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第六十四話

白石が教室に入り、ホームルームが始まった。


「ホームルームを始める。

 ……ん?」


白石が電子黒板を操作するためのパソコンを、じっと見ている。


「このパソコンに触れた奴がいる……」


白石、何で分かるの?


この電子黒板は、潔癖白石がチョークの粉で自分の手やスーツが汚れるのを嫌い、学園長に駄々をこねて買ってもらった『白石専用黒板』で、白石以外の人間が触れる事は決して許されない。

 

最近、この学園の七不思議に『白石先生の電子黒板に触れた者は三日以内に死ぬ』という新たな伝説が加えられ、生徒達の間で恐れられている。


「パソコンに触れた奴。

 三秒以内に名乗り出れば、刑を軽くしてやろう」


早っ!

三秒以内って早すぎませんか?


考える隙もないよね?


それに、刑って何ですか?

怖すぎて、名乗り出る人いないと思います。


「三……、二……」


ヒィッ!

恐怖のカウントダウンや……。


「一。

 ……。名乗り出る気は無いのだな」



白石がポケットから黒い箱を出した。


私は知っている。

あの箱の中に、白石神器の一つ『指紋採取キット』が入っていることを。


あの『指紋採取キット』を使って、今までどれだけ私の悪事が白日の下にさらされてきたことか……。


白石はゴーグルとマスクと手袋を装着し、白い粉をブラシに付けて指紋のありそうな場所を丁寧になぞっていった。


「キャー!」


白石の真剣な姿に、クラスの女子達が歓喜の声をあげる。


浮かび上がった指紋を、透明のテープで一つ一つ丁寧に採取していき、黒い紙の上に貼ってじっくり眺める。


白石……。


ホームルームを、丸々自分の為に使うつもり?

PTAに怒られても知りませんからね!


あ。でも白石の解析力なら『さち子と青田のうれし恥ずかしラブラブピクチャー』を描いた人が分かるかも。


あの絵を描いた人が、私を陥れようとした犯人かもしれない。


うー……。

犯人の正体を知りたいけれど、知るのは少し怖いな……。


「採取された指紋は二種類。

 つまり、犯人は二人いるということだ」


え? 二人?

ハッ! エビちゃんと私だ……。


電子黒板の『さち子と青田のラブラブピクチャー』を消去したくてキーボードを連打しまくった後、エビちゃんが消去ボタンを押してくれたんだっけ……。


斜め前の席に座っているエビちゃんを見ると、エビちゃんは俯いたまま小刻みに震えていた。


エビちゃん……。

白石に怒られた事がないから怖いよね……。


「白石先生ッ。

 犯人は、このワタクシですワッ!」


私がそう言って立ち上がると、皆が私の方を見た。


「これは全てワタクシ一人でやった事。

 さあ。犯人が見つかったのだから、これで一件落着でしょう?」


「お前。電子黒板に何をした?」


え? まだ続くの?

犯人を見つけたら一件落着じゃないの?


「え……。

 えーっと……、か、かわいい生徒のイタズラですよ。

 ドッキリです、ドッキリ」


「何のドッキリだ。見てやる」


白石がパソコンを起動させた。


「あ……。

 本当にドッキリするから、見ない方が……」


「ハッ! 面白い。

 ドッキリ映像ごときで驚く俺様ではない」


そう言って白石がマウスをクリックした瞬間、電子黒板に『さち子と青田のラブラブピクチャー』が再登場した。


さち子と青田がラブラブしながら無数に飛び回り、大きくなったり小さくなったり、やりたい放題。


あ。白石が固まった。

白石にこの絵は刺激が強すぎたようだ。


だから見ない方がいいと言ったのに……。


白石がゆっくりと後ろへ倒れていく。


「し、白石ッ……、先生ッ!」


私は咄嗟にスライデイングをして、倒れてくる白石の体の下に潜り込むと、白石は私の体の上に倒れ込み、そのまま気を失った。


白石が後頭部を打たなくて良かった……。


「キャァァァ! 白石先生!」


クラスの女子達が駆け寄ってきて騒ぎ出した。


「白石先生! しっかりしてください!」


「誰か、他のクラスの先生を!

 救急車を呼んできて!」


「あなた達、何を騒いでいるのですか?

 授業中ですよ?」


隣のクラスで授業をしていた女性教師が教室に入ってきた。


「何をなさっているのですか?

 白石先……、ヒィッ!」


隣のクラスの女教師が、私の体の上に覆い被さるように倒れている白石や、電子黒板のラブピクチャーを見て悲鳴をあげた。



地獄だ……。


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