表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/82

9話 イケメン、ヤンキー女子に掴まれる★

【登場人物】

福家 拓司(ふけ たくじ)。50歳。主人公。執事名【白銀(しろがね)

白髪、老け顔、草食系、実は……。


小野賀一也(おのが いちや)。28歳。主人公を追い出した人。

茶髪、イケメン風、爽やか風。


【一也視点】





六月十五日、カルム再オープン三日目。お昼の時間になっても客が途絶えることはない。


年齢層は幅広く。全ての層に受け入れられているのだろう。

ただ、勿論、全てのお客様に満足いただけるわけではない。


「ちょっと、今日のは濃いかったねえ。これ、持ち帰っていい?」


お婆さんが食べきれなかったようで聞いてくる。


「すみません、持って帰るのは」

「ああ、そう……じゃあ、ごめんなさいね」


今日のランチはチーズをふんだんに使ったパスタ。

好き嫌いもあるだろうし、若者向けに作ったので少し重かったのかもしれない。


「ああ、そう。たくちゃんはどうしちゃったの?」

「たくちゃん? すみません、今ちょっといなくて」


たくちゃんが誰なのか分からない。そんなスタッフいたか?

もしかしたら、おばあさんはちょっとボケているのかもしれない。


「そうなの……まあ、しょうがないねえ。じゃあ、珈琲を貰える?」

「かしこまりました」


脈絡のない会話にちょっと苦笑いを浮かべながらオレは珈琲をキッチンにオーダーする。

キッチンスタッフは、流れるように珈琲の準備を始める。

あのジジイは本当にトロかった。

誰が注文を? とか、食後ですか? とか色々必要ないことを聞いてくる。

早く出せと思っていた。


「あの……すんません」


オレに声がかけられる。

初日にも来た女性だ。よく覚えている。

ポニーテールのあの子とはまた違いちょっとキツ目の印象の美人だ。

暗めの茶でウェーブがかかった髪と気の強そうな吊り目のアンバランスさが独特の色気を放っている。ヤンキーっぽい雰囲気だが、言葉遣いは丁寧だ。


「はい、なんでしょう?」

「あの、えーと、ああ、珈琲ってなんか変わりました?」

「良くお気づきで」


オレはニヤリと笑う。

こんなヤンキーな感じの子でもやはりウチの客。流石だ。


「海外から最高級の器具を取りそろえまして、より美味しいコーヒーを皆様にお届けできてるかと」

「なるほど。確かに。なるほど」


やっぱり分かってないんじゃなかろうか。

ただ、ちょっとダボダボで緩めの恰好だったから気付かなかったが、この子物凄く良いプロポーションだ。これは


「あ、もういいっす。教えてくれてありがとうございます」


急に少し不機嫌になり、帰らされた。

やはりコーヒーの違いが分からない女はそんなもんか。


「あのね、ちょっとあんた」


おばあさんがオレに声を掛ける。オレは笑顔で対応。


「どうされました?」

「珈琲って前からこんな味だっけねえ? なんか、ヘンな味がしないかい?」


おばあさんはやはりちょっとボケているようだ。

最高級の器具と最高級の豆で作ったコーヒーが分からないのだから。


「そうですか? もしかしたら、おばあさんのお口にあわなかったんですかね」

「たくちゃんはいつ来るの? ちょっと言ってあげるわよ」


たくちゃんなんていない。いい加減にしてほしい。


「あのー、おばあさん。たくちゃんは今いないので」

「そんなわけないでしょう。あの子毎日働いていたんだから。あの子ちょっと最近モテてるから天狗になってるんじゃないかしら。ちょっと、たくちゃん」


誰だよたくちゃん。少なくともオレはモテて天狗になってない。おい、たくちゃんいるなら出て来い。

おばあさんがキッチンの方へ向かう。

店がちょっとざわついている。いい加減にしろ。


「おばあさん! それ以上騒ぐと……!」


オレが慌てておばあさんの襟元を掴むと、その腕を誰かが掴んでくる。


「ちょっと……扱いが乱暴じゃないですかね? おばあちゃん、別にキッチンの中に入ろうとしてなかったし」


あのヤンキー女が掴んでいた。まったく、あの福家のジジイの客だろうか。

質の悪い客をアイツが連れてくるからこんな騒ぎが起きる。


オレはおばあさんの襟を離す。

おばあさんはビックリはしていたが、別にビックリしていただけだ。

掴んだところが偶然襟元だっただけだ。ヤンキー女が大げさに捉え過ぎだ。


「ああ、ごめんなさいね。一言いってからだったね。でも、本当にいないみたいだから、今日は帰るわね。騒がしくしてごめんなさいね」


おばあさんは深々とお辞儀をする。

ほら、おばあさんが謝ったぞ。


「あの、放してもらえませんかね?」

「あんたもおばあさんに謝るべきでしょ? 場合によっては首締まってたよ」


締まってなかっただろ。


オレは余りにも言い方がキツイこのヤンキー娘に腹が立ってきた。

一度痛い目を見せた方が彼女の為ではなかろうか。


オレはこれでも大学時代はバスケでセンターをやっていた。力では男に勝てないということを教えてやろう。まあ、その時ちょっとどこかに当たるかもしれないがそれはすぐに放さなかったコイツが悪いんだ、うん。


オレは掴まれた腕をグイと……グイと……動かせなかった。

何だコイツ! どんだけ力あるんだよ! ゴリラかよ!


「ねえ」


ヤンキー女が睨んでくる。美人な分、睨むと迫力が増す。

仕方ない。オレは大人だ。ここは引き下がろう。


「お、おばあさん。すみませんね、失礼しました」

「ああ、いいのよう。こっちもごめんねえ」


オレが謝ると、仕方なくヤンキー女が手を放す。

お前も謝れよ! 痛かったぞ!

だが、ヤンキー女は完全にオレを無視して、ばあさんの方に話しかけている。


「ばあちゃん、一緒に出ようか」

「ああ、あんたもありがとね」


ばあさん、ソイツに礼は不要だろ。

そう思ったが、ヤンキー女が睨みつけてくるので、相手にするのも面倒だ。

オレは仕事を続けることにした。こんな奴らの相手をしている暇はない。


「ばあちゃん、いこ」

「はいはい、それにしてもたくちゃんは何処行っちゃったのかしらねえ」


知らねえよ、たくちゃんなんて。

ん? たく? そういや、おふくろ、あのジジイのこと、拓さんって呼んでたけど。

まあいいか。もうアイツら来ないだろう。


もし、バカやボケのせいでまた来たらその時教えてやろう。

たくちゃんなら、クビになってもう二度とここには来ませんよって。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


いいね機能が付きましたね。今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] コーヒーの味とかわからんけど、最高級の器具と最高級の豆を使ったとしてもコーヒーを淹れる技術が無いと出来上がるのは美味しくないコーヒーなんだよね。道具と素材さえ良ければ勝手に味が良くなるとでも…
[良い点] たくちゃん首にしたこと早く追いかけて教えて上げるんだ!イケメンならできる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ