表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/132

第五話

 これは早く教室に行って、じっとしていた方が良いな。

 何かのオブジェと間違えてくれるかもしれないし。


「ごきげんよう。……って、さち子?」


「エビちゃん!」


 エビちゃんは高校一年からこの学園に編入してきた、唯一無二の親友だ。


 ちなみにエビちゃんの名前は本当に『エビ』だ。

 『海老で鯛を釣る』のエビになるようにと、親の期待を一身に背負わされた、何とも可哀想な子である。


 そのまたちなみに私の名前は『さち子』で、何故『幸子』と漢字にしてくれなかったの? だからいつまでたっても幸せになれないんだよ。可哀想。という共通点から友達になったのである。


 まあ、私が『さち子』と呼ばれるのは学園内ぐらいなので、割とどうでも良い話だが。


「どうしたの? さち子、その姿」


「エビちゃん、よくこの姿で私だと気が付きましたね」


「当たり前じゃない。

 そんな姿で出歩けるのは、この学園でさち子ぐらいよ」


 え? 私って、こんな姿で出歩けちゃうイメージなの?


「さち子のそんな飾らない所が好き」


 いや。今、めちゃくちゃ飾っていますよ?

 この破れて私の頭が突き出た真っ赤なチューリップハット。

 なかなかのアクセントだと思いませんか?


 まあ良い。

 エビちゃんに私だと認識してもらえただけでも良かった。

 私達は永遠に親友だよッ!


「席に着いてください」


 あ。授業が始まる。


 ……良かった。

 エビちゃんにくっついていれば、今日一日が、あっという間に終わりそう。


「このクラスの担任が、とある事情で辞めましたので、新しい担任を紹介します」


 とある事情って何だ? 何をしたんだ? 先生よ。


「このクラスの担任と化学を担当する白石先生です」


「キャー!」


 黄色い声援。

 白石? 白石って……。


 ……!


 やっぱりお前かー!

 白衣なんか着て、何を企んでいるんだー!

 白衣は似合っているけどね!


 ん? 前担任の『とある事情』って……。

 まさか!


 いやいや。考えるのは止めておこう。無だ、無。

 ここは黒川の『般若心経』だ。


 黒川の低い声って、結構癒されるよね。

 ヒーリング効果だよね。グゥー。


「そこの赤い奴」


 あ。ついつい居眠りをしてしまった。

 赤い奴って誰? 誰のこと?


「そこの赤い帽子から頭の先が突き出ている奴だ」


 え? 私?

 ……と、言うか、白石。屋敷では敬語で話すのに、何で黒川みたいな口調になっているの?


「授業中に派手な帽子を被って何をしている」


 いえ。何故こうなったのかは白石先生の方がよくご存じかと。

 一時間前まで一緒に過ごしていましたよね?


「早くその帽子を脱げ」


 鬼か? 公開処刑だよね?


「いえ。脱げませぬ」


「何故脱げない」


「頭が……。帽子にめり込んでしまったからです」


「ハッ! 面白い。俺が脱がしてやるわー!」


 キャー! 助けて、PTA会長!

 この暴力教師を何とかしてください。

 権力を与えてはいけない人物がここにいますよ!


 ぐぎぎぎ……。


「……。授業を始める」


 白石、あっさり諦めた。

 黒川と違って、執着心とパワーが足りませんな。


 ……て。

 白石が中途半端に引っ張ったせいで、突き出ていた頭部が伸びて『ドジっ子ミーちゃん』がますます怨念キャラになってしまったのですが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ