金書庫 焚き火の夜
金書庫の前でレムとゼン、そして柊、澪は再会を果たした。腕輪でお互いの確認はできたはずなのに、双方それをすることはなかった。カルナで苦難を乗り越えた四人にとって、それは不要な事でしかなかった。
「柊くん! 澪さん!」 「おう」
柊が言う前に、レムが澪に抱きついた。
「よかった……! 無事で……!」
澪が少し驚いた顔をした。 それから、レムの背中にそっと手を置いた。
「ええ。心配かけたわね」 「心配したよ! ヴェルナーさんから連絡来て、澪さんが倒れたって聞いて……」 「もう大丈夫」
澪が静かに言った。レムがようやく離れた。目が赤かった。
ゼンが壁に背を預けて、腕を組んでいた。
「遅かったな」 「お前らこそ、先に来てたのか」 「一応な」
ゼンはちらりと澪を見た。
「……立ってるじゃん。よかった」
それだけだった。でも、声が少しだけ柔らかかった。
部屋の奥には、もう二人がいた。ブラスとダリ。レムが都市の混乱で負傷した夜、物陰から駆け寄ってレムたちを逃してくれた剣士たちだった。その後、タウを含めた一行と共に、ここまで来たのだという。
柊は、初対面の二人を見た。大柄な剣士と、気配を消す剣士。レムから手紙で名前だけは聞いていた。
ブラスが、軽く顎を引いた。「話は聞いている」
ダリは、ただ静かに頷いた。それだけで、挨拶は終わっていた。
タウが入ってきた。レムの横に立った。
全員が揃っていた。 しばらく、誰も何も言わなかった。 久しぶりに同じ部屋にいる。それだけで、空気が少しだけ変わった。
「……なぁ」ゼンが言った。 「なに」柊が返す。 「お前ら、ここまで来たら夫婦って設定いらなくない?」
部屋が、静かになった。
レムが「あっ」という顔をした。 ブラスは表情を変えなかった。ダリも変えなかった。 タウが、そっとレムの袖を引いた。澪が、少しだけうつむいた。
柊はゼンを見た。
「人の家庭に口出しすんな」
ゼンが目を丸くした。レムが口元を押さえた。
「……家庭って言った」 「言ってない」 「言った」 「聞こえなかった」
澪はまだうつむいていた。でも、耳の端が少し赤かった。
そこへ、奥の扉が開いた。 男が出てきた。二十代後半か。少し伸びた髪。眼鏡。サイズの大きなコートを着ている。 手にメモを持っていた。顔立ちは整っているが、それに気づいていない顔をしていた。
「来たか」低い声だった。
柊が言った。「内山先生に言われて」 「知ってる」カイはメモを見たまま言った。
「では」カイが顔を上げた。「七塔の現状から話す」




