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導きの守護霊は

作者: Hora

私は未来に不安が無い。それは、私にとって重大な決断や選択を迫られる場面に最善の選択をしてくれる存在がいる。それは未来の私なのである。


小学校低学年の遠足の前日。私は300円を握りしめ駄菓子屋でどのお菓子を買うか迷っていたら、

「うまE棒の納豆味を買うと良いよ」

と、かなり年老いた声が脳内で響いた。そこまで大きな声でも無く、

「どこかTVの音が聞こえたのかな?」という程度。全く恐怖は湧かなかった。

しかし、うまE棒は好きだったが、コーンポタージュ味が好きだったので、納豆味は買わなかった。


翌日の遠足、原っぱでレジャーシートを広げ、6人一組でお弁当を食べる。幸運にも当時気になっていた女の子が同じ組に。食後、お菓子を広げた際に6人全員がうまE棒を購入していた。

「うまE棒はみんなどんな味を買ってきたの?」

「俺、コーンポタージュ味」

「あ、僕も」

「私はサラダ味とたこやき」

「あ、私もたこやき、味濃くておいしいよね」

「え~。納豆味は私だけかな?」

気になっていた女の子だけ納豆味を購入していた。

「げろげろ。納豆味!」

「あれ、美味しく無いじゃん。」

「遠足のお菓子に買うのはちょっと変わってるよね~。」

「…」

その女の子は何も言わずリュックの中にうまE棒の納豆味をしまい、少し不機嫌になってしまった。

(そうかぁ、、、納豆味を買っていれば仲良くなれた場面だったのか)


それからも

「夕食で出る鯖は食べない方が良いよ」→私以外の家族が食当たりに

「鍵をかけないと自転車とられるよ」→忘れていて鍵をかけずに立ち去ろうとしていた

「入ろうとしているバレー部は辞めた方が良いよ」→体罰教師が顧問だった

「公園の階段の手すりに体重かけない方が良いよ」→後日壊れて転落事故が発生

「明後日の課題は今日中にやった方が良いよ」→翌日に友人と遠出する予定が入る

といった結末まで分かっているものから

「今日はお風呂にスマホを持ち込まない方が良いよ」

「今日、告白してきた女の子と付き合わない方が良いよ」

「カゴに入れたシャープペンは買わない方が良いよ」

といった、守らなかったら何が起こるんだろうか?と思わされるような助言もあったが、すべて私のための助言。聞き入れていた。


ある日TVを見ていると、

「守護霊は大抵は近い身内である事が多いとされていますが、実は稀に守護霊が自分である場合があります。自身が亡くなる寸前に走馬燈を見ると言いますよね。実はあれは、自身の重要な選択をする場面に、自分自身を救うために助言をしに行くという物なのです。世界はパラレルワールドになっていて多層に重なっているのでこの世界の自分は救えませんが、別世界の自分が分岐して幸せになることができます。なので、直感にしたがって重大な選択ができた時には、自身から後押しされている場合があるので、従った方が良いですね。」

と、霊能力者とされる人物が語っていた。私はこの話に得心し、未来の私に素直に感謝した。


そしてそれからも1万を越える大なり小なりの助言はすべて私を幸せにしてくれた。良い大学を出た後は3億円を資本に会社を起こし、順調に事業を拡大している。美しく優しい妻と可愛い娘、息子を持ち、人生における不安は一欠(ひとか)けらも無かった。


そんなある日、会社の同僚と自宅近くの居酒屋でお酒を飲む。23時頃、自宅まで300m程の道を1人で歩いて帰る。そのような事は何度もしているので特に不安も無かったが、


「その路地を右に曲がった方が良いよ」


(うい。)

またいつものように啓示。家までの距離は倍近くになるが、疑う事は無い。もし曲がらずに真っすぐ行ったらという好奇心すら失われて久しい。少しおぼつかない足取りで言われた通りに右折して細い道を進む。今日の飲み会で出た案や、明日の会議のおおまかな進行、あ、そういえば長女の誕生日が近いからプレゼントを買わないとな…と、考えながら歩いていると


ザクッ


背中側の首に近いところが熱い。痛い。さらに温かい液体が背中を伝っている。刺された!?

全身に力が入らず頭から地面に突っ込む。上着を引っ張られ内ポケットにある財布を抜かれる。たった8千円しか入っていない財布。悔しい。。。顔を見ないとと、首を捻ろうとするが、力が入らない。そして、意識を失う…








「げげげげげっげげげげげげげげげげげげげげっげっげっ!」

気持ち悪い笑い声(?)で目を覚ます。病院のようだ。

「げっげっげ。よう。ひどい顔だな。」

「そ…その声は、まさか。」

声だけで、姿は無い。…が、子供のころからずっと聞いている声。

「ずっと助けてくれてたと思ってたか?げげげっ!ただの暇つぶしだよ。お前が自分の未来の声だとか頭おかしー事言ってて、笑いをこらえるのに必死だったぜ。何百人もやってるけどよー。やっぱ上げて落とすのが一番面白いよな。」

体を起こそうとするが、全く動かない。

「あー。お前脊髄をやられてるからもう一生涯、全身不随だぜ。お金はあるからベッドで寿命を迎えられるんじゃねーか。ほんじゃ、お前の事はこれでお終い。飽きたからな。もう会わないだろうから、じゃーな。」





これが私に起こった出来事です。私は今、目の動きで操作できるPCでこの文章を打っています。

私には未来に希望がありません。私にとって何気ない場面で最も最悪の選択をしてきた悪魔のせいです。お金に糸目はつけません。もしあの悪魔が誰かを唆している場面に遭ったら、私に連絡下さい。そして、あの悪魔を祓って下さい。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 帰り道という題を何処で使うかと思いきや、まさかの悪魔。一点集中的な怖さでした。 [気になる点] ラストはない方が良い気がします。身障者や足弱の方々で小説を書いている人も現実には多いので。 …
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