「一時間目、お嬢が居眠りと教師に向かって反抗をしました。
あと、化学の宿題を提出していないのは、お嬢だけでした」
うわぁぁ!
今、関係ないよね? 何でここで報告しちゃうの?
アイスが……、アイスクリームが溶けてしまう。
「よし、分かった。お嬢以外、解散」
皆、行かないで。行ってしまわないで……。
何? この報告会、毎日開催されるのですか?
自由の先に、黒川地獄が待っていた……。