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かき氷の女神さま  作者: にごらせ生茶
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思わぬ事故

 2度会計をしたので余計な時間がかかってしまった。再びもらったレシートをアイスの入った袋の中に入れ、素早く応対してくれた店員に軽く会釈しながら自動ドアに急いだ。


 自動ドアが開き、数歩前に進むと外の熱い風が早速体にまとわりついてきた。


 財布のジッパーをお会計を待っている間に締めておけばよかった、と後悔しながら、速めようとしていた歩くスピードを一旦落として焦れったそうにスタスタとゆっくり目に歩いて外に出たが、篤郎が財布を締めてよしと顔を上げ、走り出す準備にとりかかり始めて前を向いた矢先、右の視界の半分ほど、距離にして数十センチに満たないであろう範囲に人影があった。


 あっ! と思って瞬間的に身を引いたものの回避できず、篤郎はそのまま肩をぶつけてしまった。


 「イタっ・・」


 ぶつかった人が小さく声を上げた。


 「あっ! すみません、大丈夫ですか・・?」


 ぶつかる直前に気づき、わずかにブレーキをかけたのでそれほどガチンと強くぶつかったわけではないが、少し会釈して立ち去れるようなぶつかり方ではなかった。


 コンビニの自動ドアが[ゴーッ]と音を立てて閉じたが、別のお客さんが来て二人をちらっと見ながら自動ドアを再び開け、中に入って行く。


 「・・大丈夫です・・。平気です・・」


 篤郎の方はまったく痛みを感じていなかったが、相手は右肩と胸のあたりを押さえている。


 自分と同い年くらいであろう平均よりも身長が高めの目深にキャップをかぶった女の子だった。右手には清涼飲料水を持っている。すこし幼い感じもするのでうちの大学の下級生だろうか。


 「すみませんでした・・。つい急いでいたもので・・。・・ほんとに大丈夫?」


 篤郎はとても心配そうにまた声をかけた。同じ大学の下級生かもしれない、と内心思い、その親近感と、慌てていたこともあったためか、最後にはかなり砕けた言葉遣いになってしまっていた。


 女の子はそれを聞いて少し驚いたような表情をしたように見えた。その後クスッと笑った。


 「・・大丈夫・・。そんなに心配してくれなくても平気です・・」


 女の子も篤郎の言葉に感化されたのか幾らか親しげな感じになり下向き加減だったが少し笑みを浮かべながら篤郎の目を様子を伺うようにチラッと見た。


 「・・そうですか、ほんとにすみませんでした。・・それじゃあ・・」


 なぜ笑われたのかは分からなかったし、あまりきちんと顔を見られなかったが、ぱっと見、とても色白な子だな、と思った。


 篤郎はその場をゆっくりと後ずさりながらその女の子に何度か頭を下げると、すぐに家の方に向き直りものすごいスピードでその場を走り去った。


 女の子はしばらく篤郎が駆けていく様子を物珍しげに眺めていた。あまりにも猛スピードで逃げるように走り去っていったので、はっとしてまさか自分の財布が盗られたのでは、と確認したが、財布は盗られていない。


 「・・おい、どうしたんだ・・? 買い物はもう済んだの? 済んだなら行くよ、早く乗って・・」


 「・・うん、今行くね・・」


 その女の子は駐車場に停車したエンジンをかけたままの車の運転席に乗っている壮年に、開け放たれている助手席の窓越しに返事をした。


 女の子が助手席に乗ると壮年は女の子の膝の上に白い箱を置いた。


 「ちゃんと持っていないと・・。・・じゃあ出すから・・」


 女の子は壮年の方には顔を向けずに小さく頷いた。


 駐車場に停めてあったその車はバックを始め、車体を方向転換させ、4車線道路を左折していった。


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