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閑話(お嬢と五人の執事)嵐の夜編②

青田に呼ばれて赤井もリビングに集まったところで席決めを始める。


怖がりな私は、ソファーの真ん中に座って回りを用心棒で固めたい。


当然私の右隣には桃。

番組鑑賞中に問題行動を起こさず、いざという時は私を守ってくれるだろう。


左隣を誰にすべきか。

……と、言うか、桃以外に適任者はいないのだが……。

おしゃべりが過ぎる青田や白石が隣にいると番組の内容が全く頭に入ってこなくなるから、ここは赤井で我慢しよう。


赤井は笑いのツボがずれているから全く面白くないシーンで突然笑い出して、その度ドキッとするけれど、比較的静かにしているので大人組より害はない。


次に背後だ。


怖い話を見たり聞いたりしていると、自分の背後に何かがいるのではないかと不安になる事がある。


ここは、おしゃべり二人組を配置しておこう。

どうでも良い話を延々と喋り続ける白石と青田が私の背後にいたら安心だ。


私はソファーの後ろに椅子を2脚移動させた。


「白石、青田。

 どうぞこちらにお座りください」


「何故、俺たちがここに座らなければならないのですか?

 ここからではお菓子が遠いですし、三時間も椅子に座っていたら疲れます。

 俺、ソファーがいいです」


ム! 白石、生意気!


「まあまあ、白石君。

 折角お嬢が椅子を持ってきてくれたんだから、ここに座ってお茶でも飲もう」


「そうですよ、白石。

 お菓子なら私が取って差し上げますし、疲れたら誰かと席を交代してもらえば良いのですから」


「……」


白石は渋々、私が用意した椅子に座った。



さて、問題は黒川を何処に配置するか……。


黒川は私を驚かせる為、色々仕掛けてくるはずだからなるべく遠ざけておきたいけれど、私の目の届かない背後に置くのは危険だ。


「黒川はこちらに座ってくだ……」

『カッ!』

「ぎゃッ!」


窓ぎわの、私の視界に入る場所に椅子を置こうとした瞬間、雷が光った。


「ハハハ!」


クッ、黒川……。

やはり私を笑いものにしたいのですね。要注意!


「では皆さん。

 これからテレビを鑑賞するにあたって、いくつか注意事項を述べさせていただきますから、静かに聞いてください」


「おー。何だ何だ?

 たかがテレビを見るだけなのに、注意事項って。

 大袈裟だな、お嬢は」


「それよりお前、何で頭から毛布を被っているんだ?」


「赤井、黒川。

 言っているそばから騒がないでください。

 まず、テレビは静かに鑑賞すること。

 たとえ番組の内容に突っ込み所があったとしても、むやみに突っ込まず、私のようにピュアなハートで鑑賞してください。

 それから、番組の内容と全く関係のない話で盛り上がらないこと。

 もし喋りたくなった場合は、ソファーの後ろに『お喋りコーナー』を設けていますので、速やかにそちらへ移動し、小声で喋ってください」


「何故、青田君と俺が座っている場所が『お喋りコーナー』になっているのですか?」


「白石。貴方達はお喋り人間ですよ?」


「青田君はともかく、俺はお喋りではありません」


あらあら。

自覚がないって怖いわ。


「最後にッ。

 突然、大声を出したり大きな物音を立てたり……。

 とにかく人を驚かせてはいけません。

 駄目ッ、絶対! いいですかッ?

 約束ですよッ?」


黒川に言い聞かせるため窓際に目を向けると、黒川がこちらを見てニヤリと笑った。


こ……、怖い。

あれは何かを企んでいる時の顔だ。


私は頭から毛布を被り、ソファーの真ん中に腰をおろした。


「お嬢。

 お菓子が届きません。取ってください」


「ンもー。

 まだ番組が始まってもいないのに、早速お菓子ですか。

 仕方がありませんね。

 白石には、この新作のお菓子を差し上げますから、大人しく食べてください」


白石に、先日発売されたばかりのスナック菓子を袋ごと手渡した。


白石は自分専用の小さなハサミで丁寧にスナック菓子の袋を開封し、自分専用の携帯箸でスナック菓子を器用につまみながら食べ始めた。


「さあ! 『恐怖映像百連発☆未知との遭遇三時間スペシャル』が始まりますよー! 皆さん、静かにしてくださーい」


「お前が一番うるさいけどな」


「黒川ッ!

 お菓子をあげるから静かにしてッ!」


『カッ!』

「ぎゃっ!」


「ハハハ!」


黒川にお菓子を渡そうと窓際に近付くと、また雷が光り、驚いた私を見て黒川が笑った。


何? この雷。

黒川が操っているの?


黒川、暗黒度が増しすぎて遂に雷を操れるようになったの?


雷が操れるのなら、この番組の『視聴者からの怪奇現象投稿コーナー』に出してみようかしら。


『ベスト・オブ☆怪奇現象』に輝けば、全国共通お食事券三万円分がもらえるし。


そういえば、最近駅の近くにお洒落なカフェがオープンしたって桃が言っていたな……。


桃から貰ったカフェのチラシに載っていた三千円の『ジャンボ・ストロベリーパフェ』。


死ぬ前に一度は食べたいと思っていたけれど、三万円分のお食事券をもらったら十回も食べられる!


それに黒川が『美しすぎる雷オヤジ』として話題になったら、取材やイベントのオファーが来るかもしれない。


そうすれば三万円どころか、十万……、百万……、一千万!


『ジャンボ・ストロベリーパフェ』食べ放題!


黒川、これから忙しくなるなー。

声が良いから、歌とか出してCDが売れて……。


そうしたら執事なんか辞めて、この屋敷から出て行って……。


「く……、黒川。行かないでッ」


「わ! どうしたの? お嬢。

 何でヨダレを垂らしながら泣いてるの?」


「桃ッ。私が身の程知らずに『ジャンボ・ストロベリーパフェ』を食べようとしたから、黒川が稲妻アイドルになって、ここから出て行こうとするのです」


「は? 言っている意味が全く分からないんだけど……」


「とにかく私は、一生『ジャンボ・ストロベリーパフェ』を食べないことを誓います。

 だから黒川。CDを出さないで……」

 

「あー、お嬢。パフェが食べたいの?

 じゃあ、今度買い物に付き合ってくれたら、カフェに連れて行ってあげるよ。もちろんボクの奢りで。ね?」


「え? 桃、良いのですか? やったァ!」


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