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いつか見た月
夜中に大雨が降って、雷が鳴って
ざわざわしていた夜に、眠れなくてベランダに出たら
雲に閉ざされた空の一角の、ぼんやりと明るい場所に
月が見えたことがある。
雨粒が時々頬に当たり、雷の音は聞こえているのに
見上げた空の、わずかな雲の切れ間の向こうにある月は
地上の騒ぎなんかまるで知らない顔をして
静かに輝いていた。
あの時の不思議な光景を、じっと見上げていた私が
どんな気持ちだったのかは、あまりよく思い出せないのだけど
中秋の名月なんて言葉を聞いて
何故かあの時の月を思い出してしまった。
嵐みたいな夜に
いつもと変わらない静けさで
闇を照らしていた月を。




