第七十二話
放課後、屋敷に戻って白石に報告した。
「白石。
『犯人』は白石の推理どおり、エビちゃんのようです」
「ああ。そうですね。
昼休み、網代エビが早退届を提出し、その後、網代から『全ての犯人は私です』と、メールが届きました」
「……あ。
この事は誰にも言わないでください。
犯人は未だ『捜査中』ということで。
『私はエビちゃんに嫌われていた』
ただそれだけの事でした。
でも、嫌われた理由を聞くのは難しかったです」
「……分かりました。
お嬢がそれで良いのなら」
「エビちゃん……。
親友だと思っていたのにな……。
元家庭教師の佐藤ミサも、そう。
仲良くなれると思っていたのに。
私はいつも嫌われてしまう」
「嫌われたのではなく、性格が合わなかっただけですよ」
「性格は……、何とか皆に合わせていこうとしてきたつもりです」
私は心の中で思っていることを口にしない。
いつも笑顔で、人の話の聞き役に徹するようにしている。
最近、極悪執事どものせいで、大分言いたいことが言えるようになってきたけれど。
それでも学園内では、なるべく目立たないように
してきたつもりだ。
「お嬢。
『親友』は『無理して作る』ものではありませんよ。
そんなに『親友』が欲しいのなら、俺がなりましょうか?」
「え? 白石が?」
「ところで『親友』とは一体何をするのですか?」
「え……、と」
「原宿に行って、一緒にパフェを食べるのが『親友』ですか?」
「え……。白石の『こんな不衛生な場所で立ち食いなんてしませんよ』って、怒って帰ってしまう姿しか思い浮かばないのですが……」
「じゃあ、交換日記でもしますか?」
「白石と交換していたら、毎回、誤字脱字をチェックされた赤文字だらけの日記が返って来そうで怖いです」
「なるほど。
俺達、気が合いませんね」
白石がクスッと笑った。
いやいや。
白石に合わせられる人って、この世に存在するのだろうか……。
「白石は『親友』じゃなくて構いません。
白石とは家……、教師と生徒の関係が一番ですから」
思わず『家族』と言いそうになってしまった。
「……そうですね」
また白石が小さく笑った。