表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/132

閑話(白石の過去)その4

学校の教室に飾ってあった真っ赤な椿の花が、花ごと棚の上に落ちた。


椿の花を拾い上げると、たちまち俺の手や制服はは黄色い花粉だらけになってしまった。


水道で手を洗うが、なかなか取れない。


「白石君。病院へ急いで。

 お母さんが……」


石鹸で手を洗っていると、慌てた様子の担任が知らせにやってきた。


「お母さん……、お母さん……」


俺は病院まで担任とタクシーに乗った。


病院に行くと、母の容態は少し落ち着いた様子で眠っていた。


母の唇はカラカラで、乾燥した血が所々へばり付いていた。


「君のお母さん、少し吐血をしてね」


医者が説明するけれど、頭に何も入ってこず、俺はボーッと母の顔を眺めていた。


相当苦しかったのか、涙の跡が頬を伝っていて、俺はははの顔を濡れたタオルで綺麗に拭きたかった。


「また吐血したら、ナースコールで呼んでくれるかな?」


「はい。ありがとうございました」


医者への対応は、全て担任がしてくれた。


「白石君。びっくりしたね。

 でも、お母さん、きっと良くなるから。

 白石君も頑張ろうね」


「…………」


俯くと涙がポタポタ落ちた。


母をこんな風にしてしまったのは俺のせいだ。


俺が花の事を何も知らなかったから。


俺が無知でなかったら、母の心を傷付ける事は無かったのに。



家に帰ると祖母に、タクシーを使って病院へ行った事を責められた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ