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3/5

狩り班の小さな対立

「お前などいらん!」


「は!?ふざけるな!」


 ――開口一番、それだった。

 夕焼けの中で繰り広げられる、壮絶な大ゲンカ。俺は、ろ過班から戻ってきてすぐに目撃したのだった。


 「やべぇ、狩り班、完全に内部分裂してる……」


 ケニアのマサイ戦士っぽいムワリムと、アメリカの筋肉ゴリラ・ケビンが、睨み合ってる。


 いや、お前ら……どっちも明らかに戦闘民族じゃん。争ったら周囲の人間が死ぬパターンだよそれ。


「言っておくが!私は狩りに関しては誰にも負けん!あんたみたいに“ぶっぱなす”だけのやり方は非効率だ!」


「は?あんたの槍投げて外した数、何本だった?俺はちゃんと仕留めてるぜ。しかも――誰もケガさせてない!」


「結果だけで語るなァ!!」


「どっちも正論っぽいのに、口が悪すぎて台無しだなぁ……」

 と呟くのは、涌井翔悟。彼は隅っこで草むしりしてる(現実逃避か?)。


 そのとき、エマ・ジラールが俺の肩を叩いた。


「アマノ、あんたなら止められるでしょ?バカっぽいけど、仲裁向きな空気あるよ」

 ……褒めてるのかけなしてるのか分からん。


 とはいえ、このまま喧嘩が続けば、せっかく作った火も水も、全部無駄になる。


 俺は深呼吸して、ケビンとムワリムの間に割って入った。


「はいはいはいはい、2人とも一回落ち着こうか。てか、どっちもすごい! もうそれでいいじゃん?」


「こいつはなんもすごくないわ!」

「こいつは全然すごくないわ!」


(ここだけ意気投合しやがって……!)


「……はい、犬か猿か知んないけど、今から“チーム狩り”に変更します!」


「チーム……狩り?」

 とケビン。


 俺は地面に落ちている小石を拾った。


「今からじゃんけんみたいな方法で、2人をキャプテンにしてチーム分けします。そして今日最後の狩りは、**“どっちのチームがより多くの食料を持ち帰るか勝負”**です!」


「勝負なら……乗ろう」

 ケビンが腕を組む。


「よかろう。私のチームが負けるはずがない」

 ムワリムもまんざらじゃなさそうだ。


 こうして、8対8の国籍シャッフルのチーム戦・“狩りバトル”が始まった。


 ※ちなみに俺と涌井っちは審判役。つまり狩りはしない。やったぜ(本音)。


 最終的に、ケビンチームがウサギ3匹、ムワリムチームが巨大な鳥っぽいやつ1羽を持ち帰った。


 ……勝敗?

 「もうどっちもすげぇ」ってことで暫定引き分けにした。


 火の周りで肉が焼ける匂いが立ちのぼるころ、みんなの顔から険しさが抜けていた。


「……仲良くは、ない。だが、狩りは悪くなかった」

「ま、チーム組んだら意外と動きやすかったよな」


 お互いぶっきらぼうに言いながらも、肩を並べて焼き肉食ってる2人。

 うん、俺の仲裁、ナイスだったかもしれん。


 こうして――18人の共同生活、ほんの少しだけ軌道に乗り始めた。


 


 ……ただし。


「やばい……明日はトイレ班とかできそうだな……」


 現実って、ほんと、ファンタジーじゃねぇなあ。

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