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何時も私に優しい彼が今日、部屋で首を吊って亡くなっていた。

作者: 七瀬




何時も私に優しい彼が今日、部屋で首を吊って亡くなっていた。




昨日の夜、二人で会っていた時の彼は何時もの私が知っている彼だった。

私に向ける彼の眼差しは優しく、そんな彼に私は何時も癒されていたわ。

何気ない彼のジョークに私は笑っていたし、私の手を握ってきた彼の手の

温もりを私は肌で感じていた。

最後に私の住むマンションの前で彼は優しく私にキスをして、

“また明日、会おうね” と彼に一言いわれてその日は別れたわ。

私は彼が何かおかしいところも感じなかったし、いつもの彼に感じていたの。

そんな彼がまさか? あんな事になるなんて、、、!?




 *




私は次の日の夕方、仕事帰りに彼から渡されていた部屋の合鍵でそっと

部屋に入り、彼の為に晩ご飯を作って彼を待つはずだった。

でも部屋に入ると? 部屋の真ん中で彼が首を吊って亡くなっていたの。

さすがに彼の亡くなった姿を見て! 驚きと悲しみが一気に込み上げてきたわ。

涙が勝手に溢れてきて、私はその場で崩れ落ちていたの。

もうどれぐらい泣いたのだろう。

私が彼の部屋に来るときは、外はまだ明るかったのに、、、。

既に外は真っ暗になっていた。

その後、私は彼の部屋の電気を付けて冷静になり直ぐに警察に電話をしたわ。

私が警察に電話をして10分ほどで警察が部屋に入ってきて私はいろいろ

彼の事を警察に聞かれる事になったのだけど......。

部屋の隅に彼が書いた遺書があり、彼は自殺をしたと結論づいたの。

その遺書の中には、彼が経営していた会社が赤字続きで火の車状態だった

事や多額の借金をして毎日、取り立て屋からお金を返せと言われていた事。

それに彼の親や兄弟、彼の仲がいい同僚にまでお金を借りていた事も書かれ

ていて、彼はその人達に感謝の気持ちと迷惑をかけてしまった事への謝罪が

書かれていた。

でも、会社の経営は一向に回復せず、

“もう首を吊って死ぬしかないと彼は本気で想っていた事も書かれていたわ。”





・・・もしそうだとしたら?

“何故、彼は私に一度も相談をしてくれなかったのかな?”

彼が亡くなる最後まで、彼は何時もの私の知ってる優しい彼だった。

本当は私は彼の事を何も知らなかったのかもしれない!

何時も優しい彼にただただ私は癒されていて、頼りにしていただけ。

彼の悩みや苦しんでいた事も何も私は知らなかった。

“首を吊って亡くなろうと思うまで、彼は私に頼る事をしてくれなかった。”

そんなに苦しんでいたなんて私だけが知らなかったのよ。

会社が赤字続きで、倒産寸前だったなんて何も知らなかった。

多額の借金で取り立て屋に必要以上に取り立てられていた事も知らなかった。

彼の苦しみも心の痛みも何も、、、。


“じゃあ、私は彼の何を知っていたのだろう。”


私の前で居る彼は何時も優しく私に対して笑顔でいた事。

たまにジョークを私に言って笑わせてくれた事。

私の事をいつも気遣って、私が傷つけないようにしてくれていた事。

なんでも行動で証明してくれた事。

嘘をつかないトコロ。

正直なところ。

全部ぜんぶ、私はそんな彼が大好きだったのに、、、!



“でも? 私の知っている彼は本当の彼じゃなかったもしれない。”


本当の彼は何処にあったのだろう。

私の知っている彼はもうここには居ない!

もう一度! 彼にまた会えるなら、もう私は彼を失いたくない!

彼の為に彼の苦悩も悩みも一緒に背負って二人で乗り越えていけたのに!

多額の借金があるなら、私も一緒にお金を返していたわ!

お金がある彼が好きだった訳じゃない、彼の中身が私は好きだったの!


だから、“もう一度だけ! 私の所に返ってきて。 ”


最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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