心開の人外
今回、クソ眠くてテンションがおかしい状態で書いたため、いつもより更に酷いです。
こんな私のssでも、読んでくださると嬉しいです!
いつも通りの日常が始まった。
寺子屋に登校し、授業を受け、家に帰る。
そんな毎日。
皆僕が妖怪と友達だと知った途端に避け出した。
でも寂しくはない。だっていつも僕の近くには妖怪達がいる。
皆は妖怪の事を誤解していると思う。妖怪は大半、殆どが温厚な性格をしている。人間を襲う理由は、昔人間が狩りをしていた時の理由と同じ理由だと餓鬼おじちゃんが言っていた。
今は家に帰る途中、田圃に寄り道をしている。
田圃道を歩いていると、後ろから声が聞こえてくる。
「よお少年。いや、青年か?まぁいいや。青少年」
知らない声だと思い、振り返ると、そこには鬼がいた。
「青少年が今妖怪達の間で噂の面白いやつか?」
変な呼び名だなオイ。もうちょいなんか思いつかなかったのかよ?
どっちにしろ、酒呑童子と関わると面倒なので、他人のふりでもするか。
「いえ、僕は知りませんね。そんな呼び名。人違いじゃないんですか?」
「お前ならそう言うって餓鬼の奴が言っていたぞ?」
おじちゃんの野郎……!
今度会ったら鳩尾に一発入れてやる。
「はいはいその通りだよ!僕はここら一帯の妖怪達と仲が良い、妖怪達曰く面白い人です!」
「やっと認めたか。ところでやっぱり青少年じゃ呼びにくいから名前を言ってくれないか?」
「面倒です。言いたくありません」
「そこをなんとか」
「嫌です」
「おおっとこんなところに妖怪が作った『降魔の塩』がー」
これは乗るしかない!
「盃奏多です」
「さかずきかなた、ね。覚えたよ。本当に塩が好きなんだな盃って」
「はい。塩というより塩分全般が好きですね」
だが一番好きなのは降魔の塩。魔が寄り付きたくなるほど旨い塩というのが名前の元だが、実際それほど旨い。程良い濃さに、一から妖怪の手で作らないと出ない風味。何につけても合う汎用性。どれを取っても素晴らしい!オールマイティとは正にこの事だと僕は思うね!
「しかも盃って……いかにも酒が飲めそうな名前じゃないか!」
人を名前で判断してはいけませんって慧音さんに習わなかったのか?この人は。まぁ酒は割と強い方だし、当たってるな。
「まだ未成年ですが、まぁ少しなら付き合いますよ?」
「おぉまじか!じゃあ今から行くか!良い店知ってんだぜ?酒呑童子をなめんじゃないぞ!」
「ええ行きましょうか。酒呑童子の実力とやら、見せてもらいましょう」
今日はちょっとだけ寄り道が長くなりそうだね。
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時刻は夕方。場所は仙人が営んでいるという居酒屋『仙鬼』。いかにもヤバそうな名前だが、ここが酒呑童子である伊吹萃香の行きつけの店だそうだ。その店の前に立っているわけだが、
「なあ盃、お前いくら持ってる?」
なんと伊吹さん、財布を忘れた模様。
「金なんてあまりありませんよ。そもそも、ミニミニ伊吹さんを使って取りに行かせればいいじゃないですか」
「ミニミニ伊吹さん言うな!でもまあそれもそうだな。よし、行ってこい伊吹B!」
伊吹さんも人の事言えないと思うんですよ僕。
「何分ぐらい掛かります?」
「軽く十五分くらいかな?」
「なら店の中でゆっくりしてません?」
「そうだな!じゃあ入ろうか!」
惜しい!のれんにギリギリ手が届かない伊吹さんは可愛い。
「いらっしゃい!ようこそ仙鬼へ!ってなんだ萃香ですか」
店ののれんをくぐるとそこには桃色の髪をした謎が多い仙人、茨木華扇がカウンターに立っていた。
「よう華扇!また遊びにきたよ!」
「あなたがいると毎回後片付けが大変だからあまり来て欲しくないのですが……。ところであなたは?見ない顔ですが」
「はい。僕は盃奏多です。何もない一般人です」
「こいつはさっき田圃道をうろついてた時に出会ってな!とりま今日飲むか!ってなった訳よ」
「全く意味がわかりませんね。まあ見たところですが、盃さん、あなたは一般人ではありません。間違いなく人間ですが、それ以前に『人外』でもあります。それは覚えておいてください」
え、僕って人外なのか?
「え、そうなんですか?じゃあ僕の能力って……」
「お前の能力は、まぁ知る時が来るさ」
なぜか伊吹さんは分かっているご様子。顔を見た限り華扇さんも分かってるなこれは。
「そうですか。まあそれは置いといて、もう酒を飲み始めましょうか!もうお使いは済んだでしょう?」
「なんで分かったお前!こいつには気配を消して来るように指示を出していたというのに!」
「いや、だって走る音聞こえましたし」
下駄だもんな。そりゃ聞こえるわ。
「次からスニーカー履かせてやる!」
「何故そこで闘志を燃やすんですか」
全く、鬼が考えることは理解不能だ。
「とりま『深淵』寄越せ華扇!今日は飲むぞ!」
「うわ、そんな高い日本酒飲んで大丈夫ですか?」
「そうですよ萃香!流石にいきなり深淵は早すぎます!」
「大丈夫大丈夫!こちとら深淵歩きと謳われた伊吹萃香様だぜ?今更深淵一本じゃ変わらんよ!」
それは深淵違いだし、その人最終的には深淵に呑まれてなかったか?
「酒は飲んでも呑まれるなって餓鬼のおじちゃんが言ってましたよ?」
「いんだよ!偶には呑まれたい時だってあるんだ!」
「貴女の場合それがいつもでしょう」
「それもそうだな!うははは‼︎」
本格的に大丈夫だろうかこの鬼。
まあ、酒も来たし、飲むか!……未成年だけどね!良い子は真似しちゃ駄目だぞ?
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それから、伊吹さんと僕は飲んだ。もうこれ以上無いくらい飲みまくった。
僕はおじちゃんによく
「お前は酒に強いな!」
と褒められていた程で、実はまだほろ酔いだったりするのだが、流石に鬼を相手取るにはいささか肝臓が弱い。なので、飲み勝負を申し込まれぬよう、酔ったふりをしておく。
「おい盃ぃ!まだ余裕だろぉ?」
「全然余裕っすわぁ〜‼︎」
「よおし!いい飲み仲間になってくれた礼だぁ‼︎百鬼夜行を見してやるよぉ‼︎」
「おぉ‼︎いいですねぇ‼︎見せてください‼︎百鬼夜行!」
「よぉし任せとけぇ!」
鬼符『一人百鬼夜行』
大勢の小さな萃香達が、スペルカードを発動させた瞬間に現れた。
「おぉ!凄いですね!この数は!」
「だろぉ?すげぇだろぉ?」
「はい!凄いと思います!ですが伊吹さん貴女……」
貴女の放つスペルカードは、とても悲しそうで。
「いいんだ。分かってる。私は元々結構有名な妖怪だ。だから、昔は私についてくる輩も多かったんだ。だが、そいつらは私が酒を飲んでいるだけで何もしてこないと分かった途端に、どんどん離れていったんだ。最後に残ったのは、お前の知り合いの餓鬼ぐらいだった。私は正直寂しいんだ。だって一緒にいた仲間がいなくなるんだから。だから、その事すら酒の力で忘れようとしてるんだがな。……楽しい記憶は、酒なんかじゃ忘れらんねえんだよ……」
そんな言葉を放つ貴女の顔は、とても寂しそうで。
「じゃあ、僕がその楽しい記憶を、もっと楽しい記憶で塗り替えてあげましょう!……ですから、そんな悲しそうな顔をしないでください。僕が貴女を守ります。貴女を悲しみから救います。ですから、泣きたい時には、思いっきり、泣いてもいいんですよ?」
そんな貴女を、僕は守りたいと思ったんだ。
「うん。じゃあちょっと、肩借りるわ………」
真夜中に、彼女の泣き声が響いていた。
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少し経ち、伊吹さんは泣き止んだ。
今から、伊吹さんに凄いモノを見せようと思う。
もうおじちゃんには連絡をしてある。
「いやースッキリした!ありがとうな盃!肩貸してくれて!」
「どういたしまして。時に伊吹さん。僕、ついさっきスペルカードを思い付いたんです」
「へぇ、どんなのだい?」
「それは、今見せてあげます!貴女のためだけに作った、このスペルカードを!」
奏符『全妖怪の緋想天』
合図をすると、妖怪の山から光の列が僕達に向かって走ってくる。
言わずもがなこの光の列は百鬼夜行である。ただし、擬似的なものでは無く、本物の百鬼夜行だ。
「さぁ、夜は長い。今日は朝まで宴ですよ?伊吹さん」
「……っ‼︎…お、おう!皆ぁ‼︎今日は飲むぞぉっ‼︎」
妖怪だけの楽園は、夜が明けるまでずっと続いていく。
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「これで良かったのですか?あなたは」
「ああ良かったさ。なんせあの子が立派に成長しているのをしっかり見届けられたしな。ところで、華扇ちゃん。なんであんた、こんな所で居酒屋なんか営んでるんだ?」
「そんなもの決まってるじゃないですか。鬼といえば酒、仙人といえば清水でしょう?」
「ああ、だからこの店、水割りしか置いてないのか」
「古雅さんこそ、本気出せばすぐ有名になるぐらいの力があるのに、なぜ未だ餓鬼などという地位にいるのですか?」
「うーむ、やっぱり元仙人だからかな、地位とか富とか名声とか興味ねぇんだわ。あの子の成長を見届けるのが生きがいであり、俺の役目だと思ってるからさ」
「私も早く全盛期の古雅さんぐらいに徳を積み、高位な仙人になるため修行を積まなければ!」
「ははッ、生が出るねぇ茨木童子ぃ!昔のやんちゃしてた頃とは大違いだ!」
「昔の事は言わないで下さい気にしてるんですから!」
「良し、今日は飲むか!華扇ちゃん『太陽』一本頂戴!」
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あれから夜が明けるまで飲み明かした。
僕は途中から何があったか覚えていないが、今、伊吹さんと僕は博麗神社の中で同じ布団に寝ている。
本当に何があったか気になるが、とりあえず今はこの状態をなんとかしなければ。
今の状態を表すなら、僕は伊吹さんの抱き枕、の一言で表せるだろう。
これをなんとかするには、あの方法しかない。とある本で見た、相手の女性が絶対に起きる方法だ。
その方法とは、
「(萃香、そろそろ起きる時間だ、起きないといたずらしちゃうぞ?)」
「うひゃぁ⁉︎」
耳元でボソッと呟く、だ。確か恋愛もので見た気がするんだが、効果てきめんだな。ガバッと勢いよく伊吹さんが起き上がった。
「さ、盃⁉︎ななな、何やってんだ!」
「おや、お気に召しませんでしたか?それは失礼致しました」
「いや…別に嫌じゃない……けど……」
「では何故?」
「っ‼︎と、とにかくっ!今度そんなことやったら怒るからな!」
「はい。分かりました」
顔赤くしてる伊吹さん可愛い。
「と、所で盃」
「何ですか?伊吹さん」
「な、仲良くなったことだし、そろそろ、その、し、下の名前で呼びあっても良いんじゃないか?」
「それもそうですね」
「あと敬語も」
「分かったよ萃香。これからもよろしく!」
「うん!よろしくな奏多!」
僕は、これからもこの友達を大切にしていこうと思う。
最後まで読んでいただき誠にありがとうございます!