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出会い編  作者: 天野音色
1/4

オーガスタスとローフィスの出会い  オーガスタスの証言

オーガスタスとローフィスの初めての出会いは

王立騎士養成学校『教練』の一年の時で

年はお互い14才です。

挿絵(By みてみん)


 その時俺は教練に入学したての一年で、草むらに横に成ってた。

教練の訓練スケジュールがきつくて、『やってられっかよ』

ってサボってたんだ。


風の心地良い良い、青空が広がり晴れ渡る四月の午後で、大木が側に立つ、草丈の高い草原の小高い丘で、俺は草に隠れ、安眠を貪ってた。


茂みの向こうで人の気配がした。

高い草丈が、でも俺をすっぽり隠していたから、見つけられずに過ごせるだろう。そう思い、頭の後ろで腕組んだまま、仰向けに寝転がっていた。


やがて野太い声がした。

「俺の為に(けつ)貸せ。

そしたら…この先いい目見させてやる。

なぁ…?

減るもんじゃ無いだろう?」

どさっ!

「離せ!」

どすっ!

殴る音がし

「…ぅ………!」

呻き声がした。


…それで俺は、やれやれ。と思った。

流石に助け出さなきゃならない様子だ。


のそり。と体を起こし、声の方向に体を乗り出した時だった。

突然視界に、相手の野郎が顎を曝し吹っ飛ぶ様が、飛び込んで来た。


そいつは…ローフィスだ。同じ一年だと言う事は、一目で解った…腹を押さえ、身を起こした。


挿絵(By みてみん)


どうやら押し倒された時、暴れて腹を殴られたらしく…右腕回して腹を庇いながら、前傾したままゆらり…!と立ち上がり、倒れる上級生を、上から覗き込むように覗う。




ローフィスの顔は苦痛に歪んでいたし、倒れた野郎はガタイがそれは、良かった。

多分…三年だろう。

三年は、一・二年の監督生をしていて接点があった。


ともかく…そいつはなかなか起き上がって来ない。

成り(当時ローフィスはそれ程大きく無かった)の割に、なかなかのパンチを放つ奴だ。野郎にケツ狙われる一年としては。


俺は少し感心してローフィスを見つめた。

ようやく…野郎は頭を起こし、首を横に二・三度振り、正気を取り戻す。

がローフィスは、野郎が起き上がるその前に素早く…これにはびっくりした。あんなガタイのでかい男のパンチを腹に喰らっときながら、そりゃ軽やかに。

倒れてる野郎の横に回ると、横っ腹を思い切り蹴り上げた。


がっ!がっ!

二度、三度。

野郎は草の敷き詰められた坂を転がり、ローフィスは追いかけながらも四度、五度と野郎の腹を蹴る。


それが…腹立ちから来る、狂気のような怒りだったら流石の俺も止めに入ったろうが…その激しい蹴りに似合わず、奴の顔は冷静だった。


喧嘩慣れしてるな。こいつ…。

そう…俺は思った。

坂の下でとうとう、俯せに野郎は倒れ、身動きをしない。

ローフィスはやはり腹を右腕で押さえたまま、様子を前屈みに伺う。

野郎が短く呻き、ローフィスは短い吐息を吐くと、屈む身を少し起こし、その場を後にしようとした。


野郎は痛みの為か、小声で呻くようにつぶやいた。

「…覚えてろ…!

俺はお前の、監督生なんだからな……!」


ローフィスは振り向くと、ささやく。

「ああ…。覚えといてやるぜ…!」


そして、草丈の高い草原の坂を登り始める。

途中、腹が痛むのか、くっ!と身を前に折り、足を滑らせそうに成り、俺は思わず…駆け寄った。


黙って奴の肩下に肩を滑り込ませ…そして肩を担ぎ支える。

ローフィスは振り向いたが、俺は奴を見なかった。

奴もすぐ前を、向いた。

普通なら何か言うもんだが、ローフィスは何も、言わなかった。

「見てたのか?」とか「人が悪いな」…そんな事を。

黙って俺の肩を借りたまま、一緒に歩いた。


それで…俺は直感した。

こいつとは…一生付き合える友達に成る。と。


俺達は黙って…丘を上がって行った。

心地良い風が頬を撫でた事を覚えているし…担ぐそいつの肩の温もりに親近感を覚えた。


 奴の宿舎の部屋の扉の前まで…そうして付き合った。

戸を開ける奴を見てようやく…俺は奴の肩の下から自分の肩を、引き抜いた。

そうしてやっと、奴を見る。


痛みはかなり引いた様子で、奴は長身の俺を見上げ、長年の友に声を掛けるみたいに、言った。

「よぉ…」

俺は思わず苦笑した。


同じ一年だと知ってたのか?とか…俺の事を知ってるのか?とかを…聞きもせず。

そして奴に、言った。


「薬草は、持ってんのか?」

ローフィスは気づき、懐を叩いた。

それで俺は頷き、背を向けようとした。

ローフィスはさりげなく言った。


「今夜の夕食で会えるな」


夕食の席で顔を合わせるのは、一年生だけだ。

それでやっぱり…質問は意味が無かったな。

と、質問を口にしなかった自分を褒めた。


 ドアが閉まり…俺は階段を下りながら…奴の部屋は外階段に面し、風が吹きっ晒す二階にあった。


くすくすと、笑っていた。

やつのやり様が心底、気に入って。


それからだ。

奴と俺は、まるで幼馴染みのような口を利き合ったし、同学の奴らも

「お前ら、同郷の馴染みか?」と聞いて来て…俺達は顔を見合わせ、笑ったもんだ。


聞いたらやっぱり奴も長旅をしていて…初対面で相手がどんなだか、直ぐ解るようだったし、付き合い方も知っていた。


俺は…餓鬼の頃奴隷宿舎でしょっ中新入りを迎え…他人だらけの中に居たから、似たようなもんで…。


俺の境遇をふとした事から話したが…奴にやっぱり同情の色は浮かばず、どっちが悲惨な体験をしたかを、競い合って話した。


ただ……奴は真顔で俯いたまま、つぶやいた。

「親父さんもお袋さんも居ないんじゃ、辛いだろう…」


ぽそり。と。

それで俺はいつもの決まり文句

『身軽でいいさ。五月蠅くも煩わしくも無い』

を使わず、本音を言った。


「まぁ…たまにな」

ローフィスは俯き…俺を見ないまま頷いた。


それで俺は…奴は間違い無く俺の親友と呼べる男に成る。

そう…確信し…結局………その、通りに成った。




オーガスタスの境遇については


『忘れ得ぬ出会い(取り戻したもの)』

http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/493775/

にあります。


多分、一生にほぼ無い、男に迫られた場面をオーガスタスに見られ

肩借りた一件以来、ローフィスは秘かに

「オーガスタスが、実はそっち系の男で、友達づきあいしてて

いつかどっかで迫られたらどうしよう?」


と言う懸念が心の片隅に、有り続けたのは確かかも(笑)


けどオーガスタスはアースルーリンド・キャラの、最低でも両刀。

だらけの中、まるっきりノーマルな男で

後にマディアンと婚約します。

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この後のお話は「幼い頃」レイファスの言い分 でお読み頂けます。
物語はレイファス五歳の終わり。に飛びます。


ここでは「伯父さん」として出て来るアイリスが
まだ11だった頃のお話。(短編)
【競作】冷たい雪の降る惨劇 (アイリスの回想)


レイファスの母、アリシャが心配した「アイリスお兄様と息子」
がどうこうなるお話はこちら。(短編)
番外編 レイファスの恋心。





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