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閑話(青田とお嬢の日常)その二

 青田はいつもすっとぼけている。

 そのすっとぼけのお陰で、私は何度も被害を受けている。



「お嬢。そんなところで何をしているの?」


「シー! 見て分かりませんか?

 黒川に見つからないように隠れているのですよ」


「へぇー。……で、今日は何をしたの?」


 青田、私の隣で座り込むな。

 お前のテカテカしたシルクのパジャマが目立って、黒川に見つかってしまうではないか。


「冷蔵庫にあった黒川のプリンを食べてしまったのです」


「ふーん」


 青田、納得したのなら早く向こうへ行きたまえ。

 ここは戦場だ。

 お前のような年中のほほんとした奴が隣にいると、見つかる確率が十倍に跳ね上がるのだ。


「お嬢、素直に謝ればどうかな?」


「素直に謝って許してくれるような奴ならば、とっくに謝っていますよ」


「怒られると分かっているのなら、何故、黒川君のプリンを盗んだの?」


「青田。私は今、一ヶ月間おやつ抜きという非常に厳しい罰を与えられているのです。

 想像してみてください。成長期真っ只中の私の腹が『甘いものが欲しい』と泣き叫んでいるのですよ?」


「アハハ!」


 だから大声で笑うな。

 黒川に見つかったらどうしてくれるんだ。


 隠れる場所を変えようかな……。


「あ、そうだ。

 僕の部屋に、とっておきの羊羮があるんだけど、そんなに甘いものが欲しいのなら、今から一緒に食べる? お茶も淹れるよ?」


「あ……、青田……」


 わーい! やっぱり青田だね!

 これからは甘いものが欲しくなったら青田の部屋に行こう。

 そうしよう。


 私はスキップしながら青田に付いて行った。


 それにしても今日は静かだなー。

 いつもなら、黒川が怒鳴りながら探し回るから、黒川の位置が大体把握できるのに。


「羊羮、羊羮~!」


 私が青田の部屋の扉を開くと、目の前に黒川が立っていた。


「あ……、青田。く……、黒いものが目の前に。

 ず……、随分大きな羊羮ですこと」


「あー。忘れてた。

 あの羊羮、黒川君と一緒に食べようと思って、お茶に誘っていたんだっけ」


 青田、天然ですか?


 始めから私をここに誘き寄せるためにわざとやったのなら、お前はなかなかの策士ですよ?


 目の前で黒川が笑っている。

 背後で青田もニコニコしている。

 私も笑顔で返す。


「青田。そこ、どいていただけますか?」


「え? 何で?」


 何でって……。

 逃げるからだよ!


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