やらねばならぬ
勝手に使ってしまったスキルの書の代金として、何かを採ったり狩ったりしなくてはいけないようだ。
えっと、どこで何をどうするんだっけ?
「クエストウィンドウは……右手のブレスレットを見よ、だっけ」
ルフェニャは、右手首のブレスレットを見た。
赤、青、緑の3つの石がついた金属製の腕輪だ。
……見ても何も起きない。
見ただけでは駄目らしい。
「あ、ルフェニャ」
首を捻っていたら、後ろから声をかけられた。
「さっきの……!」
振り返れば、イヌがそこに居た。
イヌの頭の上に、妙な文字が見える。
「レオーン、剣士43……?」
「うん、俺の名前だよ。で、43は職業レベル」
「もしかして、僕の頭の上にも?」
イヌ、いや、レオーンは肯いた。
だからみんな、僕を見て呼びかけてくれたのか。よく見れば、周りの人の頭の上にも、ぼんやりと名前が浮かんでいる。
向こうの男の人、世界最強最恐の魔王って名前を浮かべている。
本名なの?それ。
名前を晒して歩いてるって、ちょっと不用心すぎない?
「俺、これからスビーノ高原の稀少ターゲットを探しに行くんだ。よければパーティを組まないか?ルフェニャ」
ルフェニャは理解が追いつかず、目をぱちくりさせるばかりだ。
レオーンは笑って、
「腕輪の、緑の石を触ってごらん」
と言った。ルフェニャが素直に従うと、視界にまた文字が現れた。
【クエスト自動受注中5:チュートリアル0:この世界を知ろう1:リリンと話す】
そして、緑の石から一筋の光線が放たれた。光線は斜め右を指している。
「その、緑の光の向きに沿って行けば、リリンが居るよ」
言いながら、先導するようにレオーンは歩き出す。
レオーンの後について広場を出て、大きな酒場に入る。ホールの隅っこに、1人の少女がいた。光は彼女を指している。
虚ろな目でぼーっとしている彼女の真ん前に立つ。緑の光線が彼女の胸元の、ひときわ大きな緑色の石に当たったとき。
「ここは、剣と魔法でモンスターを倒さねば生き残れない世界〈ニキーク〉」
彼女は突然喋りだした。
「モンスター討伐で経験値を得ながら、業務を受注して稼ぐ。そうやって、強くなって、生き延びてね」
ふつり。緑の光線が消えた。
そして
「重いっ!?」
突然、ルフェニャの肩かけ鞄が重くなった。
【クエスト達成報酬:1000ピヨ獲得】
そんな文字列が、すすすっと彼の視界を通り過ぎていった。鞄を開けると、中には銅貨が沢山入っていた。どこから降って湧いたんだ。
そして、いくら呼びかけても、リリンは虚空を見つめたまま、微動だにしなかった。
ちょっと不気味だな。
【クエスト自動受注中5:チュートリアル0:この世界を知ろう2:武器屋のヤキーブと話す】
次に現れた文字は、次のクエストを受注したことを示していた。今はこうやってどんどんクエストを受けていけば良いようだ。
緑の光線の案内に従い、武器屋に到着する。このひょろっとしたおじいさんが武器商人か……。
「初心者はレベル10になったら他の職業に就ける」
職業は、剣士、魔術師、剣術士、聖職者の4つ。
物理攻撃に特化した剣士、強力な属性魔法を使う魔術師。
この2つが攻撃の要だという。
剣術士は魔法も剣も使えるが、防御が主な役割らしい。
聖職者は回復魔法に優れているとのことだ。
「それまではその、おもちゃの剣を振り回すんじゃな」
と笑われた。
ムカつく。