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ようこそ、最前線の地獄(職場)へ。 私、リナ8歳です ~軍師は囁き、世界は躍りだす~  作者: 輝夜
第十一章:『一年という名の礎』

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茶話会:『お姉ちゃんとお兄ちゃん』230

 

 聖リリアン孤児院の昼下がりは、穏やかな陽光と子供たちの賑やかな声で満ちていた。

 その喧騒の中心、中庭の大きな樫の木の下で、小さな二つの影が何やら真剣な顔つきで向かい合っている。アンナとトムだ。


「……だからね!」


 アンナが、ぷくっと頬を膨らませて力説していた。その小さな手は腰に当てられ、すっかりいっちょまえのお姉さん気取りだ。


「リナお姉ちゃんは、本当は魔法使いなんだよ! 悪い人たちに捕まっても、”ぱっ”てやって、”きらきらー”ってやっつけて、もうすぐここに帰ってくるんだから!」


 彼女の大きな瞳は、絶対の確信に満ちてきらきらと輝いている。ヴェネーリアでリナが見せた、あの青白い光の奇跡。それはアンナの心の中で、おとぎ話の魔法のように、鮮やかな記憶となって焼き付いていた。


 その、あまりに突飛な「リナお姉ちゃん魔法使い説」に、トムは腕を組んで「うーん」と唸った。


「魔法使い、かぁ……。そりゃ、すごいけどさ」

 彼は少しだけ悔しそうに唇を尖らせる。

「でも、俺だって! 大きくなったら、リナ姉ちゃんが読んでくれた絵本に出てくるみたいな、すっごく強い騎士になるんだ! こうやって、『えいっ!』ってやれば、悪い竜だってやっつけられるんだぞ!」


 トムは拾った木の枝をぶん、と振り回した。風を切る音は頼りないが、その顔つきだけは、国を守る勇敢な騎士そのものだ。


「だめー!」

 アンナが、きゃん、と甲高い声を上げた。

「トム兄ちゃんは、まだ小さいからだめ! リナお姉ちゃんがいない間は、アンナがみんなを守るの!」

「なんだとー! 俺の方がお兄ちゃんだぞ!」

「でも、リナお姉ちゃんが言ってたもん! 『アンナは強い子だから、みんなのことお願いね』って!」


 もちろん、リナがそんなことを言った覚えはない。だが、アンナの中では既に、それは揺るぎない真実となっていた。


 二人のヒートアップしていく口論を、少し離れた場所で洗濯物を干していたシスター・カリンが、微笑ましそうに見守っている。

(あらあら。二人とも、本当にリナのことが大好きなのね)


 やがて、言い争いに疲れた二人は、ふと顔を見合わせた。

 そして、どちらからともなく、ふふっと笑い出す。


「……じゃあさ」

 トムが、少し照れくさそうに提案した。

「リナ姉ちゃんが帰ってきたら、俺が騎士になって悪い奴らを追い払って、アンナが魔法でお菓子をいーっぱい出すってのはどうだ?」

「うん! それ、いい!」


 アンナの顔が、ぱあっと輝く。

 二人は指切りげんまんをすると、まだ見ぬ未来の、最高に素敵な共同作業に胸を躍らせていた。


 その頃、馬車の中では、リナが大きなくしゃみをした。


『茶話会へようこそ』


 書籍化作業に伴い、本編の更新をお休みさせていただいております。

 この期間、不定期に『茶話会』と銘打った短いお話を更新していこうと思います。


 何気ない?日常を切り取ったショートストーリーです。


 ささやかな茶話会を、どうぞお楽しみください。


 うしろの数字は、およその時系列的に対象となる話数になります。目安という事で。


輝夜かぐやより

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― 新着の感想 ―
無邪気な弟妹たちは優しく包んでいたいよね。 リナはくしゃみをしていたらしいけれど、これから寒くなります。 輝夜さんも気を付けて。
ありがたいけど 本当に無理しないでくださいね 今見て プレゼント貰った気分です
 輝夜さん、こんにちは。 「ようこそ、最前線の地獄(職場)へ。 私、リナ8歳です 茶話会:『お姉ちゃんとお兄ちゃん』230」拝読致しました。  書籍化作業のため、しばらく投稿はない、と言いましたが、…
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