14話 五十路、怒られる。
2022.8.13日間ランキングも現実恋愛一位ありがたやー。
今のランキングにはない物珍しさ故かと思いますが、沢山の方にご覧いただけてうれしいです。
感謝を込めて、今日は出来れば多めに更新したいなと思っています。出来れば。
【登場人物】
福家 拓司。50歳。主人公。執事名【白銀】
白髪、老け顔、草食系、実は……。
南 詩織。30歳。執事喫茶【GARDEN】オーナー。
黒髪ロング、美人、活発、金持。
未夜。??歳。オーナーの知り合い。
ピンクとグレーの左右ツートーン、背が高い、垂れ目。
未夜お嬢様をお見送りすると、オーナーである南さんがこちらに向かってこられます。
「白銀、いい仕事をしたようですね」
私はお褒めの言葉に感謝を込めて礼をし、顔を上げます。
すると、そこには頬を膨らませた南さんが。
何故?
何故かオーナーが頬を膨らませてじとーっとした目で私を見ています。
至らぬ点があったのでしょう。まだまだ未熟であることは百も承知です。
ただ、自分で何が至らなかったのか考えることも大事ですが、一度、しっかり客観的な意見を頂くべきと考えた私はオーナーに問いかけます。
「オーナー、私に何か至らぬ点が?」
「……なかったから、困ってるの」
はて?
至らぬ点がなかったから、困る? 苛立つや怒りたいではなく、困る。
どういうことでしょうか? なければ良いはず。ですが、困る……。
なるほど、ジジイが出来るのはこの程度までなのだろう、という呆れですね。
ですが、今の私は未夜お嬢様の言葉を受けて、やる気に満ち溢れています。
「ご安心ください、オーナー」
「え?」
「私は、己の限界を超え、オーナーの求める最強の執事を目指し努力してみせます」
「超えるの?!」
何を馬鹿な事をと思っていらっしゃるのでしょうが、私は、自分を信じ頑張ることを先程未夜お嬢様に誓ったばかりなのですから。
私が自分なりに固い意志を込めてオーナーを見つめると、オーナーは手でひさしを作るようにして顔を隠し呟きます。
「うう~……未夜さんはどうだった?」
「素敵な方でした。未夜お嬢様には自信を持つようにと。なので、オーナーの不安も分かりますが、今暫く私の可能性を信じて頂けないでしょうか?」
「全然分かってない気がするけど……そっか。でも、未夜さんは素敵だったんだ。ふ~ん」
オーナーが手を下ろすと、再びぷくーっと頬を膨らませたリスのように可愛らしいお顔がそこに。心なしか顔が赤く、どうやらお怒りの様です。
もしや、素敵と言ったのは…………コイツ、未夜お嬢様に手を出す気だな、のような事を想像されていらっしゃるのでは!?
「あ、ご、ご安心ください、オーナー! 未夜お嬢様には迫るようなこと、この白銀致しません!」
「未夜お嬢様、には? 安心してくれ? え? うそ? え、それって? ええぇえええええええ~……」
膨らんでいたはずの頬がしゅう~と萎み、オーナーが両手を添えて、今度は頭を振り始めます。先程よりも顔が赤くなって……どどどどどういうことでしょうか!?
あ、もしかして……
「申し訳ありません。誤解です。オーナーにも迫りませんので、ご安心ください」
絶望したような顔でこちらを見るオーナーが……これはこれで女性に対しては魅力がないと言っているようでよくなかったのでしょうか。
ジジイは気の利いたことが言えなくて、まったくもう!
私は、心を落ち着かせ、姿勢を正し、まっすぐオーナーを見つめて口を開きます。
「オーナー、調子のいいことを、と思われるかもしれませんが、一つだけ。オーナーは、とても魅力的な女性です。非常に行動的で、私もいつも元気を頂いております。それでいて、優しさもあり、いろんな面で気にかけてくださり感謝に堪えません。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花と申しますが、それを体現したような方だと常々思っております。いや、沈魚落雁閉月羞花。花さえも恥ずかしがるくらい素晴らしい方だと私は……」
「もぅ、ぃいですぅ……」
気付けば、オーナーが座りこんでいらっしゃいます。夢中になって褒めていましたが、ジジイの長すぎる話に飽きてしまったのでしょうか。
オロオロと何と声を掛ければ良いか戸惑っている内に、オーナーは勢いよく立ち上がりこちらをキッと睨みつけられます。
口元は何やらモニョモニョと言いたげな様子でしたが、感情をうまくコントロールできないのか、そのうち、目を閉じて唸り始めてしまいました。
「うぅ~~~~、ん! おほん! 白銀は、誰にでもそういう事を言ってるの?」
「いえ、初めてですが」
流石にあのような誉め言葉の羅列、こんなジジイが言ってもと今までは思っていました。
ですが、自分の言葉が誰かの力になると信じ、初めて言ってみたのです。
南さんは、それを聞くと今度は満面の笑みをみせてくださいました。
「はじめて……白銀の……へへ……」
可愛らしい方です。見てて本当に飽きないというか、表情豊かでエネルギッシュで、私とは真反対の……いえ、私も南さんのこの姿を見習い、自分を変えていかねばなりませんね。
「あ……う、んっ! あのね、白銀……美しい言葉を並べることも大事だけどね。シンプルイズベストって言葉もあるのよ。人によっては長い言葉は嘘くさく聞こえることもあるの」
なるほど。確かにそれはあるかもしれません。
今となっては、カルムにいた一也さんなんかは凄く大げさな言葉を並べていたりしましたが、ただただ難しそうな言葉の羅列で誤魔化しているような印象もあったのではないかと思ってしまいます。
「だからね、その、ね……さっきの長い言葉をシンプルにすると、ど、どういう言葉になる? 言ってみて」
南さんが耳に手を添えてこちらに身体を傾けます。
ジジイの癖に申し訳ないのですが、少し、その、胸が強調されるような体勢で目のやりどころに困ります。申し訳ありません、色ボケジジイで。
一先ず、南さんに出された問題に集中しましょう。
シンプルに一言で……なるほど!
「さ、さあ、言ってごらんなさい……ヒントは、か、かわ……」
「南さんは、私にとって女神です」
「………………………………………………………………はぇ?」
長い沈黙の後の『はぇ』…………どういう意味なのでしょうか。
若者言葉でしょうか。千金楽さんに、『あざまる水産よいちょまる』までは教えて頂いたのですが、『はぇ』は、分かりません。
いや、もしかしたら、千金楽さんは教えてくれていたのかもしれません。
私の物忘れが激しいせいかもしれません。
思い出せ、思い出すのです、白銀。
私が必死に千金楽先生の若者文化講座から思い出そうとしていると背中に小さな感触が。
振り返ると、どうやら南さんが拳を私に当てていた様です。
そして、ぽかぽかと数回殴られます。痛くはありません。
ジジイだから骨が折れないよう手加減してくださっているのでしょうか。
殴っているという事は何かお怒りなのでしょうか。
あ、『私にとって』って今考えると不快では。みんなの女神と言うべきだったかもしれません!
「……ばか」
そう言うと南さんは走り去っていってしまいました。
耳が真っ赤でしたので、千金楽さんに教えて頂いた『激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム』というやつかもしれません!
やってしまいましたぁあああ!
いわゆるやらかした私は、オーナーが声を荒げながら去って行くのを見ることしか出来ません。
「……がねの、スパダリィイイイイイ!」
スパダリ、知ってますよ! スーパーダーリンの略ですよね! 完璧な男性の事ですよね!
テストに出ました! でも、何故今!?
南さんが去り、一人ぽつんと色んな意味で取り残されたジジイがいます。
えーと、えーと、白銀訳わかめなう、といったところでしょうか。
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