131/150
知らない幸せ
小アジの南蛮漬けを作った
小さなアジの下処理を丁寧にやっていった
何匹も何匹も
頭を落として、ぜいごをとって、内臓をとつて
きれいに洗って、水気をとって
軽く塩コショウして、片栗粉をまぶして
温めた油の中に、ひとつずつ入れていく
じゅわじゅわと揚がっていく、小さなアジを
野菜をたっぷり刻んで作った甘酢の中に浸しながら
詐欺師たちは何を食べているんだろうと考える
騙しとったお金で、贅沢に外食しているのか
適当な何かを口にしながら、欺くための甘い言葉を考えているのか、私にはわからない
ただ、誰かを傷つけても気にすることもなく
自分達の欲望の為にお金をかき集めて悦に入っている詐欺師たちは
人を騙すための面倒なやりとりは、喜んで行うのだろうけど
小さなアジを食卓に並ぺるために、面倒な下処理をすることは馬鹿馬鹿しいと思うのだろうなと思って
ふっと笑ってしまった
一見つまらなく見える
こういうことの積み重ねの中に
生きていくことの
楽しさや喜びが隠れていることなど
きっと知ることはないのだろうなと思いながら
口に運んだ小さなアジをゆっくりと噛みしめる
詐欺師たちの知らない幸せを
丁寧に噛みしめる




