37話 朝日、変えられる☆
ご覧くださりありがとうございます。
ちょっと体調と他の作品の兼ね合いもあり、今週から一日一話更新となりそうです。
【登場人物】
福家 拓司。50歳。主人公。執事名【白銀】
白髪、老け顔、草食系、実は……。
下柳 朝日。21歳。白銀にとって二人目のお嬢様。
一重小さめの目、自虐的、瓶底眼鏡、でも、頑張る。
葛西寛子 芸能事務所女社長。葛西寛子。
ふんわりウェーブ、グラマラス、母性溢れる。
【下柳朝日視点】
どうも下柳朝日です!
私は今、葛西寛子さんのご自宅に向かっております。
閑静な住宅街? を抜けると見えてきました。
デカっ!
マンションデカっっっっっ!
ということでテンション爆上げで逆に落ち着いた。
見るからに高級マンション。私の月のバイト代では、トイレしか借りられそうにないようなマンションのホテルみたいなエントランスで待つこと数分、葛西さんがやってきた。
「ごめんね、遅くなって」
「いいいいえ! こちらこそ本日はお招き頂き誠にありがとうございます!」
葛西さんは、恐らくラフな格好であろうお姿で登場。
でも、多分、私の勝負服以上するんじゃなかろうか。
ゆったりしてるけど、滅茶苦茶生地の良さそうな薄紫と黒系の上下。ワイドパンツがお洒落に見える……!
私が履いたら、雑魚剣道女みたいになるのに!
なんだ、あのちょいゆるな隙間から漏れ出る色気は!
生地よりも柔らかそうなマシュマロボディの力か!?
甘い匂いするし、これが食べちゃいたいくらいかわいいなのか!?
なんだか興奮してきたな。
「ここよ」
ハッと正気に戻った時には、もう部屋の前にたどり着いていた。
大丈夫。食べちゃってないからゼロカロリーゼロギルティだ。
中に入ると、まあ、お洒落。
お洒落な玄関、お洒落な靴、お洒落なインテリア、お洒落な人達……人達!?
「あ、あ、あの、この人達は?」
「ああ、ウチの事務所のコ達。一緒にやったほうがいいかなって」
いやいやいやいや! 一緒に?! くさやとプリンが戦ったらどうなるか……くさやが勝つんですよ! 誰がくさやだ!
「「「よろしく~☆」」」
「よ、よろしきゅです」
か、かわいい……かわいいが三人絡んだら最高だ。ブスが噛んでも最低だ。
「じゃ、一人ずつやっていきましょうか。じゃあ、美月ちゃんから」
「はい! お願いします!」
美月ちゃんさんが葛西さんに連れていかれ、メイクを始める。
そう。今日は葛西さん主催のメイク講習会なのだ。
以前LIN○グループで誘って頂いた話、社交辞令かと思ってたら本気だった。
だが、葛西さんの事務所のコと一緒とか聞いてない。
死ぬ。
顔面偏差値の高低差で顔潰れる。
なのに、残っている二人が凄く優しく接してくれる。
内面偏差値の高低差で内臓も潰れる。
そして、気付けば、私は着せ替え人形になっていた。
二人がそこに並んでいた服を次々に私に提案してくる。
そして、一番元気な方が選んだ服はめちゃくちゃ明るい色でかわいくて、
絶対私が買いそうにない服だ。
「あ、あの……こんなかわいい服は……」
「え? 嫌い? カワイイ系が嫌いなら、じゃあ……」
「あ、あ、あの嫌いとかじゃなくて……着たことなくて」
「じゃあ、着てみようよ! 誰かにみられるわけじゃないし!」
いや、あなた達に見られるんですけど!
とは言えず、しぶしぶ着替える私。
そして、鏡で確認。
う~~~~~~~~~ん……。
「ねえ、朝ちゃん」
距離の詰め方!
「似合わないだろうなあと思ってない?」
どきっとした。元気な美女さんの近さとかわいい顔の角度にもだけど、その言葉に一番どきっとした。
「似合う似合わないの前に、朝ちゃんがその服を着こなしてやるー! って思ってなくない?」
この中で一番クール系っぽいお姉さんが前に出て、優しく微笑みながら一言だけ。
「私達が選んだ服は信用できない?」
「あ……」
私は、また、下を見てた。
そうだ。
私は、お嬢様になるんだ。その為に一個二個の恥が、傷がなんだ。
いや、中身外見ブススタートなんだぞ、全身刻まれる覚悟で臨まないと。
「あの! ど、ど、どうしたら?」
「……うん! あのね」
そのあと、元気な雪さん(名前教えてもらった)は、その服のどういう所が可愛くてどういう所が私に合ってるか教えてくれた。
めっちゃちゃんと理由があって、びっくりした。
そんで、清花さん(クール系美人さんの方)は、何故この服が作られたのか、服の工夫ポイントをかいつまんで教えてくれた。
え? こんなこと考えて着てるの? お洒落女子。
この前ウチのバイトのガチオタクの子が、ある漫画をお勧めしてきた時と同じ熱量なんだけど。
そうか。
好きなんだなあ。
「ん? なに?」
「いや、凄い詳しくて好きなんだなあ、と……」
「いや、好きじゃないよ」
「へ?」
「必要だから覚えただけ。めっっっっっちゃ覚えた! 本馬鹿みたいに読んで! 少しでも売れたいから」
「な、なんで売れたいんですか?」
「なんで?」
雪さんはきょとんとすると首を傾けて人差し指を顔に当て考え始めた。
え? これ、無意識? アザトカワイイが過ぎるんだが?
「んーと、選ばれたいから?」
「え、選ばれなかったら嫌じゃないですか?」
「いやだよ! でも、出来ることやって選ばれなかったらもう仕方なくない? 出来ることやってなくてもっと出来たのにって思う方が私はいやだけどな。あ、はーい、次、私!」
雪さんが交代で去って行く。
彼女のふわふわした歩き方、あれも努力して身に着けたものなんだろうかと私はぼーっとその後姿を見てた。
その後は、申し訳ないことにほとんど話が右耳から左耳に通り抜けてたと思う。
正直すまんかった。
だけど、目につくのだ。彼女達の努力や積み重ねの後が。
見せ方、話し方、知識の量、何かを吸収しようというどん欲さ、すべてがかっこよすぎた。
「じゃあ、最後は、朝日ちゃんいってみようか」
「は、はい!」
私は葛西さんに連れられてちょっと離れたメイク台的なものの前に座る。
「どうだった? あのコ達」
「す、凄かったです! それに、かわいいし」
「あのコ達はね、まあ、厳しい評価をすると芸能界では普通より少し下ってところなのよ」
あれで!?
「でもね、あのコ達、全然目が死んでないでしょ。あのコ達はね、覚えてるから。自分の顔や姿が褒められたい人に、褒められたことを」
褒められたこと。
最近、褒められたことはバイトの後輩に、最近凄い姿勢良いですねって褒められた。
ただ、それだけなのにめっちゃ嬉しかった。
覚えてる。
「家族や、友達、時には見知らぬ他人だってこともある。でも、褒められて、認められて、嬉しかったし、その言葉を信じてるから、今も頑張ってる」
うん、私の背筋はロマンスグレー様に伸ばされて、バイトの後輩ちゃんに伸ばし続けられて……でも、きっと昔、書道の先生や家族も褒めてくれてたと思う。
そのすべてが今私の背骨になって、私を支えてくれてる気がする。
「だから、必死で戦うの。自分を信じて。自分の武器は何で、どうやってやれば、生き残れるか考え続けて。……勿論、この業界はうまく行かない人の方が多いわ。でも、彼女たちはそれも知ったうえで戦うことに決めたの」
戦う。その意味を初めて最近知った気がする。
戦うとは負けることがあることだ。怖くて怖くて仕方ない。でも、その先に欲しいものがあるから頑張って踏ん張って手に入れる。
それを私はつい最近知った。
「美しさなんて、そのままの質だけで成功している人なんて何割いるか……ほとんどの人が努力よ。白鳥が水面下でバタバタしてるって話あったわよ。あれほんとそう。バタバタしてる。悪あがきって言われても仕方ないくらい。バタバタやれることをやってるのよ」
バタバタなんてしたことない。
したとすれば、なんで神様はこんな不公平なのか不平不満をぶつけた時くらいじゃなかろうか。
「で。バタバタしてた私が辿り着いた一番の秘訣はね。自分をちゃーんと見ること。歪んだ濁った鏡じゃなくて、綺麗に綺麗に丁寧に磨いた鏡で見るの。で、探す。自分のかわいいポイントを必死に。そして、それを伸ばす、活かす、褒める、必死に。それを沢山出来るだけ見つける。例えば、目」
目。小さくて嫌いだ。
「つぶらでかわいい。パッチリさせるのは努力で出来る。小動物みたいなかわいさもあるから、朝日ちゃんの内面も踏まえてあえてパッチリさせても派手にさせ過ぎず清楚メイクで」
葛西さんの魔法でなんかいい感じになる。すげえ。
「誰かになる方法も勿論あるんだろうけど、私はね、出来るだけ自分のかわいいを探してほしい派かな。かわいいはね、あるのよ。だって、言い方じゃない? ブサカワ、オジカワ、キモカワ……でも、かわいいなの。これって無敵だと思うのよね。なんでも考え方で可愛く出来るって。否定さえしなければかわいいはあるはずなの。誰かの羨ましいかわいさだけじゃなく、自分のかわいいを選んで欲しいのよ」
かわいいを選ぶ。自分の好きな部分を作る。
「自分のかわいいを選び続けて最善の努力を選び続けても、選ばれないことだってある。芸能界って特にね。で、選ばれないことに慣れてくるの。慣れてくるとこう思う。ああ、私は駄目な子なんだって。駄目な子だから、駄目な子は努力しなくていいかってなっちゃう。だから、私は言ってあげるの」
寛子さんは私の髪を梳かしながら、優しく言う。女神か。
「あなたは頑張ってたよって。だから、頑張れるよって」
やばい。泣きそう。メイク崩れる。
「もし、それで此処でまだ踏ん張れるなら応援するし、別の道を目指しても応援する。私は頑張る子を応援したいから。……はい、出来た。どう?」
「素敵です……寛子さん」
「えっ!? い、いや! 私の事じゃなくて……もうっ!」
あ、寛子さんって言っちゃった。まあ、いいか。だって、可愛すぎるんだもん、寛子さん。
寛子さんが照れて背を向けてしまった。かわいい。
鏡に映るのは、私と、寛子さんと、沢山の美容に関する本と道具。
私は、まだ、足りない。
「じゃあ、気を付けてね」
「はい! ごはんまでありがとうございました!」
「ふふ……あれね、福家さんと一緒に考えた美容食なのよ……お互い頑張りましょ☆」
そう言って笑った寛子さんは本当にかわいくて美しかった。
あの三人は残ってこのあとも勉強するのだろうか。
帰り道。振り返るとバカでっかい寛子さんのマンション。
見上げればどこまでも続いているんじゃないかってくらい高い。
首が疲れるからやめた。
まっすぐ前見たら、綺麗に磨かれたエントランスのドアに映った私。
キ……いや、良くなってる。絶対に良くなってる。
あんな素敵な人が手伝ってくれたんだ。そして、私も頑張った。
おい、お前、
「かわいいぞ」
キモッ! キモッ! いや、これは自分で言ってる自分がキモいのであって、彼女達の努力を馬鹿にするような……
「……かわいいぞ。かわいいぞ」
私も自分の努力を馬鹿にするな。世間一般の平均から見ればまだまだまだまだまだかもしれないけれど、今日の私は一番頑張った可愛くなるために一番頑張った日だ。
まだ、最高の日は『あの日』を超えられないけれど、きっと頑張り切った先に、その日があるんじゃないかと思ってる。
「くそう。がんばるぞ。かわいくなるぞ。やってやるぞ」
そして、私は、帰り道におすすめされたお洒落雑誌を買った。
店員さんにチラっと顔見られた気がするけど気にするもんか。
傷が男の勲章なら、心の傷は女の勲章か?
誰にも見えないじゃないか。
いや、私には見えるぞ。自分。偉いぞ。頑張れ。頑張るぞ。
「私はかわいくなる」
家に帰って鏡に向かってそう言った。
のを、お母さんに見られてぐって応援された。
しにたい。
葛西さんに貰ったロマンスグレー様の写真見てエネルギー補充しよ。
「かわいいですよ」
きっと言ってくれる。ロマグレ様なら。だから、がんばるぞがんばるぞ。
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昔書いた短編を賞参加用に書き直したものがあるのでだぶんぐるの作品他のも読んでやるかと思った方は是非! おもいっきりコメディです!
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