ゲート
カルロスは魔術師協会本部のゲートに姿を現した。
見慣れた風景、そして大きな負荷から解放された安堵で気が緩み、ガクッと片膝をつく。
助かった……。
そう思いながら辺りをみまわす。
「うーん、残念。呼吸してる」
ニコラスは鼻歌をうたいながら、倒れているディミトリアスを横向きに寝かせた。
「ニコラス先生、師匠は?」
カルロスは肩で息をしながら尋ねた。
クレメンスの姿が見えない。
カルロスは瞬間移動する際に視界の端に見えた光景が気になっていた。
「そういえば居ないねぇ」
ニコラスはのんびり言うと、扉の方を見た。
扉が開き、フランクと担架を持った魔術師たちが現れた。
「遅いなぁ。ディミトリアス老、死んじゃうとこだったよ。あひゃひゃひゃ」
ニコラスはディミトリアスが運ばれるのを確認すると、自ら担架に乗った。
「カルロス先生、気分はどうですか?」
フランクがカルロスのそばにきて尋ねる。
「師匠が……」
カルロスの視界が揺らぐ。
あの時、カルロスは確かに見た。
間違いない。
クレメンスはシールドを張っていた。
「……カルロス先生」
フランクの声がひどく遠くから聞こえる。
フランクに伝えなくてはいけない。
カルロスは何かを言おうとしたが、強烈な眠気に襲われる。
ダメだ。
何も考えられない……。
カルロスは意識を手放した。