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第二十話 中央都市

めっちゃ久しぶりです。気づいたら1ヶ月経ってました。

あとは、600PVありがとうございます!


列車がガタンゴトンと揺れる。変わり映えのない平野の景色が移り変わりながら、列車は走る。


 「ソルミナス教……確かヴィアンティカ王国の国教だよね」


カイはアルドの服にある太陽の刺繍が目に入る。


(……確か、ソルミナス教の神、太陽神ソルミナスを表しているんだったっけ)


「あぁ。お前も孤児院出身なら、色々詳しいんじゃないのか?」


「いや、僕の孤児院の院長はリベルディアの方だから、そう言うのはなかったよ」


カイは「神?居ないわよそんなの」と言った孤児院長のハルカ・カナタを思い出す。

その時のハルカは何か嫌な事を思い出したようは顔をしていた。


「そうか。リベルディアの人間は大体が無信仰だからな……」


アルドはうーんと唸る。


「……と言うか、国の宗教勢力に気をつけろって言っても、どうしようもないんじゃない?」

 

中央カンフリードの中にだって、ちょっと道を歩けば一つくらいは教会がある。

教会に唾を吐き捨てているリベルディア人や、それにブチ切れて魔法を撃ってる信仰者なんて日常茶飯事だ。


「ああ、別に()()のソルミナス教信者は……ちょっと面倒なくらいだから大して問題ない……ない?」


「自信持ってよ」


自信のないアルドの返答にカイは溜息を吐く。


「とにかくだ!気をつけなきゃならならねぇのは、普通のソルミナス教とは別のソルミナス教の『自然派』だ!」


アルドがビシィ!とカイに人差し指を向ける。その顔には何か思い出したのか冷や汗が浮かんでいる。


「自然派……って、何?」


少し考え込んだ後、記憶に無いという結論を出したカイは、冷や汗を流すアルドの方に向き直る。

アルドは一呼吸置いた後、言い放った。


「ヤバい奴らだ」


「それだけじゃ分からないんだけど」


「とにかく頭のおかしい連中だ。杖を使わずに魔法を使ったら発狂して追い回して来たり、天候を変えた魔導士をぶち殺したり……」


アルドは実体験でもあるのか、身震いしている。


「前半はともかく、後半に関してはそもそも天候を変えれるのも十分おかしいんだけど……」


さらっと天候を変えれる事に、改めて魔法の異常さをカイは感じる。


「馬鹿言え!天候変化はヴィアンティカの農耕には必須だぞ!?」


「そ、そうなんだ……で、その肝心の自然派って何?」


アルドの圧に気圧(けお)され、これ以上天候の話をするのは面倒だと判断したカイは、話を本題に戻す。


「自然派……自然の事象は全て神の生み出した物、それには抗うなって考え方だ。それに付け加えて、自然派の教祖フィーデス家の祖先が書き記した『杖の伝説』に従って、杖以外を使って魔法を使う事は邪道としてる……って兄貴が言ってた」


「へぇ……」


カイは今のアルドの話を咀嚼する。


(自然派に杖の伝説に……って)


「アルドってお兄さんいたの!?」


「そっちかよ!?」


最後の情報に全部持って行かれたカイは、自然派の話が頭からぶっ飛んだ。


「はぁ……確かにお前には行ってなかったなぁ」


アルドは頭を掻きながら溜息を吐く。


「俺が北方警備隊に入った理由も、兄貴の勧めがあったからだ。でも、俺は一年間だけの入隊だな」


「……アルド、それお兄さんに嵌められてるんじゃないの?」


カイが心配する様に尋ねる。


「その事リクトにも言われたなぁ……兄貴は他の貴族と違ってそんな奴じゃねぇと思うんだが……この杖も剣も、持たせてくれたのは兄貴だぜ?」


アルドは鞘から抜いた剣と杖をそれぞれの手に持って掲げる。

杖に付いている魔宝石は(あか)く輝いており、宝石体が透き通っている見える事から純度の高い結晶である事が分かる。


「こっちの剣は……確か、プリスムメタルで出来た剣だ!魔法もよく通すぜ!」


「……プリスムメタルってこの世界で最高硬度の金属の?」


カイはアルドの手に握られた白銀に輝く剣身を見つめる。


「ああ!見てみるか?」


「う、うん」


カイはアルドから軽く渡された剣を丁寧に受け取って眺める。


(魔銃の銃身に貴重な硬度の高い金属を使ったけど……それ以上だ……)


「凄い……」


カイの口から思わず感嘆の声が漏れた。


「こんな貴重な金属、よく手に入ったね」


カイはアルドに剣を返す。


「ハッハッハ!何てったって、俺のテメラリアス家は王派閥の筆頭と言ってもいいからな!金は問題ねぇ!」


剣をしまったアルドは腕を組んでふふん、と自慢げに笑う。


「とにかく、これを俺に預けたのは兄貴だ。だから俺は兄貴を信じてぇ」


アルドの顔に悲観しているような様子はない。これ以上顔も知らないアルドの兄を考えても仕方ないので、カイは話を切り上げる。


「分かったよ。それよりもさっき遮っちゃったソルミナス教の話の続き、聞かせてくれる?」


「おう、勿論だ……って言いたいけど、もう見えてきたぜ」


外へと目線を向けるアルドに釣られてカイも外の景色を見れば、街が見えて来ていた。


カイは窓から身を乗り出して街を見据える。


「あれが、中央都市『チェントルム』……」


「カイ、俺出口の扉の前で待っとくからな!」


「気が早すぎないアルド!?」


振り返れば、アルドが今回の北方の調査で手に入った魔法結晶の袋を持って立ち上がり、列車の個室から出ようとしていた。


「何事も早い方がいいじゃねぇか!」


アルドはカイに背を向ける。


「ああ、そう言えばソルミナス教の自然派の事だが、次の教皇がヤベェくらい頭おかしい奴だから気をつけろよ!会う事ないだろうけど!」


最後にアルドはそう言って個室を飛び出した。


「ヤバい奴……」


カイは、「まぁ自然派の時点で全員頭ヤバいけどなー!」と言うアルドの声が聞こえた気がした。


――――――


中央都市『チェントルム』は大きく分けて三つに分かれている。


西のヴィアンティカ王国の地区、東のリベルディア連邦の地区、そしてその二国の交わる中央地区だ。

この都市は、世界の縮図と言っても過言ではないだろう。


二人は、中央地区を目指して、西の地区『ウェスタ』を歩く。


レンガ造りの建物と魔法灯が左右に並ぶ道をカイはフード越しに見上げる。


「凄いね。これ本当に全部レンガで出来てるんだ」


「ああ、よく分からんが凄いだろ!」


カイは自慢気なアルドに苦笑しつつ自分の記憶を掘り起こす。


「確か魔力結晶を核にして、建物の強度を保ってるんだっけ……」


レンガを形成している土も、当然魔法によって生み出された物だ。そして魔力を込めると固まるという性質を利用して、魔力を内に秘めている魔力結晶から魔力を流し続ける事により、建設の高速化を可能にした。


「その為にも、この災厄獣(カタストラ)から手に入れた大きい魔力結晶が必要になってくる訳か……」


「……そこの所はよく分からんが、それよりも何でお前はフード被ってるんだ?」


アルドは訝しげな視線をカイに向ける。


「……混血(イーウェスタ)の僕と一緒に歩いてたら、アルドだって嫌な目で見られるでしょ?」


アルドはその言葉に少しムッとしたような顔をする。


「お前はそれでいいのか?カイ」


カイはギュッとフードのついた外套を握る。


「……良くない。フードを被る(こんな事)なんてしたいとは思わないよ」


「だったら外せ!」


アルドはカイの被ったフードを勢いよく外した。

灰色の髪と、黒と黄のオッドアイが外へ晒される。カイは唐突な出来事に硬直する。


「何悩んでんだ!いつもは頑固のくせにこんな時だけウジウジしやがって!」


「お前には度胸が足りねぇんだ!信念と目的を持ってるくせに、それを達成しようとする、貫き通そうとする度胸が!」


周囲の人々が何だ何だと二人に視線を集める。その中には当然カイ(混血)への侮蔑の視線も混じっている。


「アルド……」


アルドの怒った姿を見るのを初めてみるカイは少し戸惑っていた。


「胸張れ!堂々としろ!お前は、世界を変えたいんだろ?」


カイの胸に拳を置くアルドの顔には既に怒りはなく、優しげな笑みが浮かんでいる。


その顔に、カイは親友のガランの顔が重なった。


「……ははっ」


「……ッ!何がおかしいんだよ。恥ずかしくなるからやめろよ」


「ごめん、僕の友達に君が似てたから」


少し照れるアルドにカイは笑みを浮かべながら言う。


「へぇ、カイの友達って言うなら、会ってみてぇな。また紹介してくれよ!」


「勿論!それに、アルドも仲間よりも前に、大事な友達だよ!」


「ハッ!なんか照れ臭ぇが、やっといつもに戻ったな!さっさと行くぞ!カイ!」


「うん、行こう!アルド!」


カイ達は中央地区へと向けて走り出す。

カイはアルドの背を追う。自分よりも大きい背だ。


(きっと僕はまたアルドに……いやアルド達に助けられて、迷惑をかける。それでも、僕は進みたい!)


カイはアルドの隣に並び、顔を見合って笑い合う。


「これからもよろしく、アルド」


「ああ、任せとけ!」






その走り去っていくカイ達の後を追う二人のフードの人物と、背を向け、銀色の髪を靡かせながら歩き出す少年が一人。


「……ここにいたんだ、(ここにいたのか、)カイ(シャーガリア)


フードの少女は少し楽しげに、銀髪の少年は忌々しげに呟いた。





これからは週一投稿目指していきます。

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