表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

明日、

作者: ナガツキ




「明日天気になぁれ♪」

窓の外から子供の元気な声が聞こえる。 羨ましいと喉からでそうになる本音をつばと共に呑み込み、 眩しいなとごまかしながらカーテンを閉めた。

まるで自分の未来のように閉ざされた白い部屋の中には、 俺以外誰もいない。 ようもなくテレビをつけては消してを繰り返し、 暇だ。 と呪文のようにつぶやいた。 ふと横をみれば飾られている花が不安そうに頭を下げて、 俺の顔を覗き込む。

馬鹿だな、 俺。 卒業式までもう二ヶ月もないっつうのに、 こんなところにひとりでいて。 大学にいけないのはわかってんだから、 せめて高校くらいまともに卒業しようと思ってたのになぁ…。

ため息と共に思い出されるのは、 痛々しい表情を浮かべる家族の顔。 日に日にやせ細っていく自分の身体をみると、 もう先も長くないことは予想できるが、 そんな家族をみると不安と寂しさがこみ上げ、 締め付けられるような感覚に陥る。



生きたい。



そう思うたび、それは叶わないことだと思い知らされる。 じわりと目に熱いものが浮かぶ。 喉の中はカラカラだった。

せめて…。 せめて、 こうなる前に気持ちを伝えればよかった。

強く握る右手の先に見えるのは、 こないだ仲のいい友達が持ってきたクラスの寄せ書きが飾られている。 ありきたりな言葉から思わず涙しそうな言葉など色々なものが詰まっているそれの中に、 俺がずっと片想いしている人の文字がある。



『 体育祭で大縄跳びを跳び終わったあと、 捻挫で参加できなかった私のところまで走ってきてくれて、 ハイタッチしてくれてありがとう。 すごく嬉しかった。今度は私がいくね。

入院、 辛いと思うけど頑張って。鈴原 梨乃 』



何度も読み返したその文を眺め、俺は心の中、さっきの子供の声を思い出しながらそっと願いをつぶやく。





明日、天気になれ。

明日、君よ来い。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 短編だけど、とっても面白かったです。 勝手ながら評価もさせていただきました。 すいません。 これからもがんばってください。
[一言] 読ませていただきました(^^) 感想を言葉にするのが難しいのですが、 切ない中にも温かさがある作品だなと思いました。 大縄跳びの時のハイタッチのエピソードがステキだなーと思い、胸が熱くな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ