表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/132

第七十一話


翌朝、学校に行く準備をしている白石に声を掛けた。


「白石、おはようございます。

 あれから白石のメール宛に、誰かから連絡はありましたか?」


「おはようございます、お嬢。

 今のところ、誰からも連絡はありません」


「そうですか……。

 もし、白石宛にメールがあったのなら、もう、この件は終わりになるかもしれないと思っていましたが……。

 やっぱり『犯人』は、まだ何かを仕掛けてきそうですね」


「お嬢。

 昼休みは、いつものベンチで過ごしてください。

 あそこなら職員室も近いですし、俺も目を光らせておけるから、『犯人』も手を出せないでしょう」


「ありがとう、白石。

 私なら大丈夫だよ」



昼休みになって、演劇部の更衣室でジャージに着替え、トイレに向かった。


個室に入って鍵を掛ける。


しばらくすると手荒い場の蛇口を捻る音と共に水が出る音が聞こえてきた。


私はトイレの個室の中で、じっと天井を見ていた。


『キュッ』


蛇口の水が止まる音がした。


『ガタッ』


トイレのドアの上から、青いバケツが覗いた。



……やっぱり。



青いバケツがゆっくりと私に向かって傾いて来るのがわかった。


私は手を伸ばしてバケツを押し返すように力をいれた。



ぐぬぬ……。



もし『犯人』が、この学園の生徒だとしたら、私は体力に自信がある。



絶対負けない!



相手も力があるのか、しばらくバケツの押し合いが続いた。



ぐぅぅぅ……。



力を込めて押し返した瞬間、バケツがグラリと向こう側へ傾き、落ちていった。



『バシャーン』

「キャァ!」



個室の扉を開けると、全身びしょ濡れになったエビちゃんが目の前にいた。



「エビちゃん……。

 どうして……?」


「は?

 どうして?

 アンタが嫌いに決まっているからじゃない」



エビちゃんが半笑いをした。



「……私、エビちゃんに何か酷い事をしたかな?

 ……ごめんね。

 私、馬鹿だから、どうして嫌われちゃったか、分からないよ」


「……フン。

 馬鹿なら知らなくていいわ」


「エビちゃん、演劇部の更衣室に私の制服とドライヤーがあるから。

 良かったら、それに着替えて髪を乾かし……」


「そういうところよ!

 そうやって、偽善者ぶるアンタの何もかもが嫌い!」


エビちゃんは、そう言って制服が濡れたまま、走ってトイレから出て行ってしまった。


「エビちゃん……」



昼休みが終わり、教室に戻ると、エビちゃんは午後の授業を早退していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ