かき氷の女神さま①
彩が笑みを浮かべながら、『シャビィ』を一口分のせたへらを篤郎の元に運んでくる。
彩の顔が近づいてくる。何だか恥ずかしく、極力彩の顔に視線を合わせないようにした。彩に食べさせてもらうことに照れがあった。
彩が篤郎の口に運ぶのに合わせて“あ~ん”と口を開けた。あおいにそれを見られているのもなんだか恥ずかしかった。が、暑苦しさから逃れたいという気持ちがそれを上回った。しかし、次の瞬間その暑苦しさも吹き飛んだ。
篤郎の口の中に一口の甘い、ひんやりとしたかき氷が転がりこんで溶け出した。冷たい! おいしい! 最高だ!!
「あー、おいしい、ほんとにおいしい、生き返るー」
「でしょーっ♪ よしよし♪」
[ピンポーン♪]
部屋の呼び出しベルが鳴った。篤郎はフラフラしながらも誰だろうこんな時にと思いながら、一口分の『シャビィ』から得たエネルギーを早速使ってヨイショと立ち上がり、額の汗を拭って玄関のドアを開けた。
するとそこにはコンビニの袋をぶら下げた女の子が一人立っていた。
「・・はぁ、こんにちは、篤郎さん、さっきはどうも・・ふぅ・・。・・それにしても、今日はとんでもなく暑いですね~・・」
「・・あれ、彩芽ちゃん? どうしたの? ・・さっき? ・・?」
篤郎は鈴置彩芽の言葉の意味がよく分からなかった。鈴置彩芽は篤郎がまだ気づいていないと察した。
「・・やっぱり気づいていませんでしたか・・さっき、コンビニに来たじゃないですか? 私、レジしてました。声をかけようと思ったんですけど、篤朗さん、あまりにも慌てている様子で、こっちに全然気付かなかったので、忘れていった『オロナミンC』持ってきましたよ!」
「あーっ! 彩芽っ! もうバイト終わったの? ここに来たの?」
彩が玄関に顔を出し、声をあげた。
鈴置彩芽は同じ大学の1年生だ。




