閑話(白石の過去)その3
祖母に椿の花を持たされた時、俺は病院へ向かわず、学校に戻り、職員室にいた担任に花を渡した。
「まあ、白石君、ありがとう。
教室に飾っていいかしら?」
「はい。
……先生、椿の花は病院へのお見舞いに持って行っていいものですか?」
「うーん。
椿の花はね、散る時に花ごと落ちる様子が、縁起が悪いとされているから、病気の人を励ますのには向いていないと言われているの。
それに、赤い花も『血』を連想させるから、手術前の人に渡すのは、あまり良くないかも知れないわね」
やはりそうだ。
祖母はわざと今の母に相応しくない花を渡していた。
それから俺は祖母の言う事を聞かなくなった。
花を渡されても、公園のゴミ箱に捨てた。
相変わらず俺は四つ葉のクローバーを見つけることに必死になっていた。
一つ葉の花言葉:困難に打ち勝つ
ニつ葉の花言葉:平和
三つ葉の花言葉:希望・健康
四つ葉の花言葉:素晴らしい健康
七つ葉の花言葉:無限の幸福
九つ葉の花言葉:神の運・邪を退ける
十つ葉の花言葉:完成・成就
四つ葉以外にも花言葉があるのを知り、探すのに必死だった。
子どもの俺に出来ることは、これくらいしかなかった。