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かき氷の女神さま  作者: にごらせ生茶
7/13

人並みに戻るまで

 「それが、彩のとこに遊びに行く途中で、何日か前にスーパーで買った箱の棒アイスが2本残ってたんで持って来てたんだよね。


 外の暑さでかなり溶けちゃってたけど、篤郎くんに会った後、篤郎くんの部屋の前を通り過ぎる時に何となくそっちを見たらドアが開いて・・。


 そしたら彩がフラフラと部屋からやたら猫背でトボトボと出てきて、それはもうただならぬ状態で。


 それで何かあったのかと声をかけて、彩がこっちに気づいたと思ったら急に元気になって、ものすごい勢いで手招きするんで、急いで信号を渡ったら、そしたら何かもう私の持ってる袋の中にアイスが入っているのが分かってたらしくて“あおいやるー! グッジョブでした! やるー!”と。


 “あおいは前々から思っていたけど私のピンチを救うべく存在している女神さまそのものだね!”とか言って、後ろから両肩を掴まれて揉まれながら、何かものすごいテンションで押されていって、遠慮しないで入って入って、と。


 それでアイスを食べ始めた次第です。それで転がりこんだ次第です・・」


 彩のアイスはもうなくなり、アイスの棒を薄目で見ていた。なくなってしまったことが信じられない、まだいける、まだいけると恨めしそうにぺろぺろとアイスの棒を舐め続けている。


 最終的にはよく噛めばまだいけるのでは? と思ったのだろう。アイスの棒をかじり出している。


 望んだ結果が得られないと分かると、彩は“おかえりー・・”と言って以来、まるで今初めて篤郎の存在を認識したかのようなリアクションを取った。そして篤郎の手にぶら下がっているコンビニの袋を見て目をランランとさせた。


 「ああ、買ってきたよ。ほら」


 篤郎は袋をゴソゴソとやり、この勢いなら1本では足りないだろうと思い、2本のバニラアイスを彩に差し出した。


 彩は嬉しそうに目を見開いて“やるー! 2本! やるー!”と言った後、アイスを受け取って、それを最高のコンディションで味わうべく片方を冷凍庫の奥にこれでもかと押し込み、素早くもう一方の袋を開けてぺろぺろ舐め始めた。


 彩はまだ人並みの所作しょさを取り戻すにはアイスの投入が引き続き必要な状態のようだ。しばらく放っておこう。


 「・・それにしても暑いよねー、あおいちゃんの部屋も暑いんじゃない?」


 「そう・・ぺろぺろ・・クーラーは一応ついてるけど、なんか調子が悪くて、ほとんど冷えなくて。・・ぺろぺろ・・直すのもお金かかりそうだし、結局扇風機でなんとか凌いでいる状態で・・。


 まぁここよりもほんの少し涼しいくらいのもんで・・ぺろぺろ・・と言っても涼しいなんていう言葉はまったく当てはまらなくて・・ものすごく暑いんだから・・ぺろぺろ・・」


 あおいもやはり相当暑いらしく、笑顔を交えておしゃべりしながらもアイスを口に運ぶことを止めることができないようだった。さっきまで炎天下を歩いていたこともあり、やはりこの暑さにはお手上げらしい。


 そんな話をしながらもおそるおそる彩の方をチラッと見ると、篤郎は目を見開いた。彩はすでに買ってきたアイスの1本目を光の速さで食べ終えており、棒を薄目で見ながら恨めしそうに散々舐め回している。


 最終的にはアイスの棒に吸い付いたらば? と思ったのだろう。アイスの棒を口をすぼめてチューチューと吸っている。


 望んだ効果が得られないと分かると、お前の量はそんな程度か、と挑戦的な目でアイスの棒とパッケージをきっと見たが、寂しそうな表情をした後、気を取り直し、2本目を冷凍庫から素早く取り出してきて嬉しそうに袋を開けて食べ始めた。


 あまりにも素早く1本目を食べ終えており、驚いたが、少なくともアイスの棒をかじるようなことはしなくなったようだ。ものすごい吸い付いてはいたが・・。様子を見るかぎり彩は先程よりは落ち着きを取り戻してきているようだった。しかし、まだまだその勢いは衰えてはいない。


 これはもう1本アイスが必要だったかもしれない・・。でもしめの『オロナミンC』がある。最後にシュワシュワ、キューっとそれを飲めばきっとそれなりには落ち着くだろう。


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