下がった順位
岡野は勢い良く走り出すが、2位の選手との差は縮まらない。3位の岡野は4位の1組、5位の2組とどんぐりの背比べで走っている。なんとか3位を保ったまま可奈にバトンが渡ったが、1組の見事なバトンの連携プレーで順位が入れ替わってしまった。
現在、3組、5組、1組、4組、2組という順である。
4位に落ちた可奈はせめてビリにはなるまいと必死の形相で走った。だが、運が悪いとしか言いようがなく、現在5位である2組は3順目の走者に一番早い女子を配置してきていた。可奈はカーブの外側からプレッシャーを掛けられている。
「可奈―!!踏ん張れー!」
4組はこれでもかというほどの声援を送り続けたが、やはり2組の女子に抜かれてしまった。そして、ついに5位。
可奈と4位の差が開いて行く中、4順目の走者たちはバトンを受けるためにテイクオーバーゾーンに立ちはじめた。前を走る4位と可奈との差は3メートルほど。すでに2組の女子は3位の1組を抜いており、またしても順位が入れ替わっていた。
相変わらずぶっちぎりの3組。継いで5組、2組、1組、そして最後に待つ菅原は5位でバトンを受け取った。
最後尾でスタートした菅原は、獲物を狙うチーターのごとく走り出した。あっという間に距離を詰める。3メートルほどもあった差は、もうあと一歩で手が届きそうである。今や3位4位5位の3人はほとんど差がなく、塊になって走っていた。
私は菅原のバトンを受けるべく、テイクオーバーゾーンでスタンバイした。1位、2位の走者が次々とバトンを受けて走り去っていく中、3位の1組、4位の2組と5位の菅原が足一つ分ほどの差で入ってきた。
―――――パシッ
力強いバトンの感触。
菅原の手から渡ったバトンを握り締めると、体中に不思議な力が漲るのがわかった。これがアドレナリンというのだろうか。まるで、全身の細胞がたった今活性化したみたいにゾクゾクする。
ビリでバトンを受けるなんて最悪。
でもなんて最高なの。だって一番の見せ所だもの。




