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第三話 反逆者たち

『ヴィル・フォリティス』

カンフリード大陸各地に拠点を持っていて、イーウェスタを含めた迫害を受けている人々を救うと言う事を目的とした活動を行っている……と言うのは、表向きの活動であり、実際の活動としては、リベルディア連邦に潜入させた諜報員による機密文書の奪取や、ヴィアンティカの魔法の研究施設の爆破や、研究員の拉致などの犯罪行為を行っており、西や東からは反逆組織として指名手配がされている。



カイははしごを降りて、地下に降りて行く。


「やっと来たかカイ!」


基地の研究室に入ると、ガランや他のヴィル・フォリティスのメンバー達もカイの方を向く。


「うん、ガラン。決まったよ」


「へぇ、そいつは気になる。カイは手先が良いからな。東の方か?」


そう言ってカイとガランの方に近づいて来た男性に、カイ達は目を向ける。


「ベントスさん、久しぶりです。……えっと、所属先は東ではないです」


ベントス・ノロジア。西出身のボサボサの緑の髪に白衣を着た姿が特徴の男で、ここの研究者達の統括も行っている。


「なら、西か?あの国はやめといた方がいいぜ?魔法の実力が無けりゃ一生───」


「……いや、中央です。中央の北方警備隊に配属になりました」


そのカイの言葉を聞いてベントスは黙る。


「そりゃ、本当なのか?」


「はい、僕は誰に言われようともこの決断を絶対に曲げる事は無いです」


「カイ……死ぬぞ?」


「……そんな顔するなよガラン。僕は絶対に死ぬつもりは無い」


「そんな事言ったって───」


「お前達、いつまで私を待たせるつもりだ」


ガランの声を遮って基地内に皺がれた声が響く。

声の方向には、古びたローブに身を包み、片手に杖を突いた鋭い目つきの黒髪の老人が立っていた。


「ボス、申し訳ねぇ。話し込んでたら長くなっちまった」


ベントスが頭を下げる。


「……まぁいい。ただ、この老いぼれた体に鞭打って中央都市から列車で来たんだ。少しは労ってくれ」


そう言って老人は一つの椅子に腰掛ける。


「3年ぶりだろうか。カイにガラン。改めて名乗ろう。私は『ヴィル・フォリティス』創設者、エレクティノ・アドムンドムだ」


「僕らの名前覚えていたんですか?」


「ああ、記憶力は歳をとっても衰えない。これが魔力の無い私の唯一の特技だ」


少し誇らしげに言うエレクティノの言葉に、この基地内に微妙な空気が漂う。


「おっと、話が逸れた。カイ、君は中央への所属を望んだったな。」


「えっ?はい」 


「何故だ?」


突然の問い詰めにカイは動揺しつつも息を整え、エレクティノに向き直る。


「えっと、何故と言うのは?」


「君は自分が北方警備隊に配属される事も、それによって命の危険がある事も分かっていた筈だ。では何故命を懸けてまで中央に所属する事を望んだ?」


「……この世界中にいる、イーウェスタ達を救うた───」


「私の前で取り繕う必要はない。私は綺麗事が嫌いだ。本音で話せ」


「……わかりました。僕は気に食わない……いや、許せないんです。東の連中も、西の連中も、僕らの事を知ろうともせず、劣ってるとみなし、差別する。そんな事、許せる訳がない!」


カイ声だけが、この静かな研究室に響く。


「……確かに、この組織に入って、ベントスさん達と話したりして、良い人もいると思った。けど、今世界を動かしている中央議会の連中は違う……だから、僕が変えるんだ!この世界を!……じゃなきゃ、おかしいだろ」

 

最後のカイ言葉には嗚咽すら混じっていた。


エレクティノはそのまま目を閉じ、少し思考するように沈黙する。

そして、考えが纏ったのか、目を開け、口を開いた。


「……カイ・シャーガリア。君の気持ちは分かった。いいだろう。変えたいと願うならば、止めたりはしない。おい、ベントス。あれを持ってくるんだ」


「……おい、良いのかよボス」


「ああ、構わない」


「……分かったよ」


ベントスが急いで走って取ってきたのは一つの銃だった。エレクティノは銃を受け取ると、再び考え込むように動きを止め、決意したようにカイの前へと出した。


「これを君に託す」


「ちょ、ちょっと待ってください!これって魔銃ですよね!?」


カイが取り乱しながら口を開く。


「……ああ、君も制作に関わっていたから知っているだろう。この『ヴィル・フォリティス』が禁忌を犯してまで制作した、携帯型魔導装置『ネメシスver.5』、通称魔銃だ。幾らか数はあるが貴重だから、大切に使うんだ」


「魔銃は知ってます!何で僕に託すんですか!?」


「これは君の信念を叶えるのにもきっと役に立つ。しかし、己の力を過信し過ぎてはならない」


「話を聞いてください!」


カイがエレクティノの言葉を遮る。


「……君には頼れる力も、魔力も、未来も持っている。だが、私には、魔力も、この体では未来もない。だから、誰かに託さないといけないんだ」


そう言ってエレクティノは黒髪を揺らし、おぼつかない足で立ち上がり、カイの前まで来て、魔銃を手に取らせる。


「だから頼む。これで変えるんだ……この世歪んだ世界を、この私を虐げて来た!この世界を!」


その狂気に満ちた黒い瞳には、涙すら流れていた。


――――――


エレクティノが去った基地内に沈黙が訪れる。


カイはただ、彼から託された魔銃を見つめていた。


「……何で僕に託したんですかね。ベントスさんじゃなくて」


「俺は銃の開発は出来ても扱うのが得意じゃねぇからな。使える奴に渡さないと意味がない。あと……いや、何でもねぇ」


「……そうですか。では、僕はそろそろ帰りますね。ガランはどうする?」


「……俺も帰るぜ」


「……そうか。ならお前ら、最後に言わせてくれ」


カイとガランをベントスは引き止める。


「俺はお前らに感謝してんだ。拉致されてここに連れられてきた時は最悪かと思ったが、お前達が俺と言葉を交わしてくれた。それだけでも俺はありがたかったんだ。……だから、また、ここで語り合おうぜ」


「……はい!また戻ってきます」


「勿論俺も戻って来ます!」


カイとガランの力強い返事にベントスは笑みを浮かべる。


「おう!そうこなくっちゃな!」


カイとガランは他のメンバーにも挨拶をして、『ヴィル・フォリティス』の基地を入り口とは違う場所から出て、孤児院への道を歩いていた。


「……やっぱすげえな、カイは」


「……そうかな」


「あぁ、凄い。俺には、お前みたいな力も、信念も何も無い。何も……無いんだ……」


そのガランの横顔には、笑顔が浮かんでいなかった。



補足説明:名前のパターン


東出身: 日本風の名前+日本風の名字の逆読み

(例)ヒロシ・ダマヤ(山田)


西出身:西洋風の名前。

(例)エレクティノ・アドムンドム


イーウェスタ(混血)

母:西出身、父:東出身

西洋風の名前+日本風の名字の逆読み

(例) ガラン・シヤハ(林)


母:東出身、父:西出身

日本風の名前+西洋風の名字

(例)タロウ・ペルシクム


40PVありがとうございます!

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