表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/82

8話 五十路、珈琲を頼まれる。

【登場人物】

福家 拓司(ふけ たくじ)。50歳。主人公。執事名【白銀(しろがね)

白髪、老け顔、草食系、実は……。


未夜(みや)。??歳。オーナーの知り合い。

ピンクとグレーの左右ツートーン、背が高い、垂れ目。


若井 蒼汰(わかい そうた)。??歳。教育係。執事名【千金楽(ちぎら)

金髪、二枚目、チャラ風、仕事出来る。


「ごめんなさいね、なんかこの時間はあたし専属みたいで」

「いえ、私が未熟故の事態ですので、お嬢様はお気になさらず」

「ん?」

「え?」


私と未夜お嬢様の目が合います。

お嬢様の深い夜空のような黒い瞳が疑問に揺れているようです。何故でしょうか。


「ん~、ああ、なるほどなるほど、ごめんなさい。状況が分かったわ」

「然様、ですか……申し訳ありません。執事である私の方が、理解が遅く……」

「大丈夫。白銀は何も悪くないわ」


未夜お嬢様は微笑んで理解の遅い老いた執事の私を気遣ってくださいます。


「ありがとうございます」

「ふ~ん……白銀、あなた……」

「はい?」


私が未夜お嬢様の呼び掛けに応え顔を上げると、じいっと私を見つめるお嬢様が。

そして、首をゆっくり傾けながらにこりと笑って下さりながら口を開かれます。


「いいわね。あなたの周りだけ時間がゆっくり流れているみたい。いい。とってもいいわ」


お嬢様からお褒めの言葉を頂く。いや、お嬢様の言い回しが有難い。


私は昔からのんびりしすぎていると怒られていましたから。

最近は、音楽でも映像でもなんでも早くて時折ついていけなくなります。


『たくちゃんはゆっくりだから、ばばあは丁度ええよう』


カルムに居た時は、常連のおばあちゃんがそう言ってくれましたが、若い方からしてみれば、随分ゆっくりしているんでしょうから。


『いや、気のせい。ゆっくりに見えるだけ。無駄がないから結果早い。マジ、みんな、だまされんなよ。この人、ヤバいからな』


千金楽(ちぎら)さんが何か言ってましたが、何も騙しているつもりはありません。

アレはどういう意味だったんでしょうか。


「ねえ、白銀」


未夜お嬢様の言葉でハッと意識を戻します。

無意識ながらも身体が覚えた動きだったのか、私はメニューをお渡ししておりました。


「はい、なんでしょう?」

「珈琲って白銀が淹れるの?」

「ご希望とあらば」


幸い私はカルムでも珈琲を淹れたり料理を作っていたりしたので、キッチンも出来ます。

ただ、キッチンの杉さん達に、


『お嬢様が、お前さんに淹れてほしいって言われるまで淹れるな。あと、お前さんのやり方を教えろ』


と、言われてしまいました。私の淹れ方がおかしすぎるので、直してくれるのだと思っていたのですが、アレ以来キッチンのみなさんは無言で私の作業を見つめてきます。

よほど、修正点が多すぎて、どこから直すべきか迷っているのでしょうか。


「じゃあ、白銀、お願い。日替わりでいいわ」

「かしこまりました。お嬢様の為に、最高の一杯を」


私は、未夜お嬢様の珈琲を作る為にキッチンへ向かいます。


その間もお嬢様やお坊ちゃんのいらっしゃるテーブルを通りますが、視線を物凄く感じます。やはり、白髪の執事は珍しいのでしょうか? それとも、コンセプトカフェという若者の場所にジジイは相応しくないのでしょうか。


とはいえ、無視して通り過ぎるのも執事失格です。

お嬢様・お坊ちゃまたちに出来るだけ、小さく微笑みながらご挨拶させて頂きながら通り過ぎていきます。


皆様が顔を引き攣らせながらも微笑み返してくださいます。

やはり、ジジイの微笑みは……『キモかった』のでしょう。


それとは別の強い視線を感じます。千金楽(ちぎら)さんです。

顔は微笑みながら、目で問いかけてきます。


(お前、やりすぎ)

(申し訳ございません)


教育係である千金楽さんとは目で会話出来るようになったように思います。

私の微笑みが良くなかったのは自分でも分かっています。

キッチンに入った瞬間ホールのざわつきが聞こえてきますもの。


ああ、やってしまいました! 耳は遠いのですが去り際に『あの白髪の執事って……』と聞こえました。

お嬢様、お坊ちゃまからあの執事は出来れば辞めてほしいと言われてしまうのでしょうか……。

もっと好感を抱いていただけるような笑顔を手に入れ、少しでも認めていただけるように頑張らねば。


ですが、一旦切り替えです。未夜お嬢様の為の珈琲を。

私がキッチンに向かうと、杉さん達キッチン組が待ち構えていました。


「だと思ったよ! ほら、早く淹れろ! メモ用意!」


流石、ベテランのキッチン勢。

未夜お嬢様が日替わり珈琲を私に頼むことを予想していた様です。


「皆さん、ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします」

「「こちらこそ」」

「さあ、やってくれ!」

「では」


私は一つ深呼吸をして心を整えます。


「お嬢様の為に最高の一杯を」


さあ、ゆっくりと、丁寧に、作りましょう。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


いいね機能が付きましたね。今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お嬢様の為に最高の1杯を 素敵なフレーズだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ