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変わらない風景

仕事帰りに、欲しいものがひとつだけあったから、スーパーに寄った。


土曜日の夕方のスーパーは、いろんな人であふれていた。

流行の洋服を着て友達と話しながら楽しそうに歩く若い女の子。お母さんにお菓子を買っていいか必死になって聞いている小さな男の子。お酒の6缶パックを片手にぼんやりレジ前に立っているおじさま。ひとつひとつの商品を相談しながらかごに入れていく老夫婦。


そんな人達をながめながら、店内をゆっくりと歩いていてふっと思った。私の心の中が大荒れで突然泣きたい気分がしょっちゅう襲ってきているなんて、きっと誰も気づかないだろう。私はこのいつもの風景を構成しているただの一人にしか見えないだろう。


同時に、私も気づかない。もし、この人達の中に、失恋して自分を消してしまいたいくらい悲しんでる人がいたとしても。仕事の失敗で自分を責めて、いたたまれない気持ちを抱えて立っている人がいても。何かを失くしてその喪失感に足元が崩れそうな思いをしながら歩いているのだとしても。


なんてことのない風景を、そういう人達が構成しているのかもしれない。涙にくれて閉じ籠ることを選ばなかった人が。怒りを他者にぶつけて傷つける道を踏みとどまった人が。何でもない顔をして、このありふれた風景を構成してくれているのかもしれない。


そう思ったら安心して、また少し涙が出そうになったけど、商品をひとつ手にとって出来るだけ何でもない顔をして、レジに向かった。


ありふれた、変わらない風景のなかで。

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