かき氷の女神さま②
「あれれっ!! 彩さんっ!! ここにいたんですか!?
篤郎さんが『オロナミンC』を買ってレジに忘れていったので持ってきたんですよ! ちょうど良かったです! さっき電話した時、彩さんなら、この暑さでアイス1本じゃ足りないだろうなぁ、と思って私の分も入れて買ってきましたよ!
彩さんの『シャビィ』一応2個、と合わせて3個買ってきました! あと、何か『オロナミンC』も篤郎さんが買って忘れていったものを見てたらいいなーと思って3本買ってきました! いいことを思い出したんですよ♪
『オロナミンC』を『シャビィ』に入れて食べると最高においしいんですよー♪『オロナミンCャビィ』です♪」
彩芽は水滴のついている手にぶら下げていた袋を少し持ち上げて微笑んだ。
「あらっ!? 彩芽ちゃん? バイト帰りに?」
あおいも玄関に顔を出した。
「あららっ!! 私の大好物のあおいさんまでいるんじゃないですかー♥ 彩さんの分と思って余分に1個買って来て良かったですね・・」
「・・ということは・・彩はさすがにもう1個で十分だろうから、1個をあおいちゃんが、もう1個を彩芽ちゃんが食べるとして・・」
彩、あおい、彩芽、篤郎の4人分のかき氷『シャビィ』がまさかの展開によって、ここにそろい踏みしたのだ。彩、あおい、篤郎の3人は顔を見合わせて“おぉーっ”と声をあげた。
彩芽は3人の“おぉーっ”の声に合わせて“おぉーっ”のリアクションを笑顔で取った。
彩、あおい、篤郎は彩芽のぶら下げている袋から透けて見えている『オロナミンC』にまじまじと顔を近づけてじっと見た。『シャビィ』が『オロナミンCャビィ』にだと・・!?
・・グレードアップしてさらにおいしくなるだと・・!? 3人はまた顔を見合わせて“うおーっ”と歓喜の声をあげた。
彩芽は状況がまだよく掴めておらず、さすがに3人の喜びようがすごいので、少し驚いているようだ。
「彩芽ちゃん! 君って人は!! 君って人は!! ほんとにありがとう!!」
篤郎は彩芽の両肩をむずっと掴んで揺さぶり感謝の気持ちを表した。
彩芽はいきなり訳も分からず肩を掴まれて揺さぶられ、顔を近づけられ恥ずかしくなり、驚いたように戸惑って視線を逸らし、顔を少し赤くした。
“やるー! 彩芽最高! やるー!”と彩がまたテンション高く言った。あおいも小さく拍手しながら彩芽に感謝の眼差しを向けていた。
「・・ど、どうしたんですか!? な、何か照れますね・・」
彩芽は自分がしたことによって3人がとても喜ぶ姿を見て、思わぬ歓迎を受けてまた顔をほころばせた。
彩芽が開け放していた玄関のドアからは昼下がりの強い日光が差している。
篤郎には彩芽という、額に汗をかきながら、息を弾ませてやって来た“かき氷の女神さま”の笑顔が昼下がりの太陽よりも輝いて見えた。




